ISO(International Organization for Standardization)とは、日本語でいうと国際標準化機構のことです。ISOは、国際間で取引をしやすくするための規格を決めています。
ISOを取得することで、規定された品質を満たしているという客観的な指標となり、国内外の企業との取引がスムーズになります。
本稿では、そんなISO規格の中でもISO9001の概要と、ISO9001対応に文書管理システムを導入するメリットについてまとめました。
文書管理システムの製品比較記事を見る
ISO9001とは
ISO9000シリーズは、品質保証のための国際規格である品質マネジメントシステムです。その中核となるISO9001の取得要件には、文書管理が含まれます。文書管理がなぜISO9001の取得要件になっているのかについて解説します。
1 ISO9001の概要
ISO9001は、企業の品質活動や環境活動を管理するマネジメントシステムを規定する、ISO規格のひとつです。ISOには、製品そのものを対象とする規格と、マネジメントシステムを対象とする規格があり、ISO9000シリーズは後者にあたります。ISO9001の最新版は、2015年に発行された「ISO9001:2015」です。
ISO9001認証の取得により、自社は高品質な製品を提供している、または品質活動を行っていることを客観的に示せます。
ISO9001取得には、規定に従った適切な文書管理が必要です。品質管理マニュアルや社内規程の文書管理の厳格な運用は、ISO9001認証における評価ポイントのひとつです。
2 ISO9001における文書管理の役割と要求事項
ISO9001の7.5.3章には、文書管理の役割と要求事項が記載されています。要求事項をそのまま引用すると以下の通りです。
章 | 規定内容 | |
---|---|---|
7.5.3 | 文書化した情報の管理 | |
7.5.3.1 | 品質マネジメントシステム及びこの規格で要求されている文書化した情報は、次の事項を確実にするために、管理しなければならない。 | a) 文書化した情報が、必要なときに、必要なところで、入手可能かつ利用に適した状態である。 b) 文書化した情報が十分に保護されている(例えば、機密性の喪失、不適切な使用及び完全性の喪失からの保護)。 |
7.5.3.2 | 文書化した情報の管理に当たって、組織は、該当する場合には、必ず、次の行動に取り組まなければならない。 | a) 配付、アクセス、検索及び利用 b) 読みやすさが保たれることを含む、保管及び保存 c) 変更の管理(例えば、版の管理) d) 保持及び廃棄 |
品質マネジメントシステムの計画及び運用のために組織が必要と決定した外部からの文書化した情報は、必要に応じて識別し、管理しなければならない。 適合の証拠として保持する文書化した情報は、意図しない改変から保護しなければならない。 注記 アクセスとは、文書化した情報の閲覧だけの許可に関する決定、又は文書化した情報の閲覧及び変更の許可及び権限に関する決定を意味し得る。 |
出典: 品質マネジメントシステム-要求事項| 日本工業規格
上記の内容から文書管理の役割と要求事項をまとめると、以下の5点になります。
- 文書が必要となったときにすぐ入手できる
- 文書管理を保管方法や検索などで見つけやすい状態にする
- 文書はいつでも読める状態に保つ
- 文書をバージョン管理し、変更履歴を確認および過去バージョンの復活ができるようにする
- 文書のライフサイクルを管理
品質を管理するには、品質管理のルールを定めて文書化、適切に原本を管理し、文書を保存して、すぐに参照できる状態にしておくことが重要です。
もちろん、品質管理のルールを作ったら終了ではありません。ルールに従って運用を開始し、必要に応じてルールを見直し、ブラッシュアップする必要があります。ルールの変更が必要な場合は、ルールを変更・追加・削除しなければなりません。
継続的なISO活動には、品質管理のルールを定めた文書の管理と定期的な更新が必要なのです。
3 2015年に電子化した文書の管理や保存についての規定追加
2015年に改訂されたISO9001では、「文書化した情報が十分に保護されていること」という要件が追加されています。文書の電子化が進む中で、コンピュータウイルスやサイバー攻撃などで情報漏洩に至るケースが少なくありません。
各種セキュリティソフトを導入してセキュリティリスクに対応することも、ISO9001の要件を満たすための対策です。
文書管理に対応してISO9001を取得するメリット3つ
ISO9001を取得するには文書管理の要求事項を満たす必要があり、対応作業はかなりのコストがかかります。対応コストを多く掛けてでも文書管理に対応し、ISO9001の認証を取得するメリットはどこにあるのでしょうか。
1 提供商品・サービスが高品質だという証明
ISO9001は品質マネジメントシステムの中核となる規格です。ISO9001の認証を取得することにより、自社の製品やサービスを高品質な状態で提供する体制が整っていると、客観的に証明できます。
取引先は、ISO9001未取得の企業よりも、ISO9001を取得している企業の方と取引を望むでしょう。会社によっては、ISO9001取得が取引の条件になっている場合もあり、取引の機会を増やすことにもつながります。
2 作業の標準化や生産性向上が可能
ISO9001の認証取得作業を進める中で、品質管理のルールが明文化され、作業の均質化・標準化が可能になります。どのように業務を進めていくかが文書化されれば、業務の属人化を防ぎ、全員が高品質かつ効率的に作業を進められます。
3 顧客満足度向上
ISO9001を取得することで、社内により高品質な製品やサービスを提供する見直しが何度も行われます。品質問題の解決に向けた体制も整うため、結果として製品やサービスの品質を底上げし、顧客満足度の向上につながります。
ISO9001対応に文書管理システムを導入するメリット5つ
ここまでは、ISO9001と文書管理について解説しました。では、ISO9001対応で、文書管理「システム」を導入するメリットはどこにあるでしょうか。
1 改定後のバージョンアップ対応が楽になる
ISO9001の7.5.3.2には、「c) 変更の管理」が定められています。紙ベースの管理方法で文書を改定した後のバージョンアップ対応は、非常に手間がかかります。
例えば紙ベースの変更管理は、文書を探すところから始まり、非常に手間がかかる点がネックです。電子文書に変換すると、修正作業は楽になります。しかしファイルサーバーに格納しておくだけでは、最新版がどれかわからなくなったり、誤って文書ファイルを削除してしまったりということも考えられるでしょう。
電子文書を文書管理システムに登録すると、煩雑な版管理の問題は解消します。バージョン管理(版管理・変更管理という名前になっている場合もあります)は、電子文書の版管理や修正作業を楽にする機能がそろっています。
2 改ざん防止(セキュリティ対策)が可能
2015年に追加された要求事項では文書の保護がありましたが、文書管理システムにはこの要件を満たす機能があります。
文書管理システムには、さまざまなセキュリティ機能が備わっています。システムにログインする認証機能、各文書に与えるアクセス権制御、電子文書の暗号化などはセキュリティ機能の一例です。
3 検索と参照の効率化
紙ベースの文書の場合、多く保管された文書の中から該当文書を探すのに多くの時間を費やします。
文書を電子化してファイルサーバーで管理することも可能です。その場合は、系統立てたフォルダを作成して整理するか、ファイル操作ソフト(Windows OSではエクスプローラー)で検索できます。ただ、文書の内容までを検索対象とすることはできません。
文書管理システムで電子文書を管理すると、文書の本文を検索対象にできる全文検索機能や文書の作成日などの属性検索機能により、効率よく文書を検索できます。また、検索結果一覧画面からすぐに文書を開けるなど、文書管理システムから必要な電子文書を参照しやすい機能もあります。
4 保存期間を明確に規定できる
紙ベースの文書やファイルサーバーに格納した電子文書は、保存期間が過ぎた段階で破棄する必要があります。しかし、文書を削除するには対象文書を探さなければならず、本当にその日に削除したという証拠も残せません。
文書管理システムでは、文書の保存期間を規定する機能があり、自動的に削除することが可能です。削除した日時もシステム内に記録され、万が一間違って削除した場合も、版管理によって文書を復活させることもできます。
5 承認申請にも対応できる
作成・変更・削除した文書は、上長や関係部署に承認をもらう必要があり、その証拠を残さなくてはなりません。こんなときに役立つ機能が承認ワークフローです。承認ワークフロー単独の製品もありますが、文書管理システムやグループウェアに組み込まれている場合もあります。
ISO9001を取得するなら文書管理システムの導入を
ISO9001の認証を取得するなら、要求事項に定義されたレベルの文書管理が必要です。文書管理システムは、文書管理にかかる手間を大幅に効率化できます。以下より文書管理システムの資料を入手して、検索機能やバージョン管理機能など、ISO9001の認証取得に役立つ機能の有無をぜひ比較検討してみてください。
文書管理システムの製品比較記事を見る