経費精算アプリは、経費精算システムをさらに便利にするツールです。今回は、経費精算業務の課題と、アプリが使える経費精算システムの導入効果、製品の選び方について解説し、最後におすすめ製品も紹介します。
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経費精算アプリとは
経費精算アプリとは、経費精算システムが提供するアプリのことで、スマホやタブレット端末にインストールして使用します。経費精算アプリの提供機能は、フルスペック版ではない点には留意してください。製品によって提供機能の範囲が異なるため、アプリでどの操作を行いたいかも考えて製品を選ぶ必要があります。
経費精算業務の課題
そもそも、従来の経費精算業務にはどのような課題があるのでしょうか。順番に解説します。
1、差し戻しによる工数
経費精算業務は、差し戻しの多い業務のひとつです。中でも差し戻しが多い経費は交通費。合理的なルートを通っていなかったり、定期券の区間を考慮しない金額を請求したり、といった請求ミスが頻繁に発生します。
2、請求書や領収書をチェックする手間
経費精算申請書を提出する際、証憑書類(しょうひょうしょるい)として、紙の請求書や領収書を添付します。これらの書類に間違いがないかどうかをチェックするのもかなりの手間です。証憑書類は、必要経費を計上する上で欠かせないため、記載ミスなどがないかを慎重にチェックしなければなりません。
さらに、経費精算申請書と証憑書類に齟齬があり差し戻すと、修正した申請書をもう一度申請者の上長に承認依頼を出す、という手間もかかります。
3、書類を保管するコスト
経費精算で作成される経費精算申請書と証憑書類は、法定書類として7年間の保管が義務付けられています。また書類を保管するには、保管場所にかかるコストや整理するための文房具代、保管にかかる人的コストなどが必要です。
4、経費発生から申請・承認までのタイムラグによる弊害
経費が発生してから申請・承認処理まで終わらせ、経理部門で支払処理を済ませるまでには、非常に時間がかかる点も大きな課題です。少なくとも申請者・承認者・経理部門担当者の3人が処理に関わります。そのため、承認者や経理部門の不在による確認の遅れが生じやすくなります。
さらに経費精算業務は各作業に期日がない点も問題です。ついつい目の前の仕事にばかり気を取られ、経費処理が後回しになるケースも散見されます。
5、エクセル管理の問題
紙運用だと手直しが大変なため、エクセルのフォーマットを使った経費精算をしている企業も多いでしょう。
しかし、エクセルを利用したとしても、手入力の部分が大きいため、人的ミスが発生する可能性はあります。また、修正の都度メールで申請書のエクセルファイルを送付する際、最新版と旧版を間違えて送信してしまう、というミスもあり得ます。
経費精算業務に関わるこれらの課題に対し、経費精算アプリ・システムを導入することでどのように解消できるでしょうか。
経費精算アプリ・システムの導入効果7つ
アプリを利用できる経費精算システムを導入すると、以下のような効果が得られます。
1、写真撮影による入力の効率化
経費精算アプリは、領収書やレシートを撮影してOCR機能で記載内容を読み取り、経費申請の入力をアシストする機能があります。この機能によって手入力による入力ミスも発生しにくくなります。
また、手間をかけずにオンラインで経費申請ができるため、経費申請のためだけに出社する必要もありません。申請者は経費が発生するとすぐに申請する習慣が身に付き、申請忘れも少なくなるでしょう。
2、交通系ICカードによる入力の効率化
経費精算アプリの中には、交通系ICカードの乗降履歴を取得する機能を持つものもあります。交通系ICカードに記録されるデータは、実際にかかった交通費の実費のみなので、そのまま経費精算に利用可能です。
この機能を利用することで、交通費の申請は手入力が不要となり、計算ミスの懸念もなく、自動的に経費データに取り込まれます。申請者にとっても承認者・経理部門にとっても交通費精算の手間の大幅な削減が実現できます。
3、確認・承認作業のスピードアップ
経費精算アプリの中には、承認者が行う承認処理の機能を提供しているものもあります。社外からの経費申請・承認が可能となるため、経費発生から支払処理までの期間が大幅に短縮できる点も経費精算アプリの導入効果です。
4、領収書ペーパーレス化
電子帳簿保存法に基づいて国税関係の帳簿・書類を電子データとして保存することで、原本は破棄可能となります。領収書やレシートも国税関係の書類なので、電子帳簿保存を導入すれば領収書のペーパーレス化が可能です。
経費精算システムの中には電子帳簿保存法に対応している製品もあります。システム化とともに電子帳簿保存を導入することで、業務効率化はさらに進みます。電子帳簿保存の対応については、税理士や税務署へも相談しながら進めましょう。
5、レシート紛失など人的ミスの削減
領収書やレシートをすぐに写真撮影して申請することで、これらの書類を紛失して経費申請できなくなるといった人的ミスを減らせます。先述した電子帳簿保存も導入して経費精算のペーパーレス化が可能になれば、さらに紛失リスクは低減します。
6、経費情報のリアルタイム把握
経費精算システムを導入すると、経費情報を一元管理でき、現在の状況もリアルタイムで把握できます。承認処理が遅れている経費申請があればフォローすることも可能です。
7、法改正対応のスピードアップ
アプリを提供するクラウド型の経費精算システムは、サービス提供者が法改正対応を行うため、自社で対応する必要はありません。対応もスピーディに行われるため、常に最新の法令に対応したシステムを利用できます。
経費精算アプリおよび経費精算システムの導入効果は、申請者・承認者・経理部門ともにかなり大きいと言えます。では、実際に経費精算アプリを選ぶ際は、どのような点に着目して比較すればいいでしょうか。
経費精算アプリの選び方・比較ポイント5点
経費精算アプリの選び方・比較ポイントについて解説します。自社に合ったアプリ を選ぶために、ぜひチェックしてください。
1、経費精算の対象範囲
経費精算アプリによっては、経費精算できる対象範囲が異なります。交通費の清算が得意なタイプや、領収書・レシート読取機能に優れているタイプなどがあり、どのタイプを選ぶかも重要です。出張が多く法人用のクレジットカードを利用することの多い企業なら、クレジットカードの利用履歴を連携できるシステムを導入すると便利です。
2、モバイルアプリで実現したい機能の対応状況
経費精算アプリで使える機能は、製品によって違いがあります。モバイルアプリでどの機能を利用したいのかを明確にして、対応状況を確認しましょう。例えば、アプリで承認まで行いたいかかどうかも重要な確認ポイントです。
3、操作性の確認が可能か(無料プラン・トライアル版など)
経費精算アプリの操作性のよさも、重視したい比較ポイントです。多くの経費精算システムは無料プランやトライアル版を用意しているため、これらを利用してアプリの操作性も確かめましょう。
4、入力が自動化あるいは手間がかからないようになっているか
経費申請の画面では、OCR機能により領収書やレシートのデータを読み取った状態で後は修正するだけというアプリもあります。
また、読み取ったデータをオペレーターが代行入力するサービスをオプションで選べる製品もあります。システム側でオペレーターが入力するため、申請者の労力は大幅に軽減されます。ただし代行入力サービスには別途料金がかかるため、費用対効果を考えて選択しましょう。
5、料金体系
経費精算アプリ自体は基本的に無料で提供されますが、経費精算システムの料金体系も比較検討しましょう。月額料金や初期設定、領収書やレシートをオペレーターが処理する場合の価格設定など、自社がどのように利用するかを想定して、総コストを算出して比較します。
経費精算アプリ導入時の注意点4つ
経費精算アプリを導入する際、注意したい点について解説します。
1、NFC対応している端末が用意できるか
交通系ICカードのデータ連携による交通費の自動精算は、多くの企業に取って魅力的な機能です。しかし、この機能を利用するには、アプリを利用するモバイル端末側が、NFC対応でなくてはなりません。
※NFC=Near Field Communication(近距離無線通信)非接触ICチップにより、対象に触れずに通信する通信規格
2、領収書の読み取り精度が低い場合があるので確認を
領収書やレシートの画像データから記載内容を読み取るOCR機能ですが、読取精度が低い場合もあります。特に手書きの場合やシワなどが生じてしまった場合などは読取精度が下がり、手入力での修正が必要です。
無料プランやトライアル版で操作を確認する際は、OCR機能の読取精度も確認しましょう。手書きの領収書などを扱うケースが多い場合は、オペレーターによる代行入力サービスの利用も検討する必要があります。
3、セキュリティ対応は要確認
基本的に、クラウド型の経費精算システムはクラウド上にデータを保管するという性質上、サービス提供者側でセキュリティ対策は行っています。しかし、念のためどのようなセキュリティ対策を行っているか確認しましょう。
内容としては、データのバックアップや保管データの暗号化、データ通信の暗号化、利用しているデータセンターの場所などを確認します。
4、誤申請や手続き不備の際の手間
経費精算の過程でイレギュラーが起こった場合に、その修正にどれほど手間がかかるかも確認しておきたいポイントです。無料プランやトライアル版で動作確認を行う際は、異常が起こった場合のリカバリーがしやすいかどうかも確認しましょう。
ミスに気付いた時点で経費申請を自分のところに引き戻して再申請できるのか、承認者や経理部門に一度却下してもらわないといけないのかで、かかる手間は大きく違ってきます。
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経費精算アプリのおすすめ10選を徹底比較
ここからは、経費精算アプリを提供しているおすすめの経費精算システムを紹介します。自社に向いている製品はどれなのか、比較・確認しましょう。
交通費や旅費精算に強みあり!「Concur Expense」株式会社コンカー
■アプリで利用可能な機能:経費の登録・申請・承認、出張の予約と予定管理、走行距離の自動取込・追跡
■カード明細の自動取得:〇
■交通系ICカード対応:〇
■電子帳簿保存法対応:〇
iOSのアプリを2種類提供「ジョブカン経費精算」株式会社Donuts
■アプリで利用可能な機能:経費の登録・申請・承認、交通系ICカードの読み取り
■カード明細の自動取得:〇
■交通系ICカード対応:〇
■電子帳簿保存法対応:〇
申請から承認までアプリで完結「マネーフォワード クラウド経費」株式会社マネーフォワード
■アプリで利用可能な機能:経費の登録・申請・承認・領収書自動読み取り・ICカード読み取り- (Androidのみ)
■カード明細の自動取得:〇
■交通系ICカード対応:〇
■電子帳簿保存法対応:〇
多くのサービスとデータ連携可能「会計 freee」freee株式会社
■アプリで利用可能な機能:経費の登録・申請、領収書の自動読み取り
■カード明細の自動取得:〇
■交通系ICカード対応:〇
■電子帳簿保存法対応:〇
定期区間金額の自動控除機能が便利「ジンジャー経費」ジンジャー株式会社
■アプリで利用可能な機能:経費の登録・申請・承認
■カード明細の自動取得:×
■交通系ICカード対応:〇
■電子帳簿保存法対応:×
経費精算用とICカード読み取り用のアプリを用意「楽楽精算」株式会社ラクス
■アプリで利用可能な機能:経費の登録・申請・承認・領収書自動読み取り・ICカード読み取り
■カード明細の自動取得:〇
■交通系ICカード対応:〇
■電子帳簿保存法対応:〇
オペレーター&ダブルチェックで高精度「RECEIPT POST(旧:Dr.経費精算)」株式会社BEARTAIL
■アプリで利用可能な機能:経費の登録・申請・承認
■カード明細の自動取得:〇
■交通系ICカード対応:〇
■電子帳簿保存法対応:〇
旅費精算に強い「J’sNAVI NEO」株式会社JTBビジネストラベルソリューションズ
■アプリで利用可能な機能:経費の登録・申請・承認(一括承認も可能)
■カード明細の自動取得:〇
■交通系ICカード対応:〇
■電子帳簿保存法対応:〇
キャッシュレスで経費精算「SmartGo Staple」エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
■アプリで利用可能な機能:経費の登録・申請・承認、領収書の自動読み取り、プリペイドカード自動チャージ申請・承認、Stapleカードの無効化
■カード明細の自動取得:△(専用のプリペイドカードからのデータ連携)
■交通系ICカード対応:〇
■電子帳簿保存法対応:〇
大規模企業向けの経費精算システム「Ci*X Expense」株式会社電通国際情報サービス
■アプリで利用可能な機能:交通系ICカードの読み取り
■カード明細の自動取得:〇
■交通系ICカード対応:〇
■電子帳簿保存法対応:〇
スマホ対応している経費精算システムのおすすめ2選
ここからは、アプリは提供していませんがスマホからWebブラウザを使ってアクセスできる、経費精算システム2選を簡単に紹介します。1、「経費BankⅡ」SBIビジネス・ソリューションズ株式会社
機能豊富ながら低コストで導入できるクラウド型の経費精算システムです。申請内容のチェック機能が充実しており、クレジットカードやICカードデータの連携にも対応しています。
2、「皆伝!ワークフロー」スミセイ情報システム株式会社(SLC)
オンプレミスとクラウドどちらの提供形態にも対応している経費精算システム。なかでも、交通系ICカードや出張手配サービスとの連携による業務効率化に特徴があります。
経費精算アプリ導入で経費精算を効率化しよう
経費精算アプリを提供する経費精算システムを導入すると、アプリによって経費の申請から承認までの効率化が進みます。さらに、領収書のペーパーレス化など経費関連の業務全体も効率化できるため、経費精算業務に課題を抱えている場合は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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