予算統制とは?予算管理との流れや管理プロセスのポイント4つを紹介

予算管理システム

予算統制は、予算管理の構成要素の1つであり、これから上場を目指す企業にとって重要な概念です。本稿では、予算統制の概要を整理した後、予算統制と予算管理の流れや予算管理プロセスのポイントについて解説します。最後に、予算統制で失敗しないための注意点についてもまとめていますのでぜひ参考にしてください。

予算統制とは

予算統制とは、予算計画と期末実績をリンクさせて、比較・分析していく取り組みのことで、予実管理とほぼ同じ意味を持つ言葉です。予算統制を行うことで、予算と実績の差異を確認し、進捗や達成度などの状況を把握しやすくなります。

1 予算統制を行う意義

予算統制を行う意義は、策定した予算と実績の差異を測定して迅速な対策を行い、最終的に予算を達成することにあります。予算管理全体をPDCAサイクルで表現すると、予算策定はP(計画)、予算統制はD(実行)C(チェック)A(改善)部分に相当する取り組みです。

2 上場審査でも重視される予算統制

上場企業は、投資家に対して情報を開示しなくてはなりません。上場予定企業は開示の仕組みを構築するため、予算管理を可能とする体制を構築する必要があります。上場審査においては、策定した予算を下方修正することなく達成したかどうかについては、非常に重視される項目の1つです。

予算管理を可能とするには、PDCAサイクルを回して継続的な実績の計測と改善を行う体制作りが重要となります。

予算統制と予算管理の流れ

予算統制と予算管理の流れについて、予算編成フェーズと予算管理・統制フェーズに分けてまとめました。

フェーズ 社長 予算担当部 予算会議 現場の各部門
予算編成 1-1 経営方針 1-2 審議 1-3 編成方針
1-4 部門予算原案提出依頼 1-5 部門予算原案作成
1-7 部門予算原案 1-6 部門予算原案提出
1-8 部門間調整 1-9 審議
1-10 部門予算案決定
1-11 総合予算案作成
1-13 審議 1-12 審議
1-14 総合予算決定 1-15 総合予算書作成・展開 →1-16 総合予算書 受取・予実管理開始
予算管理・統制 2-1 差異分析表 2-1 差異分析表
2-3 総合分析結果 2-2 総合分析 2-2 検討・対策
2-4 取締役会にて報告・検討・対策
2-5 対策実施

予算編成フェーズでは、社長からトップダウン式に経営方針が展開され、その方針をベースに、現場部門は経営方針を取り入れつつ部門ごとの予算案を策定。予算案は、ボトムアップ式に現場部門の予算案から積み上げられます。

予算担当部は、現場部門とともに予算会議や部門間調整を行いながら、最終的な総合予算を決定します。

では、予算管理・統制フェーズでは、社長・予算担当部門・現場部門でどのような動きになるでしょうか。

1 各部門は差異分析を行い予算担当部と相談して対策を実施

現場の各部門は、定期的に予算と実績の差異測定および差異分析を行います。基本的には1ヶ月ごとに差異測定を行い、翌月1週目までに把握できているというスピード感が必要です。

差異分析により対策案を策定すると、現場部門は予算担当部に報告・審議を実施。決定した対策案を実施して、予算と実績の差異を縮めることを目指します。

差異測定は定期的に行わなくてはなりません。そのためには、予実管理を正確かつ迅速に行える仕組みが必要です。管理職が手作業で予実管理を行うのは大きな負担となり、迅速にPDCAサイクルを回すことはできません。

一般的には、上場企業は予算管理システムを導入し、実績を入力すれば自動的に差異分析を行えるような環境を整えています。

2 予算担当部は総合分析を行う

各部門の差異分析とは別に、予算担当部も、月1回のペースで総合予算書をもとに全社レベルで予算と実績の差異分析を行います。総合分析結果は、翌月1週目には取締役会へ連携される流れです。

総合分析の結果、差異が大きくなっている部門に対しては、翌月中旬に開催される取締役会にて対策案を検討・決定。改善策が決まったら、該当部門は改善策を実施します。

3 社長は総合分析結果を確認し取締役会で改善を検討

社長は、毎月予算担当部から上がってくる予実の差異分析表を確認し、翌月中旬の取締役会で、差異分析で対策の必要があるプロジェクトや部門の対策を検討します。

スピーディな意思決定ができるよう、提出する差異分析は、論点を端的にまとめて説明できるようにしておかなければなりません。以下は、差異分析表をまとめるポイントです。

  • 売上高、売上原価、売上総利益は、事業別・商品別の数字も表示
  • 単月・累計および通期予算に対する着地見込みも記載
  • 前年同月比較や前年同月累計比較
  • ベンチマークする会社との比較
  • 予実差異分析コメントは一定のルール(予算比10%以上のマイナスなど)で絞り込みメリハリをつける

取締役会によって毎月予算と実績の差異分析と課題抽出・改善案の決定が行われ、決まった対策を各部門が実施します。このようにして、予算達成のためのPDCAサイクルを1ヶ月ごとに回すまでが、予算統制の流れです。

予算統制における予算管理プロセスのポイント4つ

予算統制における予算管理プロセスをスムーズに進めるためには、いくつかのポイントがあります。どのような点を押さえていくべきかを確認しましょう。

1 実績値のタイムリーな測定

実績値のタイムリーな収集と測定は、予算統制に必要不可欠な要素です。進捗管理を担当する現場の管理者は本業でも忙しいため、各担当者が実績を入力すると自動的に集計できる仕組みを作る必要があります。

2 予算と実績の差異も迅速に把握

実績値をタイムリーに集めると同時に、予算との差異も迅速に把握できる仕組みが必要です。これらをすべて手入力・集計しているとそれだけで時間がかかり人的ミスの可能性もあるため、予算管理のシステム化は必須です。

3 月次で予実差異の分析が必要

予算管理は、実績を入力して差異を確認して終わりではありません。差異の原因を分析して、予算を達成するために必要な対策方法を検討し、対策を実行に移すことが重要です。予算管理システムは、予実の状況をグラフ化などで可視化するため、月次の差異分析に大きく役立ちます。

4 売上に占める割合の大きい重要案件は週次で進捗把握

売上に占める割合の大きな部門やプロジェクトがある場合、月1回の差異分析を週1回にすることで、予算達成をより確実にするよう検討しましょう。例えば、全社の売上に占める割合が〇%のプロジェクトは「重点管理プロジェクト」として週次で再分析、というような運用ルールを設定。自動的に週次管理ができるようにします。

予算統制で失敗しないための注意点3つ

予算統制を成功させるためには、注意しないといけないポイントがあります。特に重要な注意点として、3点紹介します。

1 重要案件を抱える事業部と予算担当部との連携に工夫が必要

重要案件を抱える事業部は、週次で予実の差異分析・改善の実行が求められます。そのため、予算担当部との緊密な連携が必要です。正確・迅速に進捗情報を上げる仕組みには予算管理システムを導入するとともに、予算担当部に情報を集中して上げるための組織体制作りも検討しましょう。

2 コスト管理も事業部単位で把握を

コスト管理も、全社単位だけでなく、事業部単位で把握しましょう。なぜコストがかかっているかの原因を分析し、そのまま投資するかコストをかけないような改善が必要かを考えるには、事業内容によって異なります。そのため事業部単位で管理した方が、差異分析や改善策検討に効果的です。

3 迅速に対応するにはシステム化が必要

上場審査を通過するためには、タイムリーで現場部門に負担をかけない予実管理でなくてはなりません。また、自動的に実績値を収集してリアルタイムに差異分析までできる仕組み作りも求められます。

これらの要件を満たすには、予算管理全体のシステム化が必要です。予算管理システムなら、現場部門が実績値を入力するだけで、予実の差異分析までをリアルタイムに進められます。

予算統制を推進するために予算管理システムを導入しよう

予算統制は予算管理に含まれる取り組みです。予算編成で策定された予算に対する実績値をリアルタイムに把握し、月次ベースで差異分析と対策を行うことで予算達成を目指します。

予算統制を推進するためには迅速な予実管理が必要です。しかし、人手で実績値を収集・集計すると、正確で迅速な差異分析は難しくなります。上場審査を通過できるレベルの予算統制を進めるためには、全社レベルでの組織体制作りと予算管理システムの導入を検討しましょう。

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