昨今、リモートワークの普及により今まで都市部を生活圏としてきた人の中には地方で暮らす人が増えてきています。そのような人たちにとってネックになっているのが都市部に所有する不動産です。きっぱりと手放すのは簡単ですが、親から譲り受け、さらに子や孫へと譲り渡すためにはできれば手放さずにずっと持っていたいと思います。
しかし、用途が思いつかないからといつまでも更地にしておくと税金を徴収されるだけです。そのため、駐車場経営を考える人も多いようです。たしかに駐車場運用は比較的手軽に始められ、立地場所によっては多くの収益も見込まれるので、人気のある投資方法なのです。
ただ、駐車場にしても課税される税金が発生します。それが固定資産税です。
本記事では、駐車場にした場合の固定資産税の計算方法を詳しく解説し、さらに固定資産税の節税方法も合わせて紹介しますので、駐車場運用の参考にしてください。
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駐車場の固定資産税に関する基礎知識
そもそも固定資産税とは、所有する不動産などの資産の価値に応じて課せられる税金です。基本的にはその資産の評価額に税率をかけて算出されます。ただし、その資産の種類によって税率が異なり、更に軽減措置があったり、土地だけでなく建造物も課税対象と見なされるため、簡単にこの価格と断言できず複雑に思われがちです。
まずは固定資産税の基礎的な構造を理解しながら、駐車場の固定資産税を正しく理解していきましょう。
住宅用地の6倍かかる
基本的には、駐車場であっても住宅用地であっても、「評価額に税率をかけて計算する」という仕組みは変わりません。税率も土地や建物に課せられる本則税率の1.4%で違いはありません。ただし、住宅用地に限っては以下の表のような固定資産税の軽減措置が適用されるため注意が必要です。
住宅用地区分 | 固定資産税軽減措置 |
小規模住宅用地(200㎡以下) | 評価額×1/6 |
一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 評価額×1/3 |
駐車場は住宅用地ではないので、このような軽減措置は受けられず、住宅用地と比べると最大で6倍高額になってしまうことがわかります。
特例措置が適用される住宅は現在住んでいるマイホームに限らず、貸し出している住居やセカンドハウス等も該当します。つまり、所有している空き家を駐車場に作り替えるような場合、今よりも固定資産税額が大きくなってしまう恐れもあります。
駐車場の設備にもかかる
住宅用地で土地と建物それぞれに固定資産税が課せられるのと同様に、駐車場の舗装された地面やフェンス、機器など付帯設備も資産と見なされ、それぞれに固定資産税が課せられます。
この設備など経年による劣化が見込まれるようなものを償却資産といい、それに関する評価額を償却資産税評価額と呼ぶことがあるので覚えておくと良いでしょう。
償却資産
償却資産とは、一般の確定申告で個人事業主が申告する「原価償却」に関連します。土地を駐車場にするために購入した物品の代金、例えば工事の際の資材費、工具や車両などが償却資産にあたります。償却資産の対象となっているものはすべて償却年が決まっており、それぞれ年ごとに劣化していくと想定し、それに合わせて評価額が決められています。
駐車場の集客力をあげるためにはできる限りの設備を整えていきたいところですが、設備をそろえればそろえるほど評価額も上昇してしまいます。たとえ劣化して評価額が下がったとしても、駐車場を維持するためには新しい機器に買い換えたり、修復工事をおこなわなければならないため、ある程度の出費は心しておかなければなりません。
都市計画税も課税される場合がある
固定資産税とは別に、その土地のエリアによって都市計画税を支払っているという方も多いでしょう。都市計画税は主に市街地区と指定されたエリアで課せられる都市開発費に充てられる税金です。所有する土地がエリア内かどうかわからない場合には、所轄の自治体のホームページを参照するなどして確認しましょう。
都市計画税も住宅用地に関しては以下のような軽減措置が設けられています。
住宅用地区分 | 都市計画税軽減措置 |
小規模住宅用地(200㎡以下) | 評価額×1/3 |
一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 評価額×2/3 |
固定資産税と同様に、駐車場にはこのような軽減措置は適用されないため、場合によっては現在よりも税額が高くなる恐れもあります。
形態によって計算方法が異なる
駐車場を経営するなら、コインパーキング形式か月極契約式かの2種類から経営形態を選択しなければなりません。この2つの経営形態は固定資産税の計算方法も異なるため注意が必要です。
月極契約の駐車場は、期間を決めて1ヶ月~1年に一度使用料を支払って利用するため、基本的に精算機やロック板といった機器は必要ありません。対してコインパーキングはそれらの機器や目立つように看板や照明なども用意する必要があるため、課税対象になる資産が多くなる傾向があります。
また、月極契約の駐車場の中でも、アパートやマンションなどに併設する形で作られ、住民が利用する目的の駐車場であれば住宅用地の軽減措置に該当するなど、特殊な例も存在しています。
駐車場経営の基本知識について、詳細に知りたい人はこちらをご覧ください。
https://news.mynavi.jp/fudosan-satei/9151
駐車場の固定資産税の計算方法
固定資産税の基本的な知識の理解を深めていただけたでしょうか。それでは、駐車場の固定資産税の計算方法を見ていきます。本章では、固定資産税・償却資産税・都市計画税の3つに分けて考えていきましょう。
駐車場の土地にかかる固定資産税
まず最初に、駐車場の土地にかかる固定資産税の計算式をご紹介します。
評価額は毎年市町村から送付される固定資産税納付書に明記されますが、路線価を調べることで自分で概算することも可能です。現在所有する土地が更地であれば、土地の評価が大きく変わらない限り最新の評価額は有効な参考額となるでしょう。
路線価とは
路線価は1月1日時点の価格を基準として発表される道路ごとの価格です。国税庁が発表する相続税の税額を決定するための相続税路線価のことを述べることも多いですが、市町村が発表する固定資産税路線価を指す場合もあります。
相続税路線価は毎年更新されるのに対して、固定資産税路線価は3年に1度の更新であるという点は特徴的です。
路線価は自治体のホームページや、国税庁の「路線数・評価倍率表」で閲覧することができます。路線価から固定資産税評価額を求める概算式は次の通りです。
ただし、実際には奥行価格補正率を含めて計算する必要があり、二面を道路に面している場合など上記の式よりも複雑な計算をしなければならない例もあるため、あくまで目安として捉えていただければ幸いです。
路線価から土地の価格を求める方法の詳細はこちらの記事もおすすめです。
https://news.mynavi.jp/fudosan-satei/6090
駐車場設備にかかる固定資産税
駐車場の設備にかかる償却資産税も固定資産税と同様に以下のように求めることができます。
ここで言う償却資産税評価額は、その設備を取得したときの費用に70~80%をかけて概算できると言われています。しかし、償却資産は年数がたつにつれて劣化して評価が下がっていくことを前提とされている資産です。毎年少しずつ消費していき、取得費の50%程度まで低下します。ただし、何年経過しても減価残存率という考えからこれが50%以下になることはありません。
駐車場にかかる都市計画税
土地が都市計画税の課税対象地域にある場合は、固定資産税と一括で納付することになるため、事前に計算して費用を予想しておく必要があります。以下のように計算しましょう。
自治体によって掛け合わせる税率は異なります。都市計画法で定められた最高税率は0.3%でそれ以上高くなることはないので、目安として計算するなら0.3%をかけておくと安心です。
駐車場の固定資産税の計算事例
税額計算にはさまざまな例外や特例が伴うため、いくつか例を挙げて実際に計算しながら理解を深めていきましょう。今回計算する例は次の通りです。
- 未舗装200㎡の駐車場の場合
- 機械式2階建て・100㎡のコインパーキングの場合
- アスファルト舗装・100㎡月極駐車場の場合
- 砂利平置き150㎡のアパート駐車場
どのような形式で駐車場経営を行うか決まっているなら、その条件に合う例を参考にシミュレーションしてみてください。
未舗装200㎡の駐車場の場合
以下のような条件の駐車場の例を見ていきましょう。未舗装というのは、アスファルトやコンクリートで舗装されていない駐車場であり、償却資産税の対象外であることを示しています。
種類 | 面積 | 路線価 |
未舗装の月極駐車場 | 200㎡ | 50万円/㎡ |
評価額はおおよそ1億円であると概算することができました。ここに税率1.4%をかけて税額を求めます。
このように、この場合土地にかかる固定資産税額は140万円程度であると求めることができました。
機械式2階建て・100㎡のコインパーキングの場合
次は少し複雑な計算例で償却資産税も含めて計算してみましょう。
種類 | 面積 | 路線価 | 設備取得費 |
機械式2階建てコインパーキング | 100㎡ | 50万円/㎡ | 800万円 |
次に設備にかかる固定資産税を調べてみましょう。具体的な償却資産税評価額はわからないので、設備の取得費800万円から概算します。
後は計算式に当てはめて、固定資産額を求めます。
最後に土地にかかる固定資産税70万円とこれを足して、この駐車場にかかる固定資産税がおおよそ78万9,600円であると求めることができます。
アスファルト舗装・100㎡月極駐車場の場合
設備が整っていたとしても、条件によっては固定資産税がかからない場合もあります。その例を見ていきましょう。
種類 | 面積 | 路線価 | 舗装費用 | フェンス設置費用 |
アスファルト舗装の月極駐車場 | 100㎡ | 35万円/㎡ | 5,000円/㎡ | 10万円 |
続いて施設にかかる固定資産税ですが、アスファルト舗装にかかった費用(取得費)を計算します。
フェンスの設置費が10万円だったので、設備の取得費は合計で60万円だったことがわかります。
通常であれば、ここに70~80%をかけて償却資産税評価額を概算しますが、取得費用の合計が150万円未満の場合は設備の固定資産税がかからないという免税措置があるため注意しましょう。
つまりこの場合の取得費用は60万円で150万円に満たないため、償却資産税は0円で、土地にかかる固定資産税の49万円のみを納税します。
砂利平置き150㎡のアパート駐車場
最後に住宅用地の特例措置が適用される場合の計算例を確認しましょう。
種類 | 駐車場面積 | アパート面積 | 路線価 | 砂利敷き費用 |
アパート併設の砂利敷き駐車場 | 150㎡ | 300㎡ | 50万円/㎡ | 3,000円/㎡ |
150㎡にかかる砂利敷きの費用は45万円のため、設備に固定資産税はかかりません。他の例と比べても、住宅用地として認められるだけでかなりの節税対策になることがわかります。
駐車場の固定資産税を節約する方法
計算例を見てみると、駐車場の固定資産税は数十万から数百万ほどかかる大きな費用であることがおわかりいただけたのではないでしょうか。実際には都市計画税が追加でかかったり、舗装費用だけで済まず150万円を超えて設備も課税対象になる可能性も大いにあります。
では、固定資産税の負担を少しでも減らすためにはどのような方法を取ることができるでしょうか。ここでは、次の3つの方法を提案します。
- 建物と一体利用する
- アスファルトで舗装する
- 一括償却資産として償却資産税を減らす
次にそれぞれの方法を詳しく見ていきましょう。
建物と一体利用する
計算例でもご紹介した通り建物と一体の駐車場として作ることで駐車場は住宅用地と見なされ、減税対象になります。つまり、駐車場の近くに建物を建築することで、駐車場を住宅用地として扱うことができる可能性があります。
建物と駐車場をあわせてひとつの不動産として認定を受けることができれば、600㎡以下の部分の評価額を1/6に抑えることが可能です。
駐車場としての固定資産税が減税されるメリットはありますが、建築の費用とそれにかかわる税金も課税するため、あらかじめお金に余裕のある人や融資を受けても返済が可能な人にはおすすめの方法です。お金に余裕がなくても、アパートなどの賃貸物件にして家賃収入を得られるならば金融機関からの融資を受けることが可能になりますので、ただ駐車場として利用するよりも収益は上がる可能性があります。
アスファルトで舗装する
不動産は現金で相続するよりも税率が低いため、相続税対策として駐車場を運営するという人も多いでしょう。今すぐに税額が下がると言うわけではありませんが、将来その駐車場を誰かに相続することになった場合、アスファルトで舗装しておいた方がお得になる可能性があります。
国税庁の定めによって、アスファルト舗装にすると「構造物の敷地の用」のものとなるため、駐車場でもアスファルト舗装をすることで貸付事業用宅地等扱いになります。この場合、200㎡以下の土地に限って評価額が50%減額される特例を受けることができるのです。
砂利敷きなどに比べると工事費や材料費など初期費用は大きいですし、工事期間も長くかかります。しかし、長期にわたって駐車場として活用するなら初めからアスファルト舗装にしたほうがお得なのです。
駐車場経営の初期費用について、詳細に知りたい人はこちらをご覧ください。
https://news.mynavi.jp/fudosan-satei/20550
一括償却資産として償却資産税を減らす
土地にかかる固定資産税を減らすことは難しいですが、設備にかかる償却資産税は処理次第で減らすことができます。例えば、前に述べたようにアスファルトにする場合にかかった費用もすべて償却資産の対象になります。
150万円に満たない取得費に抑えることが一番ですが、それを超えてしまった場合には、資産を一括償却資産として経費に計上するという会計処理をおこなうことで節税につながります。
一括償却資産とは、1つ10万円以上20万円未満の資産の取得費用を3年に振り分けることができる考え方です。
例えば、1つ10万円のロック版を20台分導入すると取得費用は200万円になり、150万円を超えてしまいます。そこで一括償却資産として計上すると、1年でおおよそ67万円の費用として3年に振り分けて、免税措置を受けることが可能です。
駐車場経営における税金全般について、詳細に知りたい人はこちらをご覧ください。
https://news.mynavi.jp/fudosan-satei/19981
駐車場経営以外の土地活用法も考えよう
そもそも、土地の活用方法は駐車場だけでしょうか。ご存じのように街中の空き地全てが駐車場になっているわけではありません。前に述べたように、駐車場付きの賃貸住宅を建てるほかに、建売住宅を建てて販売する、土地を整地して借地にしたり土地として売却するなどです。
しかし、どの方法も課税対象になりますし、方法によっては経費が多くかかってしまい、結果的には不動産運用が失敗する可能性も出てきません。そう考えると、駐車場経営は比較的手軽であり、利益も期待できる方法として人気があるのも肯けます。
いずれにしても、原則として非課税にならずに収益が見込める活用法はありません。いかに税金や経費を安く抑えられるかを考えて活用方法を決めるのがいいでしょう。さまざまな土地活用法を紹介した次の記事も、併せてチェックしてみてください。
https://news.mynavi.jp/fudosan-satei/16606
https://news.mynavi.jp/fudosan-satei/16704
https://news.mynavi.jp/fudosan-satei/18261
また、駐車場以外の土地活用も検討したい方は、土地活用プランの一括請求サービスを利用すると便利です。複数社から提案されたプランを比較することで、自分に最適な土地活用法を見つけられるでしょう。
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駐車場の固定資産税に関するQ&A
最後に駐車場の固定資産税に関して、よくある疑問とその回答をまとめましたのでご覧ください。
Q.固定資産税の税額を確認するには?
A.前述してきた計算方法はあくまで概算であり、路線価も年に1度しか更新されないため、環境や情勢の変化でその価格から大きく外れていくことも少なくありません。正しい固定資産税の額を確認するなら、納税通知書で確認することが一番です。
納税通知書は、1月1日時点の土地の所有者に市町村から毎年送付され、納付書や明細書などが同封されています。不動産の評価額や計算方法まで詳細に書かれており、納付目的だけでなく売却する際などさまざまな用途に使用される書類です。
もしも紛失してしまった場合、課税明細書の再発行はできませんが、同様の内容が記載された名寄帳証明書を発行してもらうことは可能です。
Q.駐車場の固定資産税は経費にできる?
A.駐車場経営で収益を得ると、その収益額に応じて所得税を納めなくてはなりません。駐車場経営をおこなうなら、必ず確定申告をおこないましょう。
その際、駐車場にかかった固定資産税は経費に含めて申告することができます。経費が多ければその分課税所得は少なくなるため、節税につながることになります。忘れずに経費として申告しましょう。
Q.駐車場の固定資産税はどこに納付する?
A.固定資産税は市町村に納税する地方税のひとつです。ただし東京23区は東京都に納めることになっています。都市計画税が課せられている場合も一括で同一の納付先に納めます。
納付場所は納付書に詳しく明記されていますが、自治体窓口やコンビニエンスストア、銀行などの金融機関で納付することが一般的です。
まとめ
駐車場にかかる固定資産税は決して少ないとは言えない出費です。アパートやマンションの経営に比べて月々の利益が少ない駐車場経営は、集客率を上げること以上にコストを下げることが重要視されることでしょう。
しかし、駐車場の固定資産税は工夫次第で抑えることができます。所有している土地の状態や周辺環境、駐車場経営に充てられる自己資産額など、さまざまな要素を検討しながら、特例制度などを利用して賢く節税対策をおこない、収益をあげましょう。
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