100kmオーバーの目的地は途中で乗り直す

ETC割引に新しいメニューが登場している。秋の観光シーズンに見逃せないのが9月20日から実施されている「休日昼間割引」。この秋から順次導入されている「緊急総合経済対策による料金割引」の一つ。1回の走行が100km以内、大都市近郊区間は割引対象にならないという制限があるが、割引率は最大50%になるので、使い方によっては大きなメリットになる。土日祝日の9時から17時までに入り口または出口を通過すれば適用になるので、休日の朝ゆっくり寝てからのドライブにも使うことができる。

そんなニュースがネットで話題になっている頃、静岡県内に住んでいる友人から「家の近くにものすごく気持ちのよい里山の散歩コースを発見したので、遊びにきませんか」というお誘いのメールが届いた。アウトドアの散歩が趣味の私はスケジュール帳を開いて「じゃあ、11月○日の日曜日に行ってもよいですか?」と返信し、数年ぶりに行くことになった。友人の家には何度か訪れたことがあり、最寄りのインターチェンジは東名高速の清水ICだ。

新登場の「休日昼間割引」を使って、おトクに行く方法はないかと、あれこれ調べてみた。東京から清水までは147.8kmで、割引なしの通常料金は3,850円(普通車)。1回の走行100km以内という条件がある「休日昼間割引」は、そのままダイレクトに行ったのでは、割引にならない。

そこで、東京から93.8kmの裾野ICで1回降りて、もう一度乗り直して、裾野から54.0kmの清水に向かうという計画を立てた。これならゆっくり朝食をとって9時に東京を出発。「休日昼間割引」適用で、東京→裾野が通常料金2,750円が1,900円、裾野→清水が通常料金1,550円が800円で、合計2,700円、通常料金よりも1,150円安くいけることになる。

通常料金の場合、裾野ICで乗り直すと、合計4,300円と割高になるが、ETC割引では乗り直したほうが安くなる。東京→裾野の通常料金2,750円に対し、ETC割引1,900円と割引率が約30%なのは東京⇄厚木間が大都市近郊区間で割引対象外、厚木IC以西にしか割引が適用されないから。

「通勤割引」と「休日昼間割引」を併用する

しかし、「休日昼間割引」は1日2回までという制限がある。往路に2回使ってしまっては、帰りは同じ方法で帰ることはできない。それでは、どうするかを考えたところ、帰りは「通勤割引」を使えばよいことに気がついた。「通勤割引」は曜日に関係なく、6時から9時、17時から20時の時間帯に適用される。1回の走行距離100km以内、大都市近郊区間は割引対象でないので、行きと同様、裾野ICで一度乗り直せばよい。17時から20時の間に清水ICから乗って帰路につけば、清水→裾野は往路と同じ800円になる。

ここでまた、ハタと気がつく。「通勤割引」は「午前1回、午後1回かぎり」という制限がある。清水→裾野で使うと、裾野→東京は2,700円の通常料金となって、800円+2,700円で3,500円になってしまう。また、1日の中で「休日昼間割引」を使い、さらに「通勤割引」も使えるのか? という疑問が湧いてきた。

というわけで、NEXCO中日本お客様センターに電話をして確かめてみた。電話に出た男性オペレーターに「1日のうちに休日昼間割引と通勤割引を使うことはできますか?」と確かめたところ、「もちろん使えます」という返事。こちらの計画を説明して、清水まで割安で行く方法はないかを尋ねてみた。

そうすると、さすが実に的確なアドバイスが返ってきた。

「6時から9時の間に東京から乗っていけば、東京→裾野に『通勤割引』が適用になり1,900円で行けます。9時過ぎに裾野で乗り直して清水に向かえば、ここで『休日昼間割引』の1回目が適用され、帰りにもう一度使えます。17時~20時に裾野で乗り直して東京に向かうか、またはこの時間内に東京ICから出れば「通勤割引」が適用になり、裾野→東京が帰りも1,900円になります」

これなら帰りも800円+1,900円=2,700円で帰ることができる。

「早朝夜間割引」併用でさらにおトクに

話のついでに「早朝夜間割引」は使えないかも聞いてみた。「早朝夜間割引」は22時から翌6時までの時間帯に大都市近郊区間を走れば適用される。

「帰りに東京ICを22時以降に出るように帰れば、裾野→東京が約50%割引になります」

裾野→東京の通常料金2,750円が「休日昼間割引」&「通勤割引」だと1,900円、「早朝夜間割引」だと1,400円になるのだ。帰りに清水をゆっくり出て、「通勤割引」と「早朝夜間割引」を使えば、800円+1,400円=2,200円で帰ることができる。

もちろん、往路に東京を早朝6時前に乗れば、「早朝夜間割引」が適用されて、東京→裾野も1,400円になる。早起きが苦にならなければこれも可能だ。

清水を往復する場合、途中で乗り直すインターチェンジは秦野中井でも同じ結果になる。

深夜割引は距離制限がないので、100kmを超える距離でも50%割引。途中で乗り直す手間は省けるが、平日の昼間働いている人には0時~4時に走るのはちょっとつらいかも。

ETC割引をさらにおトクに使いこなせるかどうかは、「合わせワザ」がポイント。表は秋のドライブシーズンにフル活用できそうな、おもなETC割引。それぞれの割引で時間帯や条件が違うので、ネットなどで調べて、おトクに利用しよう。

景気対策として高速道路料金の引き下げがさらに検討されている。しばらくはETC割引から目離せなさそうだ。

丸田潔(マルタキヨシ)

1952年東京都生まれ。76年早稲田大学文学部卒業。編集プロダクション勤務を経て90年フリーに。マネーライターとして生活情報誌、主婦向け雑誌、マネー誌などで活躍中。金融商品や保険に関する記事のほか、家計や節約の実例記事を数多く手がけ、今までに取材した貯蓄・節約体験の実例は1,000例を超える。近著に『綱渡り生活から抜けられない人のための絶対! 貯める方法』(永岡書店)