予算管理は、予算計画を立てるところから始まります。予算を立てる目的を確認し、予算計画をどのような手順で立てるかを知ることで、効率よく作業を進められます。この記事では、予算の立て方について基本的な方式を確認した後、具体的な手順についてまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
予算を立てる目的
そもそも、なぜ予算を立てるのでしょうか。予算の立て方を確認する前に、予算を立てる目的について把握しましょう。
1、達成すべき数値指標となる
予算は、期間内で達成するべき目標となる数字です。予算を立て、各部門の数値目標を明確にすることで、全社で期間内の目標を共有しやすくなります。
達成すべき予算がまったくない状態で経営をしていると、期末に業績を評価する指標もなく、経営が順調なのかどうかが見えてきません。業績が順調な場合はなんとなく回っていても、業績が伸び悩んだときに、何が原因なのかを分析する手段がないことになります。
2、予算に対して責任感を持たせる
予算を立てるときに、経営陣と現場部門で調整を行うことで、経営陣と現場が一体となって予算を達成しようという責任感が生まれます。
経営目標を達成するため経営陣は部門に予算を割り振ります。このとき、経営陣から予算目標を現場に押し付けるだけでは、予算に納得感がなく責任を持って達成しようという状況にはなりません。
しかし、予算を立てる際に、現場の意見を吸い上げて現場とともに最終的な予算を決めれば、現場も予算に対する責任感が持てるようになります。
3、予算実績管理に使える予算を作成する
数値目標である予算と実績の数字を定期的に比較し、業績が予定通り推移しているかどうかのモニタリングを行うには、予算計画が欠かせません。
予実管理で利用できる予算を立てることで、実績の正確な把握が可能になります。定期的なモニタリングにより、業績が思うように推移していない場合でも、より早い段階で対応策が打てます。
予算の立て方の基本2方式と組み合わせる理由
予算の立て方には、経営陣が主導権を握って予算を立てていく「トップダウン方式」と、現場が予算を立てて上層部で調整する「ボトムアップ方式」があります。まずは2方式の概要を説明してから、両者を組み合わせる理由について解説します。
1、トップダウン方式
トップダウン方式は、経営陣が経営目標から予算目標を立て、各部署に予算を分配する方式です。スピーディーに予算が決まり、状況に応じて柔軟に予算を調整できる点は、トップダウン方式のメリットです。
ただ、現場の意見が反映されないため、納得感の薄い予算が割り振られた場合、現場のモチベーションが下がってしまうというデメリットもあります。
トップダウン方式は、スタートアップなど設立間もない小規模企業で、全社員で意見を出しやすいような環境に向いていると言えます。
2、ボトムアップ方式
ボトムアップ方式は、現場の各部門が前期の実績をベースに予算を立て、現場が建てた予算を統合して企業全体の予算を決める方式です。より現実的な予算となり、現場も納得感を持てる数値目標となります。大規模な企業の場合、経営陣では事業の全容を把握しきれないため、ボトムアップ方式による予算編成が行われます。
ボトムアップ方式のデメリットは、予算編成までに時間がかかる点です。また、現場主導では確実に達成できる予算を組みがちなため、挑戦的な目標は出にくくなります。また、新規事業を立ち上げる場合は、現場の人間がいないため経営陣や経営企画に携わる社員が予算を立てることとなります。
3、両方式を組み合わせる理由
トップダウン方式とボトムアップ方式は、どちらも良い面と悪い面があり、相互にデメリットを補完できる面があります。そのため、多くの企業では、トップダウン方式とボトムアップ方式を組み合わせた予算の立て方をしています。
会社組織における具体的な予算の立て方
ここからは、トップダウン方式とボトムアップ方式を組み合わせた予算の立て方について見ていきましょう。基本的には、経営陣が予算目標を明確化し、現場の部門で予算目標の数値をもとに予算計画を立て、最終的に各部門ですり合わせを行って予算計画を確定する、という流れです。
1、予算目標の明確化
予算を立てる上で最初に行うべきことは、経営陣による予算目標の明確化です。前期の実績(予測される営業利益など)と今期の経営目標をインプットして、具体的に全社レベルの予算を作成します。今期の経営目標には、前期までの課題や挑戦するべきことなどを盛り込みます。
全社予算が決まったら、予算を達成するため各部門はどういう施策を進めるべきかという具体的な数値目標を決め、各部門の予算目標とします。
2、部門ごとに予算を決定
経営陣から自部門の予算目標を連携された後、各部門では前期の実績などをもとにして、部門レベルの詳細な予算を立てていきます。
現場で予算を立てる際は、できる限り予算目標を達成するように検討することが重要です。安易に達成確実な低い目標に下げてしまうと、全社予算が達成できなくなります。しかしどうしても提示された予算目標の達成が難しい場合は、予算会議で調整することも必要です。
3、各部署の予算を合算して調節
各部署の予算を集計して、全社予算を達成できるように全体的な調整をかけていきます。単に集計するだけで全社予算を達成できることはほとんどなく、何回か予算会議を開催するなどして調整しなければなりません。大企業の場合は、経営企画部のような専門組織が予算編成の取りまとめを行います。
複数の指標を用いた予算目標の立て方
ここからは、具体的な予算目標の立て方について見ていきましょう。4種類の予算目標(利益予算・売上予算・原価予算・経費予算)ごとに解説します。
1、利益予算の立て方
利益予算とは、期中に達成すべき利益目標のことです。売上高が落ちたとしても、利益率が高ければ、企業経営としては問題ありません。利益率をどうやって上げていくかについて、きめ細かな計画が必要となります。
利益予算は、前期分の変動損益計算書を作成して予算シミュレーションを行い、必要利益を生み出す予算計画を立てる、という流れで決定します。
2、売上予算の立て方
売上予算とは、期中の売上目標のことです。売り上げは企業活動における主な収入源であり、売り上げが増加すれば、利益もそれだけ多くなります。
売上予算は、前期の実績をベースに今期の利益目標を立て、その目標を達成するための経費を算出する、という流れで決めていきます。
3、原価予算の立て方
原価予算とは、主な事業活動で利益を生み出す製品やサービスを提供するまでにかかる原価の目標値です。原価には、製品を製造するためにかかる製造原価と、商品やサービスを販売するためにかかる売上原価の2種類があり、業種ごとに細かな違いがあります。
本業で売り上げを増やすために製品を多く製造すればそれだけ経費も多くかかります。経費を抑えれば利益率は上がりますが、無理に原価を削減すると売り上げが落ちる可能性もあり、慎重に計画したい予算です。
基本的には前期かかった原価を確認して、削減できるところはないか、逆に多くの予算を投入して売り上げを上げたいか、といったことを検討します。
4、経費予算の立て方
原価以外に、経費も支出面で予算化しなければなりません。間接部門の人件費や交通費、オフィスなどの賃料や光熱費などは経費に相当します。原価予算と同様、経費予算も前期の実績をもとに、今期予算を編成します。
予算の立て方を理解して予算管理システムで上手に管理
企業における予算の立て方は、経営陣の目標と現場部門の実績の両方を取り入れるという流れが一般的です。予算編成には、多くの数値を把握しなければならず大変です。しかし予算管理システムを導入することで、前期の実績情報をすぐに確認できるため、各部門の予算計画を集計する工数も大幅に削減できます。
手作業やExcelを利用した予算編成を行っている場合は、ぜひ予算管理システムの導入を検討してみてください。