ウクライナ情勢の緊迫以降、ロシア製のセキュリティソフトであるカスペルスキーの危険性を危惧する方が増えているようです。
この記事では、カスペルスキーセキュリティにつきまとう「イメージ」に関連して、以下の観点でまとめていきます。
- カスペルスキーの危険性が噂されるようになった原因
- 実際に危険性がある製品なのかどうか
- カスペルスキーに不信感を覚える方向けの代替製品
最初に著者のスタンスを簡単にまとめておきますと、「カスペルスキー社のセキュリティ製品に特段の危険性はないと考えるものの、製品に少しでも不信感を覚えるユーザーは利用を避けた方が良い」といった内容です。
カスペルスキーとは?
カスペルスキーは、英国に持ち株会社を置く国際的な民間企業と明記されています。
200以上の国や地域で事業を展開し、世界各地に30以上の事業所があるようです。各地域の事業は現地法人によって運営されているため、国際事業と現地事業を効果的に、かつ独立した形で管理することが可能になっているそうです。
こういった状況を鑑みると、カスペルスキーが厳密に「どの国製」の製品かについて、論じること自体が難しいと言えるかもしれません。
とはいえ、カスペルスキー社の出自がロシアという点は変わりのない事実です。
カスペルスキー社の歴史
カスペルスキー社は、同社の公式ホームページにも登場するユージン・カスペルスキーとナターリア・カスペルスキーが立ち上げたセキュリティソフトの開発・販売を行なう非公開株式会社です。
1997年に設立され、現在もセキュリティソフト専業で事業を行なっています。
社名がそのままソフトウェアのブランドになっており、現在、個人向けとしては以下のサービスラインを展開中です。
- 総合セキュリティソフトの「カスペルスキーセキュリティ」
- 独自VPNサービスである「カスペルスキーVPN セキュアコネクション」
- パスワードマネージャーの「カスペルスキー パスワードマネージャー」
カスペルスキーの危険性が心配される原因
カスペルスキー社のセキュリティ製品が危険視される主な要因は、以下の3つと考えられます。
- ロシア製のセキュリティソフトだから
- アメリカの政府機関で使用が禁止されたから
- スパイ行為を疑われたことがあるから
それぞれの詳細は、下記の通りです。
ロシア製のセキュリティソフトだから
ロシアが、国を挙げていわゆる「サイバー攻撃」を各国に仕掛けているのは多くの人が知るところです。また、国と直接関係があるかは分りませんが、ランサムウェアによる攻撃やハッキング、クラッキングによる攻撃をロシア国内のグループが多数行なっていることも知られています。
加えて、カスペルスキー社がセキュリティジャンルでロシア政府と協力関係にあった点も、カスペルスキーのイメージダウンに繋がったのかもしれません。
カスペルスキー社の製品が何らかの個人情報などを収集しており、それがロシア政府に提供されているのでは?というイメージも持たれているようです。
また、昨今のウクライナ侵攻を受け、ロシアに対する嫌悪感を持った人も増えています。この点に関しても、カスペルスキーに対するネガティブなイメージと無関係ではないでしょう。
アメリカの政府機関で使用が禁止されたから
トランプ政権下のアメリカにて、カスペルスキーのセキュリティ関連製品が政府機関のパソコンなどから排除されました。ロシア政府がカスペルスキー社の製品を使ってアメリカのコンピュータにサイバー攻撃を仕掛けているとの疑いが持たれたからです。
同年、イギリス政府も同様の勧告を行なっています。2つの政府が動いたことから、これを理由にカスペルスキー製品を回避するユーザーも出たことでしょう。
2022年3月には、米連邦通信委員会(FCC)が「カスペルスキーを国家安全保障上の脅威と見なす通信機器・サービスのリストに追加した」と発表しています。
スパイ行為を疑われたことがあるから
上記の項目とも関連しますが、カスペルスキーはアメリカ政府からスパイ行為を疑われたことがあります。
カスペルスキーセキュリティが検出した「正体不明のソフトウェア」解析のために、本社サーバにそのプログラムデータが送信されたのですが、そのサーバがロシア国内にあったうえ、解析対象となったソフトウェアがアメリカ国家安全保障局のハッキングツールだったのではないかと言われています。
カスペルスキーからの乗り換えにおすすめのセキュリティソフト
筆者は何回かカスペルスキーセキュリティの更新を続けており、誤動作などがないことからこのソフトを信頼しています。また、カスペルスキーの製品が疑問を持たれる理由となったいくつかの事象も特に気にするようなものではなく、きちんと使える製品だと考えています。
ですが、中にはカスペルスキーに対する不信感をぬぐえない方もいらっしゃるかもしれません。
そんな方には、以下で紹介する3つのセキュリティソフトがおすすめです。
ESET HOME セキュリティ エッセンシャル
ESET HOME セキュリティ エッセンシャルは総合セキュリティ製品の中ではお手頃な価格で、軽く安定した動作と高い防護能力を上手にまとめた製品です。機能的にはカスペルスキーセキュリティよりもやや小さめですが、その分、あるいはそれ以上に手頃な価格設定となっています。
シンプルで使いやすいユーザーインタフェースも、安心しておすすめできる理由の一つですね。どんなユーザーでも使いやすい1本です。
また、ESETは現在、国際情勢を受けてロシアとベラルーシでの新規販売を停止しています。そういった点に共感できる方にも、ESETはおすすめです。
ウイルスバスタークラウド
ウイルスバスタークラウドは、日本国籍の企業が開発元となっているセキュリティソフトです。
そのため、守りたい個人情報を事前登録しておくことで、それらの情報が各デバイスから第三者に送信されることを防ぐなど、日本ならではの個人情報漏えい対策に強みを持っています。
機能面でもしっかりと総合セキュリティソフトらしい内容を備えていますし、防護能力に関しても問題はありません。そつなく無難にまとめられた1本です。
ゲーププレイ中やリモート会議などの最中に無用なセキュリティソフトの通知が上がることを防ぐ、サイレントモードの存在も嬉しいですね。
ノートン 360
カスペルスキーの機能をフル活用しているようなユーザーならば、より幅広い機能を備えたノートン 360もおすすめです。カスペルスキーでは機能が制限されているVPN機能やパスワードマネージャーなども、フル機能で利用できます。
価格面においてはカスペルスキーよりも高額となりますが、機能の豊富さを考えると、使い方によってはコストパフォーマンス面が逆転することもあり得ます。
高い防護能力と安定した動作も、魅力的な製品です。
カスペルスキーからの乗り換え手順などについては、こちらの記事を参照ください。
カスペルスキーの実際の危険性は?削除する必要はある?
カスペルスキーに対してネガティブな印象を持たれる方のために3つの代替ソフトをご紹介しましたが、実際のところカスペルスキー社のセキュリティ製品は危険なものなのでしょうか?
個人的には、「カスペルスキー社の製品を特別に危険視する必要はない」と考えます。その理由は、以下の3点です。
他のセキュリティソフトにも同様の脅威があるのでは?
ロシア製品であることがリスク要因として考えられている件については、「他国の製品は本当に大丈夫ですか?」という問題提起が解答になるかもしれません。
サイバー空間ならびにリアルな世界での諜報活動は、どの国も行なっていることです。そういった国家機関の強さにおいては、ロシアを上回る国もいくつかあるでしょう。
セキュリティソフトウェア企業の独立性に疑問を持ちスパイ的行為を警戒するのならば、ロシア製ソフトを排除するだけでは不十分なのでは?というのが、私の見解です。
他のセキュリティ企業がカスペルスキーを危険視していない
アメリカで政府機関からカスペルスキーのセキュリティソフトが排除されたとき、他のセキュリティソフトメーカーからは特段その点を糾弾したり、カスペルスキーセキュリティのリスクを指摘したりするような大きな動きは取りませんでした。
また、カスペルスキーセキュリティのインストーラーをノートン 360でスキャンしても、危険なソフトとして削除・隔離はされません。
もっとも、「ネットワーク経由でプログラム本体を取ってくる今風のインストーラー本体には危険な要素が含まれていない」と判断される方もいらっしゃるかもしれません。ただ、本当にカスペルスキーがリスキーだと考えるなら、そもそも論でインストーラー自体が排除されてもおかしくないと考えます。
セキュリティソフトを手がける他社がカスペルスキーセキュリティをことさら危険視してはいないように思える点が、2つめのポイントです。
本社サーバへの情報送信は現在のセキュリティソフトの標準的な動作
現在のセキュリティソフトの多くは、未知のソフトウェアを検出した際に本社サーバにその情報を送り、本社のサーバにてセキュリティリスクのあるプログラムかどうかの解析を行なっています。
セキュリティソフトを導入したデバイスが、新たな脅威検出用のプローブとして利用されているということですね。
そう考えると、カスペルスキーセキュリティのスパイ行為が疑われた事象も、今のセキュリティソフトとしては標準的な動作と言えます。たまたま引っかかったソフトウェアがNSAのソフトで、解析用サーバがロシアにあったために、スパイ疑惑が持たれてしまったのではないでしょうか。
また、このアメリカ政府によるカスペルスキーのセキュリティソフト締め出しの事件以降、カスペルスキー社は会社組織のグローバル化をより進め、同社ソフトウェアの透明性確保のための努力、開発拠点などのロシアからの脱却も併せて進めています。
実際、Google Play、App Storeに登録されているカスペルスキーのセキュリティ製品は、今ではスイスからの登録になっています。
とはいえ、安全性の完全な証明は不可能です。最終的な製品選択は、それぞれのユーザーの「感覚」を重視してください。
カスペルスキーの代表的な機能
カスペルスキーセキュリティの機能は、他のソフトと比べて特別豊富というわけではありません。しかし、総合セキュリティソフトと呼ぶのに十分な機能が、1本にまとめられています。
基本的な防護機能の他に、現在のセキュリティ製品として標準的な以下の機能を備えています。
- セキュアブラウザ
- Webカメラ保護
- ペアレンタルコントロール
- Webトラッキング防止機能
- パスワードマネージャー(無償版:登録できるID数に制限あり)
- 独自VPN機能(無償版:毎日の通信データ量に制限あり)
基本防護能力の高さ、誤検出などが少ない安定した動作は、第三者機関による評価でも折り紙付き。そのため、ここでは基本的な機能以外の「カスペルスキーならでは」の特徴をピックアップしてご紹介します。
詳細なカスタマイズが可能なセキュリティ機能
カスペルスキーセキュリティは、他社製品に比べてかなり詳細な部分までセキュリティ機能をカスタマイズ可能です。
そのため、ちょっと凝った使い方をしたいユーザーにとっては、唯一無二の使い勝手を実現してくれるソフトと言えるでしょう。
もちろん、通常の使い方であればソフトに「お任せ」で全く問題ありません。
VPNサービスを標準搭載
VPNとは、一般的なインターネット回線を利用して構築する仮想のプライベートネットワークのこと。フリーWi-Fiなど回線の安全性に不安がある場合に、重宝する機能です。
毎日利用可能な通信データ量の制限こそあるものの、カスペルスキーセキュリティにはこのVPN機能が標準搭載されています。
セキュリティソフト本体に「カスペルスキーVPN セキュアコネクション」の無償版が同梱されており、標準状態だと200MB/日、カスペルスキーアカウントでサインインすると300MB/日分だけVPN通信が行えます。
上手に使いこなせば、このデータ量でも重要なデータ通信の保護を行なうことが可能です。
パスワードマネージャーも利用可能
カスペルスキーには、パスワードマネージャー機能のお試し版も同梱されています。
こちらは、記憶できるアカウントの数がかなり低めに設定されているため、本格的にネットの各種サービスを利用しているユーザーは不足を感じるかもしれません。
とはいえ、IDやパスワードの使い回し防止、強度の高いパスワード利用を行なうにはパスワードマネージャー機能はとても便利です。特に大切なアカウントのみにパスワードマネージャーを使う、という方法もあり得るでしょう。
カスペルスキーからの乗り換えにおすすめのセキュリティソフト
最後に、やはりカスペルスキーからの乗り換えを検討したいという方に、代替品となる3つのセキュリティソフトを再掲しておきます。
ESET HOME セキュリティ エッセンシャル
ESET HOME セキュリティ エッセンシャルは、総合セキュリティ製品の中ではお手頃な価格で、軽く安定した動作と高い防護能力を上手にまとめた製品です。機能的にはカスペルスキーセキュリティよりもやや小さめですが、その分、あるいはそれ以上に手頃な価格設定となっています。
シンプルで使いやすいユーザーインタフェースも、安心しておすすめできる理由の一つですね。どんなユーザーでも使いやすい1本です。
また、ESETは現在、国際情勢を受けてロシアとベラルーシでの新規販売を停止しています。そういった点に共感できる方にも、ESETはおすすめです。
ウイルスバスタークラウド
ウイルスバスタークラウドは、日本国籍の企業が開発元となっているセキュリティソフトです。
そのため、守りたい個人情報を事前登録しておくことで、それらの情報が各デバイスから第三者に送信されることを防ぐなど、日本ならではの個人情報漏えい対策に強みを持っています。
機能面でもしっかりと総合セキュリティソフトらしい内容を備えていますし、防護能力に関しても問題はありません。そつなく無難にまとめられた1本です。
ゲーププレイ中やリモート会議などの最中に無用なセキュリティソフトの通知が上がることを防ぐ、サイレントモードの存在も嬉しいですね。
ノートン 360
カスペルスキーの機能をフル活用しているようなユーザーならば、より幅広い機能を備えたノートン 360もおすすめです。カスペルスキーでは機能が制限されているVPN機能やパスワードマネージャーなども、フル機能で利用できます。
価格面においてはカスペルスキーよりも高額となりますが、機能の豊富さを考えると、使い方によってはコストパフォーマンス面が逆転することもあり得ます。
高い防護能力と安定した動作も、魅力的な製品です。