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【答え】フィアット「ムルティプラ」
答えはフィアットの「ムルティプラ」(MULTIPLA)です。
ムルティプラは1998年に発売となった多用途車(MPV=マルチ・パーパス・ヴィークル)です。
なんといってもその外観が特徴的で、ボンネットフードの上に客室がのっかるような造形は他では見ることができません。
なぜこのような格好になったのか、理由はわかりません。推察すると、MPVとして、車内の天井の高さを含めた実用性を重視した一方で、いかに車体全長を短くできるかを考えて設計したのかもしれません。それらを両立させるため、まるで鏡餅のような二段重ねの外観になったのではないでしょうか。
ムルティプラは6人乗りで、車幅が1.9m近くあります。対して全長は4mを切る短さです。これは、欧州でフェリーにクルマを載せる際、全長が4m以下であると料金が安くなるからだといわれます。大衆車並の短い車体で6人乗りを実現する。そこに、この造形の理由がありそうです。
ヘッドライトの取り付け方も独特です。ボンネットフード先端のラジエターグリルのところにあるのが「ロービーム」(日常で使うヘッドライト)、客室が盛り上がるところにあるライトが「ハイビーム」です。ハイビームで遠方をより明るく照らすためには、この高さの違いが効果的かもしれません。ムルティプラの独創的な外観をさらに際立たせる要素にもなっています。
ドアを開けると前席に3人、後席に3人、それぞれ横並びに座れます。しかもベンチシートではなく、1人ずつ個別に座れるキャプテンシートが6脚あります。単なる利便性だけでなく、高速で走ることもあるクルマの座席として、乗員一人ひとりが正しく着座できることを重視したのは、疲れにくさと安全の両立にもなり、クルマ社会の進んだ欧州らしさといえます。
運転席以外は座席ごとにアレンジすることができます。例えば前席中央の座席の背もたれを折りたためば、両側に座る人がひじ掛けとして使うことができます。後席を取り外せば荷室を広げられます。
2003年から、ムルティプラは日本でも販売されました。
写真のクルマは、実はムルティプラという車名のクルマとしては2世代目です。初代は1956年に登場。フィアット「600」という小型車を基にした、ワンボックス型のワゴン車でした。2ドアハッチバックのフィアット600の前の部分をそのままワンボックス形状に伸ばしたような、独特の格好をしていました。
ムルティプラと同じように、前後2列の座席で6人が乗れるようにした日本車もありました。日産自動車「ティーノ」やホンダ「エディックス」などです。いずれも、それほど人気にはなりませんでしたが、前席に3人が座れるクルマというのは、国を問わず、技術者の挑戦してみたいという気持ちに火を付ける存在なのかもしれません。
それでは、次回をお楽しみに!