予算策定は、企業の利益目標を明確にし、目標に向かって効率良く組織運営をする上で重要な業務です。予算管理システムは、予実管理だけでなく予算策定にも役立ちます。この記事では、予算策定と予算策定の必要性やポイント、予算管理システムの導入効果について解説します。
予算策定とは
予算策定とは、予算管理の元となる予算(売上予算と経費予算)を策定することです。予算は企業の年間利益目標に基づいて1年に1回策定し、企業経営は予算に沿って進めていきます。
1、予算策定の時期
予算策定の時期は、決算の時期によって異なります。決算期の月からおおよそ5ヶ月前から予算策定が始まり、決算月の前月中には予算が決定するケースが一般的です。
国内企業の多くは3月決算なので、前年の秋から予算策定を行い、遅くても2月中には来年度の予算が決まります。
また外資系企業の場合は12月決算が多いため、次年度の予算策定は夏過ぎから開始し、予算決定時期は遅くとも11月中です。
2、予算策定と予算管理との違い
予算策定は、予算そのものを策定する業務であり、予算管理は、策定された予算に対する実績を管理する業務です。よりよい会社経営を目指すためにPDCA(Plan・Do・Check・Action)サイクルを回す際、予算策定と予算管理は密接に関わります。
予算策定はPlan(前年度の改善案を組み込んだ予算策定)の部分に相当する業務です。予算管理では、Do(予算の実行)・Check(予実管理と分析による問題点・課題の抽出)・Action(改善案を試す→次年度の予算への反映)を行います。
3、予算策定と予算管理の必要性
予算策定と予算管理は、企業経営を効率的に推進するために必要不可欠な業務です。
思い付きのまま予算管理もせずに原価を使い放題にしていると、経営上大きな問題となります。いくら売上金額が増えても原価がかかりすぎてしまい、利益は思ったほど上がらなくなるためです。場合によっては、売上高が増えるほど原価がかかって利益はマイナスになる可能性もあります。
このような状況を防ぐためには、予算の策定と管理が重要です。予実管理で予算と実績に乖離が出てきた場合は、改善案を検討・実行します。改善案を実行することで、無駄な出費を抑制し、より効率的に利益を上げられるようになります。
予算策定の流れ8ステップと予算の決め方
予算策定の流れを8ステップにまとめ、予算の決め方について解説します。実際に予算を策定する際の参考としてださい。
1、予算統括部門および担当者の決定
予算を策定する統括部門および統括部門の責任者(=担当者)を決定します。統括部門は企業の事業計画を立てる経営企画部が担当し、財務諸表を作成する経理部と協力体制を組むのが一般的にみられる体制です。ただし、中小企業の場合は経理部が予算統括部門になる場合もあります。
2、予算策定チームの編成
各部門の予算については、現場部門の参加が欠かせません。そのため、各部門から管理職が集まって予算策定チームを編成します。新規事業を立ち上げる場合は、人事部も参加します。
3、予算策定方針の決定
現場部門の人間で編成された予算策定チームに対し、予算統括部門(経営企画部など)から予算策定方針の原案が展開されます。この内容を予算策定チームで会議を行い、承認するかどうかを検討。この会議で承認されると、予算策定方針が決定します。
4、予算策定スケジュールの設定
予算策定方針が決定したら、予算策定スケジュールを設定します。理想は2ヶ月程度での設定ですが、実際には調整等に時間がかかり、3~4ヶ月かかる場合もあります。予算策定期間は可能な限り短く済ませるように進めることがポイントです。
5、全社予算の部門割り振りとリソースの配分
過去の実績を元に、各部門の予算目標値を設定するとともに、全社予算・リソースを配分します。各部門は割り振られたリソースと目標値を元に、自部門の予算を策定します。
6、損益予算・財務予算の策定
各部門が予算を立てる場合、まずは損益予算を立て、次に財務予算を策定します。損益予算と財務予算が完成したら、予算統括部門に提出します。
損益予算とは、売上高予算・費用予算・製造予算など、損益計算書の項目に関係する予算のことです。財務予算とは、資金繰りに関する予算のことで、売掛金や支払手形などの予算は財務予算に分類されます。
7、関係者間の調整
各部門で作成した損益予算・財務予算が集まってきた段階で、会社予算に基づく予算の目標値との差分があれば、関係部署で調整を行います。
トップダウン式の予算とボトムアップで集計した予算とのすり合わせを行うイメージです。
8、総合予算を策定し、各部署に通知する
各部門の損益予算・財務予算が出そろい、関係者間の調整も完了したら、全社の総合予算を策定し、各部署に通知します。
予算策定および予算管理のポイント4つ
予算策定および予算管理を進める上で意識したいポイントについて解説します。
1、予算策定に具体性・正確性があるか
予算策定では、企業の目標利益から予算を決めていきます。予算に具体性・正確性を持たせるためには、過去の実績データを利用するのが一般的です。予算策定のベースとして、過去の予実管理で蓄積してきた数年分の実績データを参考にします。
また、企業方針や重要業績評価指標(KPI:Key Performance Indicator)の設定も重要です。新規事業の立ち上げや重点事業の方向転転換などを伴う場合など、過去のデータだけでは予算策定が難しい場合もあります。その場合は、近い事業の実績データを参考に、KPIなどを設定します。
2、予算策定・管理を当該者が行っているか
全社的な予算方針の策定は、予算統括部門で決定しますが、部門別の予算策定・管理は現場部門で行うことがポイントです。実際に立てた予算が達成可能かどうかは、現場部門が一番把握しています。
現場をよく知る人間が、予算の策定と実績管理を行うことで、ボトムアップで予算を意識した業務が推進できます。
3、予算策定の準備は怠りなく進める
予算策定には、過去の実績データだけでなく、さまざまなデータが必要です。人件費・原材料の仕入価格の変動推移など、予算策定に必要なデータは事前に準備してください。
4、予算管理では数値の矛盾には早めに気付ける仕組み作りを
予算策定した後、業務を推進するとともに予算管理を行います。予算管理では、予算と実績の数字が乖離していないか、順調に業務が進んでいるかなどのチェックが必要です。
Excelを使った予実管理は手軽ですが、集計コストや入力ミスなどの人為的なミスが入り込む可能性があります。日々の予算管理を少ない負担でリアルタイムに集計しやすくするためには、予算管理システムの導入も検討したいポイントです。
予算管理システム導入効果5つ
予算管理システムを導入することで、予算策定や予算管理に多くの効果が見込めます。システム導入で期待できる効果を5点紹介します。
1、予算策定の効率化
各部門で予算策定を進める場合、過去データで予算のベースを作りつつ、今期の目標や市場の状況、人件費や仕入れ原価などの変動を反映して数字を決めていきます。
予算管理システムを使えば、過去の実績データや数年間の平均データなど、予算策定に確認したい情報をすぐに確認でき、予算策定の効率化が図れます。
2、予算策定の精度向上
予算管理システムで予算策定と予算実績の入力を続けていくと、実績データが蓄積されます。実績データは蓄積すればするほど、予算策定の精度を向上させる参考データに。
予算策定と予算管理のPDCAサイクルを自然と回せるようになり、続ければ続けるほど効率的な予算が策定できるようになります。
3、集計を始めとしたExcel管理の手間をなくす
Excelで予算管理をしていると、入力したデータを日々集計しなければなりません。さまざまなフォーマットに何度もデータを転記する運用もあるでしょう。その結果、手入力によるミスや、集計の手間など、手戻りの時間がかかり効率が悪くなります。
予算管理システムを導入すれば、日々の実績を入力するだけで集計の手間は不要です。複数のExcelファイルにデータ入力する必要もなくなるので、入力ミスの可能性も減らせます。
4、リアルタイムで数値の矛盾を確認できる
予算管理システムを全社で使用し、日々実績を入力する運用が浸透していれば、いつでも好きなタイミングで実績データを集計できるようになります。
リアルタイムに集計データを確認して、数値の矛盾をより早く発見できるようになる点も、予算管理システム導入の効果です。
5、予実管理の見える化で迅速な対応が可能
予算管理システムを導入することで、予実管理の見える化が進みます。予算と実績の乖離などの問題もより早く察知できるため、対応のスピードアップも可能です。
予算策定のためにも予算管理システム導入の検討を
予算管理システムは、予算策定にも役立ちます。予算策定と予算管理を同じシステムで管理してPDCAサイクルを回し、会社の経営の効率化に活かしましょう。