オフィス内でスマートフォンやノートPCを使って業務を行う企業が増えているなか、快適な無線LAN環境構築が業務効率化のためにも重要な要素になっています。しかし、オフィスへの無線LAN環境構築に必要な機器選定にお悩みの担当者の方も多いのではないでしょうか。オフィス・法人向け無線LANと家庭用無線LANには違いがあり、オフィスに家庭用無線LANを導入してしまうと、うまく無線LANにつながらないトラブルが発生することも。
本記事では法人向け無線LANの特徴や家庭用無線LANとの違い、機器選定のポイント、おすすめ製品を紹介します。本記事を参考にオフィスに快適な無線LAN環境を導入しましょう。
オフィス・法人向け無線LANと家庭用無線LANの違い
無線LANとは、無線で接続されたLAN(Local Area Network)を指します。よく耳にするWi-Fiは無線LANの規格の1つです。無線LAN環境を構築するためには、インターネットに接続できる回線と無線LAN機器の2つが必要となります。 本項目ではオフィス・法人向け無線LANと家庭用無線LANにおける機器や環境の違いを解説します。
1、オフィス・法人向け無線LANの基本構成と家庭用無線LANとの違い
オフィス・法人向け無線LANと家庭用無線LANとの大きな違いは以下の3点です。
- ルータ機能の有無
- 同時接続数
- セキュリティ機能
家庭用の無線LANでは、ルータ機能と無線LANアクセスポイント機能が一体化した「無線LANルータ」が必要です。一方、オフィス・法人向けでは、既にLAN間での通信に必要なルータが導入されている前提で、無線LANアクセスポイント機能のみが備わった無線アクセスポイント単体の製品が多くなっています。
同時接続数も家庭用無線LANは1台あたり10~30台程度のものが多いのに対し、オフィス・法人向け無線LANは1台あたり128台と接続できる台数が増えます。
また、セキュリティ機能に関してもオフィス・法人向け無線LANは後述する無線LANコントローラーなどとの連携で高度な接続監視・不正アクセス防止が可能です。
2、無線LANのアクセスポイントとコントローラーの違い
無線LANのアクセスポイントとは、無線LANの電波を発信しデバイスへの通信を提供する機器です。オフィス・法人向け無線LANでは、アクセスポイントと各アクセスポイントを管理するコントローラーを連携することができます。
無線LANコントローラーを利用することで、以下のような高度な機能を利用した柔軟な無線LAN環境を構築できます。
- 無線LANアクセスポイントへの接続状況の可視化
- 無線LANアクセスポイントの一括メンテナンス・ログ取得
- 認証用サーバーとの連携
オフィス内に数十台規模でアクセスポイントを設置する場合には、コントローラーを導入することで、セキュリティ性を高めるとともに管理コストを大幅におさえることができるでしょう。
無線LANの規格や周波数の違い
無線LANにはいくつかの規格と周波数による違いが存在します。本項目では無線LANの主な規格と周波数の違いを解説します。
1、無線LANの主な規格3種類
現在の無線LANの主流な規格としては以下の3種類があります。
規格名 | 最大通信速度 | 周波数帯 |
---|---|---|
IEEE802.11n(Wi-Fi4) | 600Mbps | 2.4GHz帯/5GHz帯 |
IEEE802.11ac(Wi-Fi5) | 6.9Gbps | 5GHz帯 |
IEEE802.11ax(Wi-Fi6)9.6Gbps | 2.4GHz帯 | 5GHz帯 |
下にいくほど新しい規格となっており、現在ではIEEE802.11ax(Wi-Fi6)が最新です。最新であるほど最大通信速度は速くなりますが、IEEE802.11ax(Wi-Fi6)はまだ新しい規格のため、現在の主流はIEEE802.11ac(Wi-Fi5)となっています。
アクセスポイントを選ぶ際は、利用するデバイスとアクセスポイントが規格に対応しているかを確認して導入しましょう。
2、無線LANの周波数の違い
無線LANの電波には2.4GHzと5GHzの2つの周波数帯があります。違いは電波が届く範囲と干渉の受けやすさです。
2.4GHz帯は周波数が低く壁などの障害物にも強いため、電波が遠方まで届きやすいという特徴があります。ただし、2.4GHz帯は電子レンジなどの家電やBluetoothなどでも利用されるため、お互いに干渉しあい電波が弱まることがあります。
一方5GHz帯はWi-Fi専用の電波のため、他の家電などの電波と干渉せず、安定して通信を行えます。しかし、壁などの障害物に弱いため、設置場所によっては電波が届かなかったり通信速度が落ちたりする場合があります。
居室間の利用など複数の障害物をまたぐ場合には2.4GHz帯を、会議室内のみの利用で障害物がない場合には5GHz帯をといった具合に使い分けを行うといいでしょう。
法人向け無線LANのおすすめ10選を徹底比較
法人向け無線LAN機器を選ぶ際のポイントについて解説したところで、ここからは具体的なおすすめ製品を紹介・比較します。それぞれのポイントを絞って紹介していきますのでぜひ参考にしてください。
「ACERA 950」
株式会社フルノシステムズ
- 提供形態:アプライアンス
- 対象規模:全ての規模に対応
- 参考価格:別途お問い合わせ
フルノシステムズが提供する、多くの企業や公共施設への導入実績を持つ無線LANアクセスポイント です。価格と通信品質のコストパフォーマンスに優れています。特にACERA 950は教育現場で使われることを想定しており、数十人が同時に接続を行っても電波干渉が起こりにくいように設計されています。
アクセスポイント1台から簡単に導入でき、かつ拡張も容易なため、利用規模を問わず活用できる製品です。アクセスポイントは後述する コントローラーと連携が可能で、より大規模で柔軟な無線LAN環境構築も可能になります。
「法人向けWi-Fi(無線LAN)」
株式会社BUFFALO
- 提供形態:パッケージソフト/アプライアンス
- 対象規模:全ての規模に対応
- 参考価格:別途お問い合わせ
BUFFALOが提供する法人向けの無線LANアクセスポイント です。BUFFALOは家庭向けから法人向けまで、屋内屋外を問わず さまざまなシチュエーションで利用できる幅広いラインナップを取り揃えています。
同時接続数が最大384台というアクセスポイントもあり、法人向けのなかでも大規模な設置環境にも対応しやすくなっています。 価格も比較的安価でコストパフォーマンスがいいため、選択肢の1つとして検討しやすい製品です。
「法人向けWi-Fi(アクセスポイント・PoE無線アクセスポイント)」
ELECOM株式会社(無線AP)
- 提供形態:パッケージソフト/アプライアンス
- 対象規模:全ての規模に対応
- 参考価格:別途お問い合わせ
ELECOMが提供する無線LANアクセスポイント は、BUFFALOと同様に家庭向けから法人向けまで、屋内屋外を問わず さまざまなシチュエーションで利用できる幅広いラインナップを取り揃えています。
Wi-Fi6に対応したモデルのアクセスポイントも比較的安価に販売している点も魅力です。特に 宿泊施設への導入には初期調査費用0円で導入支援、運用保守を行うサービスがあり、サポートも充実しています。
「ギガらくWi-Fi」
東日本電信電話株式会社(NTT東日本)
- 提供形態:サービス
- 対象規模:全ての規模に対応
- 参考価格:別途お問い合わせ
ギガらくWi-Fiは細かい設定が不要でインターネット回線を用意すればすぐに利用可能な手軽さが魅力なサービスです。設定済みの無線LANアクセスポイントが届くため、 LANケーブルを接続するだけで無線LAN環境を構築 することができます。サービスを提供しているのはNTT東日本であり、365日のサポートでトラブル発生時にも安心です。
設置台数ごとのサブスクリプションサービス のため、多くの台数を長期間運用する場合にはトータルコストが高くなる可能性がありますが、 小規模環境へのスムーズな導入に適したサービスです。
「Cisco Meraki」
シスコシステムズ合同会社
- 提供形態:クラウド
- 対象規模:全ての規模に対応
- 参考価格:別途お問い合わせ
Cisco Merakiはさまざまなアプライアンスをクラウド上で管理するITソリューションです。そのアプライアンスの中のCisco Meraki MRシリーズがクラウド型無線LANアクセスポイントにあたります。
アクセスポイントは貸し出し型で、LANケーブルを差すだけで自動的に設定をダウンロードを行ない手間をかけずに利用が可能です。 クラウド上で無線コントローラーとしても利用可能なため、Cisco Merakiを導入するだけで高度な無線LAN環境を構築することができます。
Cisco Umbrellaとも連携 ができ、無線LAN環境に最適化されたセキュリティ機能を導入することも可能です。
「H3C」
H3C Japan Technologies合同会社
- 提供形態:ハードウェア / オンプレミス / クラウド
- 対象規模:全ての規模に対応
- 参考価格:別途お問い合わせ
H3Cのアクセスポイントの魅力は、動作モードによってアクセスポイント単体、コントローラー機能、クラウド管理機能と さまざまなシチュエーションにあわせて柔軟に切り替え を行うことができる点にあります。優れた性能に加えて、環境にあわせた動作モードの切り替えにより安定した無線LAN通信が実現できます。
クラウド管理ではCisco Merakiと同様に無線LAN環境のアクセス、端末接続状況を含め ネットワーク全体をリアルタイムで統合的に管理することが可能です。
「FortiAP」
フォーティネットジャパン株式会社
- 提供形態:ハードウェア
- 対象規模:全ての規模に対応
- 参考価格:別途お問い合わせ
FotiAPを提供するフォーティネットは、ファイアウォールなども提供するセキュリティに特化した企業であり、無線LANについても高いセキュリティ性が魅力です。アクセスポイント自体にも充実したセキュリティ機能が備わっていますが、同社のファイアウォール製品ForiGateと組み合わせることで、 よりセキュアな無線環境を構築することができるでしょう。
FortiAPリモートアクセスポイントシリーズでは、管理者がセキュリティポリシーを定義できます。合致した無線アクセスのみを有線LANに接続可能にすることで、アクセスポイントを経由した 無線接続機器から社内ネットワークへの不正アクセスを防ぎ、情報漏えいやウイルス感染などが発生するリスクを抑える ことができます。
「AXprimoW」
アラクサラネットワークス株式会社
- 提供形態:アプライアンス
- 対象規模:全ての規模に対応
- 参考価格:別途お問い合わせ
アラクサラネットワークスはネットワーク機器に強い企業で、AXprimoWシリーズの無線LANアクセスポイントも コストパフォーマンスに優れ安定した通信が可能な無線LAN環境を構築することができる製品です。
無線LANアクセスポイントやコントローラーだけでなくコアスイッチやエッジスイッチもアラクサラに統一することでよりシナジーが利くようになるでしょう。 購入後8年間の保証サービスがついている点も魅力で、安心して長期間の運用を行えます。
「ビジネスWi-Fi」
株式会社USEN ICT Solutions
- 提供形態:クラウド / ASP / SaaS / サービス
- 対象規模:全ての規模に対応
- 参考価格:【初期費用】事務手数料(/AP):5,000円、AP機器代(/AP):32,600円~、工事費用:実費
【月額料金】2,200円 ※別途料金が発生する場合あり
USEN GATE O2はクラウド型の無線LANアクセスポイント貸し出しサービスです。 個別のアクセスポイントの設定・管理が不要で手軽に無線LAN環境を構築 できます。クラウド上で無線LANコントローラー機能を利用した管理もできるため、管理サイト上からリアルタイムで接続状況やログの確認も可能です。
料金プランにもよりますが、同じクラウド型の無線LANアクセスポイント貸し出しサービスのなかでも低コストである点が魅力的です。
「Relay2」
株式会社ティーガイア
- 提供形態:オンプレミス / クラウド
- 対象規模:全ての規模に対応
- 参考価格:別途お問い合わせ
Relay2はクラウド型の無線LANアクセスポイントであるとともに、エッジコンピューティング機能が搭載 されていることが特徴です。ネットワークコンピューティング機能によりネットワークとサーバー双方の機能を兼ね合わせることで高いパフォーマンスを発揮することができます。
RADIUSやDHCPといったサーバー機能が利用できるアクセスポイントは他社にもありますが、Relay2には Webコンテンツのキャッシュサーバーとしての機能がある など、より充実した機能が搭載されています。自社内でサーバーを構築・運用するコストをかけずに高品質な無線LAN環境を構築することが可能です。
法人向け無線LANの選び方のポイント2点
無線LANは多くの製品が展開されているので、どれを選べばいいかわからないという方も多いでしょう。そこで、ここからは法人向け無線LAN機器を選ぶ際のポイント2つを見ていきます。
1、機器のスペックと設置場所
法人向け無線LAN機器を選ぶ際には、想定される同時接続数と設置場所を確認しましょう。
アクセスポイントの同時接続数を超える端末から同時に接続すると、通信の遅延や切断が発生する可能性があります。IoTの発展により今後無線LANに接続するIT機器が増加することを想定して余裕を持った機器を選びましょう。
また、設置環境にあわせて、電波を届けたい範囲や障害物の有無を確認し、適切な周波数帯を利用しましょう。無線バンドステアリング機能が備わっている機器であれば、周囲の無線LAN機器の電波強度や周波数帯を判別し、最適な周波数帯に自動で振り分けを行うことが可能です。そのため、安定して通信を行いやすくなります。
設置場所が屋外の場合には、アクセスポイントが屋外用か、動作保証温度や防水・防塵・耐腐食性に問題がないかもチェックしておく必要があります。
2、セキュリティ機能
無線LANは、電波が届く範囲であれば誰でもアクセスができる可能性があるという性質上、セキュリティ対策が非常に重要です。
まず無線LAN機器には認証方式と暗号化方式の規格があります。主な規格はWPA(TKIP)、WPA(AES)、WPA2(TKIP・AES)の3種類です。現在の主流はWPA2(AES)であるため、対応している製品を選ぶようにしましょう。
また、同じ無線LAN機器に接続している端末同士が相互に通信をできなくするプライバシーセパレーター機能や事前に登録した端末からの接続のみを許可するMACアドレスフィルタリングなどの基本的なセキュリティ機能が備わっているかを確認することも重要です。
これらのセキュリティ機能に加えて、無線LANコントローラーを導入しアクセスポイントのファームウェアを最新に保つ、不正侵入検知・防止システムを導入するなど、より高度なセキュリティ対策を検討するといいでしょう。
まとめ
本記事では法人向け無線LANの特徴や機器選定のポイント、おすすめ製品を紹介しました。
オフィス・法人向け無線LANと家庭用無線LANとの大きな違いはルータ機能の有無、同時接続数、高度なセキュリティ機能です。
オフィス・法人向け無線LANは既存のネットワーク環境に導入することが想定されているためルータ機能がない場合が多く、家庭用無線LANよりも多くの同時接続数に対応可能で高度なセキュリティ機能も備わっています。また、オフィス・法人向け無線LANではアクセスポイントとコントローラーを連携することで、管理コストを削減しつつセキュリティ性を高めることができます。
無線LANは規格による最大通信速度の違い、対応できる周波数が異なります。周波数帯によっても電波が届く範囲や障害物に対する透過力に違いがあるため、規格や周波数の違いをおさえておくようにしましょう。
これらの情報をふまえて、法人向け無線LANを選ぶ際には、接続規模や設置環境に応じた機器のスペックと搭載されているセキュリティ機能を重点的に確認するのがおすすめです。
自社内への無線LAN環境の構築を検討されている方は、まず製品の資料請求を行ってみてはいかがでしょうか。