製品を製造しエンドユーザーの手元に届けるまでに欠かせないのが物流です。物流と聞くと、荷物をトラックに積載・輸送し、配送先まで届ける仕事というイメージがありますが、実際の現場では請求書や納品書などさまざまな書類が存在し、膨大な事務作業に追われています。そこで、このような定型的なバックオフィス業務を自動化・効率化するツールとしてEDIが存在します。
今回の記事では、EDIとは何なのか、また導入するメリットやEDIの最新動向も含めて詳しく解説します。
EDIとは
EDIとは「Electronic Data Interchange」の略称で、日本語では「電子データ交換」と直訳されます。
EDIは企業間での取引で行われる受発注業務や出荷、決済、請求書および納品書の発行などをオンライン上で完結する仕組みを指し、デジタル技術の活用によって物流業務を革新するDX(Digital Transformation)を実現するための要素として大いに注目されています。
物流業界における一般的な4つの業務内容
EDIを正しく理解するためには、まず物流業界においてどのような業務が行われているのかを把握しておく必要があります。一口に物流といっても取り扱う商品やサービス、事業規模もさまざまで、企業によって業務内容が異なるケースも少なくありません。
今回は物流業界の中でもベーシックな、商品の受注および発送、決済にいたるまでの一連の流れを4つのポイントに分けて紹介します。
1 クライアントが発注書を送付・正式に受注
顧客となるクライアントが企業に対し、発注書を作成し正式に注文を依頼します。発注書の送付は企業によってもさまざまで、FAXや郵送などによって送付するケースも多いようです。
2 納品書を作成し商品を出荷
注文を受けた企業は商品を準備し、商品を納品書とともに納期に間に合うよう出荷します。納品書は届いた商品と注文した商品の品目・数量が合っているかを検品する際にも使われます。
3 クライアントに請求書を送付
クライアントへの納品が完了した後は、締日に合わせて請求書を送付します。請求書を送付するタイミングは企業間の契約内容によって異なり、FAXや郵送によって書類を直接やり取りするケースも少なくありません。
4 入金を確認後、領収証を作成・送付
クライアントに請求書を発行し入金を確認したら、領収証を作成し送付します。また、これら一連の取引内容は決算書類作成時にも必要なデータとなるため、社内システムや帳簿などに取引日時や金額なども合わせて記録しておく必要があります。
EDIによって物流業務はどう変わるのか
上記で紹介した物流業務は、これまで人の手作業によって進められてきました。しかし、手作業に頼る以上、たとえば請求書に記載する金額を誤ったり、商品の品目や数量を誤って作成したりと、さまざまなミスが発生しやすいものです。
EDIの導入によってオンラインでのやり取りが可能になれば、人による手作業が大幅に省略され自動化・効率化につながります。手作業による人為的なミスもEDIによって解消され、取引先やクライアントとの信頼関係も維持できるようになります。
ちなみに、社内業務をEDIによって自動化したとしても、取引相手であるクライアント先が手書き伝票のままであれば、一部の業務が電子化できず取り残されてしまいます。そこで、企業によっては取引先に対してEDIの導入を求めるケースも少なくありません。EDIの導入は書類や取引データを電子化し、信頼性を高め企業としてのガバナンスを強化することにもつながります。
EDIを導入する3つのメリット
EDIの導入によってさまざまなメリットが得られますが、中でも代表的なポイントを3つご紹介します。
1 人手不足の解消
現在、物流業界では人手不足が深刻化しています。しかし、EDIの導入によって、従来のような書面やFAX、電話でのやり取りが減少し定型的なバックオフィス業務が効率化すれば、人手不足の解消にもつながります。
EDIの導入は労働環境の改善に積極的に取り組んでいることの現れでもあり、すでに自社で働いている従業員の負担を軽減するだけではなく、新たに入社を希望する求職者に対してのアピールにもつながります。結果として優秀な人材を自社に招き入れることも可能になるでしょう。
2 物流業務の品質向上
EDIによって事務的な作業工数が削減されると、それまで作業を担当してきた従業員はさらに付加価値を生む仕事に専念できたり、顧客に対してきめ細やかなサービスが提供できたりするようになります。物流業務全体の品質向上につながり、顧客満足度もアップしていくことが期待されます。
他社とは異なる新たな取り組みをしたり、極めて品質の高い業務を遂行したりすることによって、新たな顧客の獲得にもつながるでしょう。
3 競争力強化
多くの企業でDXへの取り組みが加速する中、EDIの導入によって物流業界もDXに対応できる環境が整います。また、最新のEDIは過去の受発注データをもとに将来の受注予測を行うことも可能で、ムダのない事業計画を立てることにより経営が効率化され、企業の競争力が強化されます。
物流業界はITやDXとの関連が低いのではないかと考える方も多いですが、現代では業種を問わずテクノロジーの活用が求められています。あらゆる産業・業種においてDXが加速する中、その流れに取り残されないようにするためにもEDIの導入は不可欠な要素といえるでしょう。
クラウド対応のEDIは導入コストも安価
多くのシステムがクラウドに対応しているように、EDIもクラウド化が進んでいます。
実はEDIそのものは以前から存在していましたが、主にISDN回線などを使用したシステムが主流でした。通信にかかるコストが高額であるほか、システムの環境を構築する際にも高額なコストがかかるため、中小企業にとってはEDIの導入ハードルは高いものでした。
しかし、今ではISDNよりもクラウドに対応したEDIシステムが主流となっています。インターネットの普及とともに通信コストは下がり、ISDNに対応したシステムからクラウド対応のEDIに乗り換える企業も増えています。
クラウド対応のEDIは導入コストも安価で、中小企業にも手軽に導入できるほか、ユーザーインターフェースも洗練されていて使い勝手が良く、効率的な物流業務が実現できます。
ちなみに、2024年にはISDN回線のサービス終了も予定されています。現在ISDN環境でEDIを利用している企業は、将来的にクラウド対応のEDIへのリプレイスが必要となるため、計画的なシステム移行を検討しておきましょう。
競争力強化につながるEDI
深刻な人手不足が続く物流業界において、限られた人員で業務効率化を実現するためにはEDIのようなシステムやツールをいかに活用できるかが大きなカギとなるでしょう。
今回紹介してきたように、EDIは物流業務を効率化するシステムとして注目されています。
従来のEDIはシステム導入にあたって高額な費用と通信料金がネックとなり、資金力に乏しい中小企業にとっては大きな負担となっていました。
しかし、最新のクラウド対応のEDIは使い勝手も良く多様な機能が実装されているほか、導入コストも極めて安価です。まずは複数のEDIを比較するためにも資料請求のうえ、物流業務の効率化に向けて導入を検討してみましょう。