もっと広く配置してほしい51点のAFポイント

個人的に、AFポイント(ピント位置)はカメラ任せにすべきでないと思っている。写真にとって、どこにピントを合わせるかはとても重要だから。そこで勢いシングルポイントで撮影するのだが、すると他のポイントを使わないわけで、なんだかもったいなく思ってしまう。そこで (?) ニコン得意の「ダイナミックAFモード」だ。AFポイントは1点を選択するが、その他のポイントも情報を提供し、ピントを合いやすくする機構。これはD2XやD200でも搭載されていたが、従来はAFポイントが11点と少なかった。D3は51点のため隣のAFポイントが近くなり、より威力を発揮するはずだ。

また、ダイナミックAFモードには「51点(3Dトラッキング)」がある。これを選ぶと、フレーム内で被写体が移動した場合、自動的にAFポイントがそれを追尾する。スタッフを使って試してみたが、赤く光るAFポイントが被写体に合わせて移っていくのが確認できた。列車の撮影など、フレーム内で被写体が動いていくようなシーンでは、強い味方になるはずだ。

難点は、D3では51点のAFポイントが中央に集中して置かれていること。もっと周辺でピントを合わせたいこともある。D300も51点測距を採用したが、こちらはFXフォーマットということもあって周辺までAFポイントが広がっている。念のため、両機のファインダー図を重ねてみたら、ほぼぴったり重なり、フレームサイズのみFXとDXの違いがそのまま現れた。フォーカスユニットはD3とD300で異なるということだが、配置にはもうひと工夫ほしかった。

AF微調整機能は便利。レンズごとに前後のピントのずれを調整し、登録する機能だ。全てのレンズで一括して微調整が行なえるほか、レンズ個別の調整値も保存できる(20本まで)。たくさんレンズを持っている人にはありがたい機構だろう。

フルサイズのFXフォーマットということで周辺の像が気になるところだが、D3は悪くはない(レンズは AF-S 24-70mm F2.8G EDを使用)。もちろん広角端で絞りを開放にすればそれなりに周辺での光量落ちや像の流れが発生するが、ちょっと絞り込めば解決する。像を結ばないとか、絵にならないようなことはない。

せっかくのフルサイズということで、古い単焦点レンズ(Ai Nikkor 28mm F2.8S)も引っ張り出して使ってみたが、これがなかなかいい具合だった。周辺がおかしくなるようなこともない。満を持してFXフォーマットを登場させただけのことはある。

ダイナミックAFは、測距点をいくつ使うか設定できる

情報表示画面にAFモードが表示される。エリアは左右などに移動できる

D3とD300のファインダー図をAFポイントで合わせて重ねてみた。AFポイントはほぼ同じたなため、D3は中央に寄った配置となる

カメラが苦手なブランコを連写してみた。完全とは言わないが、けっこうな確率で追いかける。
AF-S 24-70mm F2.8G ED / L+Fine(JPEG) / 70mm / 絞り優先AE(F2.8、1/160秒) / ISO 200 / WB:オート / PC:スタンダード

DXレンズを装着すると、自動的にフレームが小さくなる。以下は、FXレンズで絞りを変えて撮影した。
AF-S 24-70mm F2.8G ED / L+Fine(JPEG) / 24mm / 絞り優先AE / ISO 200 / WB:オート / PC:スタンダード

効果がいまひとつなアクティブD-ライティング

「D-ライティング」は明るさをコントロールし、黒つぶれを軽減し、白飛びを抑える機能。以前は撮影した画像を補正する後処理機能だったが(オリジナルは画像処理ソフトに搭載された機能)、特に暗部を明るくするのに絶大な効果がある。D3では「アクティブD-ライティング」の名で、撮影時にこれを使えるようになった。後処理の必要がないわけで、とてもいいと思う。

しかしアクティブD-ライティングは後処理のものに比べ、効果はずいぶん控えめのようだ。「強め」に設定しても、暗部が劇的に明るくなるわけではない。画像の劣化を抑えるためなのかもしれないが、もっと設定の幅を広くしたほうがいいと思う。でないと、またパソコンで同じ処理をすることになる。

アクティブD-ライティングは暗部を持ち上げたり、白飛び抑えるなど、明るさのコントロールを行なう

アクティブD-ライティングは4段階で設定できる。以下はレベルを変えて撮影したもの。
AF-S 24-70mm F2.8G ED / L+Fine(JPEG) / 24mm / マニュアル(F8、1/160秒) / ISO 200 / WB:オート / PC:スタンダード

アクティブD-ライティング:しない

アクティブD-ライティング:弱め

アクティブD-ライティング:標準

アクティブD-ライティング:強め

ライブビューは使い勝手を洗練させてほしい

ライブビューはコンパクトデジカメのように液晶モニターを使ってフレーミングする機能。2007年に各メーカーの一眼レフで採用され、とうとうニコンもこれを装備することになった。スポーツ撮影のような場合は被写体に集中できる光学ファインダーのほうがいいが、風景などのフレームの隅々まで注意を払いたい撮影では、4×5判のように両目で確認できるライブビューはとてもありがたい。

しかし、「手持ち撮影」「三脚撮影」という名称は考えすぎだろう。これはAF方式をどちらにするかという意味で、「手持ち」が位相差式、「三脚」がコントラスト検出式。しかし手持ち撮影でもコントラスト検出で合わせることもあるだろうし、その逆も考えられる。素直にAF方式の名称を使ったほうが理解は早いと思う。

両方を試してみたが、コントラスト検出式のほうが使いやすく感じた。「AF-ON」ボタンでピントを合わせ、シャッターボタンでレリーズする。位相差式の方は、ピント合わせやレリーズはもちろん、ライブビューのオンまでシャッターボタンで行なわなければならない。そのつどミラーなどがガシャガシャ動く。なんとかならいのだろうか?

間違いのひとつは、撮影のたびにシャッターボタンを押してライブビューをオンにしなければならないこと。つまり、撮影後に自動でライブビューに戻ってくれないのだ。これはライブビューを使わせる気がないと思われても仕方がないだろう。個人的には、位相差式でも、ピント合わせに[AF-ON]ボタンを使ったほうが素直に感じた。

コントラスト検出のオートフォーカスは、合焦に時間がかかるのは仕方がないとしても、迷うことの多いのが気になった。現在のレベルではクールピクスのほうが快適だ。プロはマニュアルで合わせたほうがストレスが少ないだろう。それでも、特定レンズでないとコントラスト検出が使えないよりはるかにいい。

コントラスト検出で撮影中の画像拡大では、ピント位置がちゃんと拡大される。コントラスト検出式では画面上のどこでもピントが合わせられる。その場所を中心に拡大するわけで、ピントの確認がとても容易になる。当たり前のことだが、この当たり前のことをできないカメラもあるのだ。ちなみにライブビュー中の拡大表示は[拡大]ボタン+ダイヤルで行なう。最大で13倍。ここまで大きくしなくても、ちゃんと確認できる。マニュアルでも合わせやすい。ただ、個人的にはピントを合わせた後、もう一度全体を見てからシャッターを押したいのだが、この際、ボタン+ダイヤルで戻すのがかったるい。どこかのボタンで一発で全体表示に戻せないものだろうか。

また、1005分割RGBセンサーを利用した被写体判断も行なっている。人物の肌の色を判断し、ピントを合いやすくするという。しかし撮像素子を使った(コントラスト検出時)の顔認識機能は装備していない。

ライブビューは、撮影メニューから使用するかどうかを設定する

オートフォーカス方式は、手持ち(位相差式)と三脚(コントラスト検出)から選ぶ

レリーズモードダイヤルを「LV」(ライブビュー)に合わせる

コントラスト検出でのライブビュー画面。フォーカスポイントはどこにでも合わせられる

ピントを外れた場所のボケ具合もモニターで確認できる

拡大表示でピントを確認。最初は枠が赤で、合焦すると緑に変わる