写真1 ソニーのVAIO type Z。サイズは314(W)×210(D)×24.5~33(H)mmで、重量は約1.35~1.57kg(スペックによる)

「究極のモバイル」を目指して作られたというソニーのVAIO type Z。このマシンはデスクトップモデルに匹敵するパワーと、最軽量時は約1.35kgというモバイル性を両立した。しかも、Centrino 2やSSDといった最新技術もふんだんに盛り込まれている。今回は、HDDモデルとSSDモデルの両方を試すことができたので、その比較も含めてレビューする。

VAIOにラインナップされた新モバイルシリーズ

VAIO type Zは、この夏モデルとして新たにVAIOラインナップに加えられた新シリーズの製品である。13.1型の液晶ディスプレイを搭載する、A4モバイルノートという位置付けになる。

このサイズのモバイルノートは従来、type S/SZシリーズが担ってきた。本体サイズはもとより、(詳細は後述するが)動作モードを切り替えるハードウェアを搭載するなど、SZシリーズとの類似点は多い。今年の夏モデルでは、type Zに加え、type Sというシリーズも立ち上がった。SZシリーズから派生してリーズナブルなエントリーモデルとして生まれ変わったのがtype S、モバイル性能を追求した新シリーズがtype Zという流れになる。

ただ、type Zの外観のフォルムは、type SZの後継というよりは、B5モバイルであるtype Tを一回り大きくした印象になっている。例えば、両側面写真から見てもわかるとおり、シリンダーヒンジと呼ばれるヒンジ形状はtype Tに似通っているし、SZシリーズでは何も配置されなかったフロント部もインタフェースやスイッチに活用している(写真2~3)。また、各キーが間隔を空けて配置される独特のキーボード(ソニーでは「アイソレーションキーボード」と呼称している)もtype T譲りだ(写真4)。こうした特徴から、type Tよりも一回り大きく、よりハードなPCワークに耐えうる製品として投入されたのがtype Zという見方ができるだろう。

さて、製品について詳細に見ていくことにしたい。まず、左右側面のインタフェースであるが、右側面には光学ドライブ、HDMI、USB、D-Sub15ピン、電源スイッチを装備。こうしたモバイルノートにおいてHDMIの搭載は珍しいが、最近は会議室でもプロジェクタではなく大画面液晶テレビが置いてあるケースがある。そうしたシーンではHDMI、従来のようなプロジェクタを利用するならD-Sub15ピン、と使い分けができて便利だ。

写真2 本体右側面。前方方向から順に、光学ドライブ、HDMI、USB、D-Sub15ピン、電源スイッチを備える

写真3 本体左側面。前方方向から順に、ヘッドホン出力、マイク入力、IEEE1394、USB2.0、モデム、ExpressCard/34スロット、LAN、電源コネクタを備える

写真4 本体前面。SDカードスロット、メモリースティックスロット、無線LANスイッチを備える

また、光学ドライブは、VAIOオーナーメイドモデルなどのカスタマイズ購入によりBlu-rayドライブを搭載させることができる。自宅の大画面液晶テレビに接続して、ちょっとしたホームエンターテインメントPCとしても活用が可能だ。

左側面には、ヘッドホン出力、マイク入力、IEEE1394、USB2.0、モデム、ExpressCard/34スロット、LAN、電源コネクタを装備。LANはギガビットイーサにも対応している。USB端子の数が計2個という点にはついては、このサイズのノートPCでは妥協のポイントだろう。左右に分けて配置してあるので、うまく使いこなしたい。

前面には各種LEDのほか、メモリースティックスロット、SDメモリーカードスロット、無線LANスイッチを備える。SZシリーズではSDメモリーカードスロットを備えず、ExpressCard/34タイプのカードリーダーを添付することでカバーしていたのに比べ、本製品は本体に実装。現時点でもっともユーザーが多いであろうSDメモリーカードを、製品本体のみで利用できるのは便利だ。

写真5 キーボードは「アイソレーションキーボード」と呼ばれる、個々のキーが間隔を空けて配置されるもの。ある意味クセのあるキーボードだが、慣れないうちでも打ち間違いが少なく使いやすい

キーボードは先述のとおり、キー同士の間隔を空けたものである。わりと手が大きい筆者は、小型のノートPCだと慣れないうちは目的のキーと隣のキーを同時打ちしてしまうことがあるのだが、この形状だと、利用初期からそうしたミスが起こりにくいと感じる。

もっとも、A4サイズノートなので、キーピッチは19mmと十分。慣れないうちからミス無く打てるのは、この形状とキーピッチの相乗効果もあるだろう。ただ、この手のモバイルPCで一般的なパンタグラフ式のキーボードよりも、ゆったりとしたストローク感になっている。キレのあるストロークが好みの人には気になるかも知れない。

写真6 タッチパッドはやや大きめだが、クセのない動き。すぐ脇にはFelicaポートも備えている

タッチパッドは、ドットパターンが描かれたもの。このドット目の意味は不明だが、何となく、ではあるが縦横に直線的にポインタを動かしやすくなっているように思われる。これは気持ちの問題だとは思うのだが、デザイン的にも悪くない。そもそも、このパームレスト部からキーボード周りはアルミ一体成形というのもデザイン上の大きな特徴で、高級感と統一感のあるデザインが非常に好印象である。

さて、話は変わって、次は液晶ディスプレイについて触れたい。本製品の店頭モデル(VGN-Z70B)では、13.1型の1366×768ドットの液晶が搭載されている。しかし、VAIOオーナーメイドモデルでは、さらに高解像度の13.1型1600×900ドットが選べるようになっている。最近では15型程度で1920×1200ドットの液晶を持つパネルもノートPCでの採用が目立っており、このクラスでの高解像度液晶にも高いニーズがあると想像される。

今回、ソニーから2製品を借用しており、液晶パネルの違いも体験することができた。写真7が1366×768ドット、写真8が1600×900ドットの液晶パネルとなるが、ちょうど縦方向にアイコン一つ分の違いがあることが分かる。遠くから小さな文字を見るような使い方をする製品でもなく、解像度は高いことに越したことはない。ここは1600×900ドット液晶を奢るべきだと筆者は思う。

写真7 1366×768ドットの液晶画面。縦に並ぶアイコンは7個が限界。B5モバイルのtype Tと同じ解像度である

写真8 こちらは1600×900ドットの液晶画面で、標準設定で縦に8個のアイコンを並べることができる。文字は小さくなるが、極端に距離をおいて使うことが少ないなら問題ないレベル

ちなみに、この解像度に違和感を抱いた人もいるかも知れない。本製品はPC用ディスプレイとしては珍しく、アスペクト比が16:9の液晶を持つ点も大きな特徴だ。PC用では一般的に16:10の比率のものが多く、16:9は主にテレビなどに利用されている。いわゆるフルHD解像度というのは、1920×1080ドットの16:9比率である。例えばBlu-rayのHDコンテンツを視聴した場合、16:10の液晶だと上下に黒帯が生まれるが、16:9ならピッタリ収まるわけだ。ただ、PCで使ううえでは、かなり圧迫感のある解像度との印象を受けてしまう。4:3が一般的であったころから考えると、16:10でも縦方向の圧迫感はあるのだが、それをさらに上回るのだから仕方ない面はあるだろう。おそらく、本製品で一番慣れが必要なのは、この液晶アスペクト比ではないかと思う。

もう一つ気になったのが、本製品の液晶は輝度・コントラストとも高いうえに、写り込みもほとんどなく、非常に見やすいものになっている。ただ、おそらく写り込みを防止するために施された表面加工のせいだと思われるのだが、ときどき斜めに線が走るのである。とくに、動きのあるものを映すさいに顕在化しており、動画視聴などを行っていると、ときどき違和感を抱いてしまう。そうした点でも、本製品はモバイルPCとして屋外でも屋内でもビジネスアプリケーションを使うことに重点を置いた作りのように思われる。それだけに、16:9という比率が生む圧迫感が気になった次第である。