森林セラピー基地に認定された「癒しの森」

「癒しの森」は「森林セラピー基地」に認定されている。「森林セラピー基地」とは、2004年に産官学連携のもとで設立された「森林セラピー研究会」によって、森林の健康効果が確認された森のこと。現在、全国に約30の基地があるが、信濃町は2006年、その第一期に認定された。

だが、信濃町はそれ以前に「癒しの森」事業に取り掛かっていた。その理由の1つは、町の財産である森林資源を守り、活用するためだけではなく、周辺観光地との差別化を図り、集客力をつけなければならないという危機意識からだった。動いたのは、住民有志たち。ドイツで100年以上前に提唱され、現在も盛んな自然療法を参考にし、自然環境、古くからの国際的保養地という町の利点を活かして「癒しの森」が構想されたのだった。

丹田を意識した深呼吸を繰り返すと、心身がさらにリフレッシュされる

緑が次第に濃くなり「癒しの森」はこれからベストシーズンを迎える

「来訪されるお客様が健康になれる町、そこに住む住民が健康な町、地域の自然環境が健康な町という『癒しの町』づくりを将来像として、住民全体が主体となった取り組みを実現していくことが目標です」。

信濃町役場農林課癒しの森係の浅原武志さんはそう話す。ここ3年で、「癒しの森」を訪ねる観光客は、毎年500人ずつ増加している。一見順調そうだが、浅原さんは楽観視していない。やはり、観光客が押し寄せてきた昭和の頃と現在の差を認識しているためだろう。

森林セラピーに童話の世界観をプラスして、個性的な「癒し」を目指している

「その点、住民の方が理解していて、危機感を抱いています。行政は時代の変化に対応できていないのが現状ですね。『癒しの森』での森林セラピーも、ブームではなく、持続可能なものにしなければなりません。今は、次のステップへと移る時期だといえます」。

地方の疲弊はすでに各地で叫ばれている。信濃町は「森林セラピー」という「ヘルスツーリズム」を実践することで、活力を取り戻そうと必死だ。