Web-EDIは、企業間の商取引業務をWeb上だけで自動化する仕組みです。従来のEDIからWeb-EDIに移行するメリットには何があり、移行時には何を注意するべきでしょうか。そこでこの記事では、そもそもWeb-EDIとは何かを整理した後、Web-EDIに移行するメリットと移行時の注意点について解説します。
Web-EDIとは?
Web-EDIとは、「Electronic Data Interchange」つまり企業間の商取引をインターネット上で行い、商取引業務の効率化をサポートするシステムです。
従来のEDIシステムは専用回線や電話回線を経由しており、通信速度に問題がありました。Web-EDIは、インターネット回線を利用することで通信速度の問題を解決します。
1、企業間の商取引業務をブラウザ操作だけで自動化
Web-EDIは、Webブラウザ操作だけで、商取引業務を大幅に自動化します。業務データの転記が不要となるため、転記ミスなど人為的な不具合が入り込まなくなり、正確で高速な商取引を促進します。
2、クラウドベースでの提供
Web-EDIは基本的にクラウドベースで提供されるため、専用のシステム環境を構築する必要がありません。大企業から中小企業まで、あらゆる規模の企業に導入しやすい点も特徴のひとつです。
3、従来のEDIからの移行が必要
Web-EDIを導入する際は、従来のEDIから移行しなければなりません。これまでEDIシステムを介して取引があった企業にも、同時にWeb-EDIへの移行を依頼する必要があります。
Web-EDIを導入すると、通信速度が速くなる以外にどのようなメリットがあるでしょうか。
Web-EDIを導入する5つのメリット
Web-EDIにはさまざまな導入メリットがあります。代表的なメリットを5点紹介します。
1、導入が容易
Web-EDIは、クラウドサービスとして提供されるため、導入が容易な点は大きなメリットと言えます。従来のEDIは、システムの互換性や、利用するパソコンのスペック・動作環境などを意識する必要がありました。Web-EDIサービスの場合は、現状の自社環境そのまま、新規契約を済ませるだけでサービスを利用可能です。
2、請求書のペーパーレス化が可能
請求書や納品書など、商取引に利用している文書はすべて電子データ化するため、これらの書類のペーパーレス化が可能です。電子データになると、保存はサーバーマシンの中になるため、物理的な保管場所を確保する必要もありません。過去の書類を探す際も、検索機能ですぐにアクセスできて業務効率化になります。
3、導入・運用コストの軽減
Web-EDIはクラウドサービスなので、サーバーマシンを新たに用意する必要がなく、環境構築の人件費もかかりません。
また、自社環境にシステム環境を持たなくて済むため、システムのバージョンアップやセキュリティ対策、トラブル発生時の対応なども不要です。運用はすべてサービス提供者側に任せられ、料金も月額料金に含まれています。
これらのことから、Web-EDIを採用することで、導入コスト・運用コストともに軽減できます。
4、通信環境がよくなり業務効率化
Web-EDIはインターネット回線を介して利用します。そのため、通信速度の出ない専用回線や電話回線を利用していた従来のEDIをWeb-EDIに変更することで、通信速度の向上が可能です。結果として、画面操作も快適となり、商取引業務全体の効率化となります。
5、高度なセキュリティ対策が可能
専用回線や電話回線を介する従来のEDIシステムは、閉じた通信環境なので、セキュリティ対策を深く考えなくても、安全性は確保できていました。
しかし、その分セキュリティ対策に対する認識が甘いと、社内システムからウイルス等に侵入された場合、大きなトラブルに発展する可能性もあります。また、災害や事故などのトラブルがあっても事業を継続するBCP対策についても、従来は自社ですべて対応しなくてはなりませんでした。
Web-EDIはクラウド上に構築されており、一企業の社内環境よりははるかにセキュアな環境に守られています。クラウド環境はBCP対策も取られているため、総合して従来に比べてより高度なセキュリティ対策ができている状態です。
Web-EDIを導入する際の注意点3つ
Web-EDIを導入する際は、従来のEDIと比較して注意しなければならないポイントがあります。ここでは、3つの注意点について解説します。
1、インターネット接続環境が必要
Web-EDIは、インターネット内ですべての処理を完結するという特質上、インターネット接続環境が必須です。社内システム内で利用していたオンプレミスのEDIとはその点が大きく異なるため、場合によってはインターネット接続を可能とするネットワーク環境構築が求められます。
2、取引先の同意が必要
Web-EDIは、取引先の同意が得られなければ導入できません。クラウドサービスなので導入自体の障壁は従来のEDIに比べて低くなりますが、取引先にとっても導入のメリットがなければ、なかなか理解してもらえない可能性はあります。
まずは無料トライアル版などを取引先に導入してもらい、利便性などを実感してもらって同意を得る、などの工夫は必要でしょう。
3、標準化されていない
Web-EDIのシステムは標準化されていません。そのため、取引先企業とEDIシステムの仕様に相違があると、そもそも商取引の電子化は不可能です。取引先の同意を得る前に、取引先企業すべてについてEDIシステムの仕様を確認しなければなりません。
Web-EDIの導入時に確認すべき通信プロトコル5つ
Web-EDI製品を選定する際は、どの通信プロトコルに対応しているか確認する必要があります。Web-EDIを導入する際にチェックしたい通信プロトコルの中でも、代表的な5種類について、その特徴をまとめました。
1、EDIINT AS2
「Electronic Data Interchange-Internet Integration Applicability Statement 2」の略で、インターネット技術の標準化団体「IETF」の策定した国際標準規格です。大量のデータをリアルタイムに送受信する分野に適した通信プロトコルで、海外の大手通販会社での導入が進んでいます。
2、OFTP2
本プロトコルは、「Odette File Transfer Protocol 2」の略で、欧州の自動車標準化団体「Odette」が策定したもので、当初は欧州の自動車関連企業を中心に採用されました。国や地域に依存しない作りとなっているため、現在では日本の自動車業界にも広まりつつあります。
3、ebXML MS
「ebXML Message Service」の略で、国連のEDI標準機関「UN/CEFACT」とWebサービス標準化組織「OASIS」が策定した国際標準規格です。
サーバー同士でリアルタイムかつ双方向にメッセージを送り合うプッシュ型。リアルタイムで情報をやり取りできる反面、自社内でサーバー運用が必要となります。日本でも流通業などが採用しています。
4、JX手順
日本独自のプロトコルで、電話回線を使用していた「JCA手順」に代わって使われるようになりました。ebXML MSと違い、中小企業は自社のパソコンから利用できるため、低コストとなる点が大きな特徴です。そのため、流通業の中小企業を中心に採用しているケースが多く見られます。
5、SFTP
「SSH File Transfer Protocol」の略で、Web-EDIだけでなく、ファイルの送受信に使われてきた通信プロトコルです。
ここでご紹介した通信プロトコル以外にも、全国銀行協会が策定した「全銀協標準通信プロトコル」などもあります。自社ではどの通信プロトコルを採用するかを検討する前に、各プロトコルの特徴を把握しましょう。
Web-EDIの導入は取引先の協力が必要
Web-EDIを導入することで、従来よりも高速かつセキュアな環境で、企業間商取引の効率化が行えます。ただし、Web-EDIを導入するには、すべての取引先企業に対して協力を求めなくてはならない点に注意しましょう。