国際航空運送協会(以下、IATA)は1日、航空チケットの完全電子化への移行を発表した。IATAによると、6月1日までに既に発券、購入された有効期限内の航空券がわずかに存在するが、以降、一切の紙の航空チケットの発行を行わないとし、電子航空券への完全移行の宣言に至ったとしている。

「Last paper ticket ceremony」の様子。紙の航空券に大きく"RETIRED(引退)"の文字が

IATAは、現在全世界の航空会社230社が加盟する業界団体。1920年代から存在が認められ、航空会社によって様式が異なっていた航空券を、IATAが1930年に統一。その後、1972年に「The IATA Billing and Settlement Plan (BSP) 」が導入され、各旅行会社が発券する航空券のカバーにIATAのロゴが印刷されるようになったとされる。電子チケットは1994年に初めて登場し、1997年までにIATAによる電子チケットの世界標準が策定されている。

電子チケットへの完全移行のためのプロジェクトは、2004年にシンガポールで開催された国際会議において、戦争やテロ、SARSといった相次ぐ国際危機、1バレル40米ドルにまで高騰した原油価格、効率面などを考慮して、同年6月より開始。同プロジェクト開始時、電子チケットの発券率はわずか19%。IATAではプロジェクト実行のための第三者機関を設立し、150名の人員を配置。世界162カ国と地域に対して、年間2,200億米ドルを投入したという。

IATAによると、1枚あたり10米ドルの費用がかかる紙のチケットに対して、電子チケットはわずか1米ドルとコストを大幅に削減できるという。IATAのシステムで発券されるチケット枚数は年間で4億枚にのぼり、完全電子化になれば30億米ドルのコストダウンを毎年図ることができるとしている。

IATAではこれまでに全世界200カ国以上の旅行代理店6万店にコンタクトをし、発行済みの未使用の紙の航空券約3,200万枚を回収、破棄と再利用を行っているという。IATAのゼネラルディレクターでCEOのGiovanni Bisignani氏は「一時代が終わった。もし紙の航空券を持っていたら、博物館に寄付するべきだ」とコメントしている。