EDI(Electronic Data Interchange)とは、企業間取引でやり取りする請求書などに統一したフォーマットを使い、電子データとしてやり取りすることです。この記事では、EDIの基礎知識として、仕組みやEOSとの違い、メリット・デメリット、さらにWeb-EDIのメリットとプロトコルについて解説します。
EDIとは
EDI(Electronic Data Interchange)とは、日本語で電子データ交換という意味です。企業間取引で発生する契約書や納品書・請求書といった帳票のやり取りを統一的な書式で「自動的に」行います。電子データのやり取りはネットワーク(専用線・インターネット)経由で行うことも、EDIの特徴です。
EDIの仕組み
従来は紙ベースでのやり取りやFAX、メールで独自フォーマットの帳票をやり取りしていたため、電子化は難しく集計などにも手間がかかっていました。EDIは、通信プロトコルや各帳票のフォーマットを標準化することで、電子データのやり取りを自動的に行えるようにする仕組みです。
混同されやすいEOSとの違い
EDSと似たシステムにEOS(Electronic Ordering System)があります。EOSは電子受発注システムであり、受発注データを電子データとして取り扱うシステムです。EDSは電子データ全般を扱いますが、EOSは受発注データのみを扱うため、EOSはEDSの一種とも言えます。
EDIの種類
EDIの種類は、やり取りする識別コードやデータにより、個別EDI・標準EDI・業界VANの3種類に分類できます。それぞれの種類について特徴を解説します。
1、個別EDI
個別EDIとは、取引先ごとに、個別で通信を行う形式や識別コードなどのルールを策定するEDIの種類です。取引先ごとにルールを決められるので、きめ細かいルール設定ができるという柔軟性・自由度があります。しかしその一方で、取引先が増えるとルールが増えて管理が大変になる点がデメリットです。
個別EDIに向いている企業は、取引先が少なく、きめ細かなルールを設定したいというニーズのある企業です。
2、標準EDI
標準EDIは、フォーマットなどのルールを標準化し、複数の取引先でも共通して利用できる種類のEDIです。取引先が多くても標準ルールが適用できるため、ルール管理はシンプルで、個別EDIに比べて運用の負担は軽くなります。業界単位での標準EDIや、中小企業向けの標準EDIなどはその一例です。
3、業界VAN
特定の業界に特化。 業界VANは、標準EDIの一形態で、特定業界の仕様に合わせて標準化したEDIシステムです。取引先コードや商品コードなど、業界共通で使える仕様を取り入れて標準化しています。業界VANの一例としては、株式会社ファイネットが提供する商品流通VANサービスがあります。
EDIを導入するメリット4つ
EDIを導入するメリットは、以下の4点です。
- ペーパーレス化によるコスト削減
- 書類を送る手間の削減による業務効率化
- ビジネスの加速
- 手書きによるミスが減る
1、ペーパーレス化によるコスト削減
これまで紙ベースでやり取りしていた請求書や納品書などがすべて電子データに置き換わるため、ペーパーレス化によるコスト削減が見込めます。紙代だけではなく、印刷に関わるコストや、紙の帳票を保管するスペースにかかる賃料なども削減できます。
2、書類を送る手間の削減による業務効率化
紙ベースの書類をやり取りするには、郵送またはFAXが必要です。郵送の場合なら郵送代や封筒の費用、FAXなら機器と用紙代・インク代などもかかります。また、郵送もFAXも一定の手間がかかるので、人的コストも削減できて業務効率化を推進できます。
3、ビジネスの加速
EDIは、請求や受発注などの業務をシステムで進めていくだけで、電子データは自動的にやり取りできます。
発注や納品などの業務プロセスが円滑になり、準備→着手→完成→納品までにかかる時間や手間も短縮化。結果として、人件費や時間の節約になり、その分を本業に振り分けられるので効率的に利益を上げられます。
4、手書きによるミスが減る
電子データは自動的にやり取りされるため、紙に手書きをする際に発生してしまう人的ミスを減らす、という効果もあります。データをシステムに入力する際のみ、入力ミスに注意する必要がありますが、データを入力した後は転記や集計など不要で、人的ミスが入り込む余地はありません。
EDI導入のデメリット4つ
EDIを導入することで起こりうるデメリットは以下の4点です。
- 導入コストがかかる
- 取引先が導入していないと活用できない
- 慣れるまでに時間がかかる
- トラブルによって業務が停止するリスクがある
1、導入コストがかかる
EDIシステムに限りませんが、システムを導入すると初期費用がかかります。オンプレミス型の場合は、自社内のネットワーク上にEDIのサーバーを設置。サーバーのメンテナンスなども必要です。紙ベースで企業間取引を行うのに比べて、どうしても導入コストはかかってしまいます。
2、取引先が導入していないと活用できない
EDIシステムは、取引先も導入していないと活用できません。さらに言えば、取引先がEDIを導入していても、双方のEDIに互換性がなければ連携できず、やはり使えないということになります。EDIシステムを自社に導入する場合は、取引先ともよく話し合い、同じEDIシステムを導入するように働きかけることも必要です。
3、慣れるまでに時間がかかる
EDIシステム自体は、どちらかと言えばシンプルで使いやすいと言えます。ただ、ITに慣れていない社員が多い場合は、操作に慣れるまでにはそれなりに時間がかかるでしょう。特に経理や資材などの部署で利用する場合が多いため、利用部署への教育や問い合わせ対応なども考慮する必要があります。利用部署がITシステムに慣れていれば、特に気にする必要はありません。
4、トラブルによって業務が停止するリスクがある
EDIシステムに限りませんが、システム障害や災害によってEDIシステムが停止するリスクがあります。システムが停止してしまうと、企業間で書類をやり取りする業務はすべてストップします。EDIシステムを選定する際は、信頼性が高いかどうかを比較項目に加えて検討するなどの対策が必要です。
システムが利用できない場合は、手書き対応になるかもしれません。社内に情報システム部門があれば、そのような事態になっても復旧できるため安心です。しかし中小企業の場合は、サポート体制の充実している製品を選ぶなど、トラブル時に困らないようにする必要があります。
EDIの導入が向いている企業・向いていない企業
EDIの導入に向いている企業と向いていない企業について、それぞれの特徴を解説します。
1、向いている企業
EDIの導入に向いている企業は、企業間取引において取引量が多く、社員がIT関連の知識に詳しい、あるいは情報システム部門があるなどの特徴があります。また、取引先がすでに導入している(または導入予定の)EDIが、自社で導入予定のEDIと連携可能だという企業も、EDIの導入に向いている企業です。
2、向いていない企業
EDIに向いていない企業は、取引量が少なく費用対効果が低い企業です。また、EDIを利用する部署の従業員がITシステムにあまり慣れていない場合も、EDIは不向きかもしれません。ITシステムを使い慣れていないと、システムの操作に慣れるまでに時間がかかる、あるいはサポートを手厚くする必要がありコストがかかることが予想されます。また、EDIを導入していない取引先が多いと、費用対効果も低くなるためEDIの導入には向いていません。
Web-EDIとは

Web-EDIとは、Webシステムあるいはクラウドサービスとして提供されているEDIのことです。従来のようにサーバーにインストールして環境構築をする手間もなく、サービスを提供しているサーバーにWebブラウザよりアクセスするだけで利用できます。
近年浸透してきているクラウドサービスですが、EDIの世界でもクラウドでの提供が一般的になってきています。
1、Web-EDIのメリット
Web-EDIのメリットは以下の4点です。
- 導入しやすい
- 低コスト
- セキュリティ対策が最新
- 通信速度が速くなる
サーバーの環境設定やインストール作業がないので短期間で導入しやすく、低コストで利用できます。システムの更新はサービス提供者が行うため、運用負担もなく常に最新版を利用できる点もWeb-EDIの強みです。
最新の暗号化技術や多要素認証など、セキュリティ対策も最新のものが利用できます。専用線を利用するよりも、インターネット回線を利用する方が通信速度も速くなる点も、Web-EDIを利用するメリットです。
2、Web-EDIのプロトコルとは
Web-EDIにはさまざまなプロトコルがあります。 Web-EDIで使われている通信プロトコルの一例を紹介します。
プロトコル名 | 概要 |
---|---|
EDIINT AS2 | 海外の大手通販業など販売業・流通業で普及 |
OFTP2 | 欧州の自動車業界が策定したが日本の自動車業界でも広まっている |
ebXML MS | 国際標準規格のプロトコル、日本で多く使われている |
JX手順 | 日本独自のプロトコルで、低コストのため中小企業の利用が多い |
SFTP | ファイルの送受信に使われるプロトコル |
自社にはどの通信プロトコルが適しているかを把握して、対応したEDIシステムを選びましょう。
EDIで業務効率化を目指そう
EDIは、企業間取引におけるさまざまな帳票(請求書・納品書など)を電子データとして自動的にやり取りするシステムです。近年は、電話回線ではなくインターネットを介して手軽に利用できるWeb-EDIが普及しつつあります。
EDIの製品選定においては、EDIの種類(個別EDI・標準EDI・業界VAN)や通信プロトコルの種類などを確認して選びましょう。