パワーウインドーが動かなくなるというフォルクスワーゲン「ゴルフⅡ」定番のトラブルを克服したかと思ったら、今度はセルモーターが回らない。宇都宮のガソリンスタンドで発生した新たな問題にどう対処したのか。今回はその全記録である。
冷えれば回る?
キーを回してもセルモーターがうんともすんともいわないというあの手応えのなさは、けっこう心臓に悪い。「ウソでしょ」というドキドキとともに、「今晩は宇都宮に1泊するとしたら、明日早朝から始まる取材はどうなるのか……」とか、「レッカー車はJAFか保険会社かどっちがいいのかな」とか、「自宅から百数十キロ離れたここからだとレッカー代は有料になるのかな」とか、「修理代はいくらかかるのかな」とか、いろいろなことが一瞬で頭の中をグルグルと駆け巡った。
バッテリー上がりが原因でないことは、その他の電装品が普通に作動することからもわかる。早速、相模原にある「スピニングガレージ」に電話をすると(営業中の時間でよかった)、対応してくれたのは飯岡メカ。「あー、アレですね。30分ほど放置して、エンジンが冷めてきたらもう一度セルを回してみてもらえませんか? 多分、普通にかかると思いますョ」とおっしゃる。ガソリンスタンド(4号線沿いのENEOSさん、ご迷惑をおかけしました)の店員さんにゴルフを押してもらい、重くなったステアリングを切りながら給油位置から空きスペースに移動。店内で待たせていただくことにした。はたして30分後にトライすると、何事もなかったようにセルが回り、エンジンに点火することができた。
ゴルフⅡの3ATモデルに共通の弱点
さて原因なのだが、これはゴルフⅡの、特に3速ATモデル特有の症状のようである。
ATモデルのセルモーターは、エンジンのオイルパンとファイナルギアボックス、それに取り付けられた右ドライブシャフトに囲まれた奥側に取り付けられている(ちなみにMT車はディストリビューターの下についているらしい)。さらにまずいことに、そこは排気マニホールドのすぐわきだ。申し訳程度の薄い金属の遮熱板が間に取り付けられているのだが、連続高速走行などでエンジンに高負荷をかけ続けていると、セルが排熱の超高温にさらされ続けることになり、モーターのソレノイド(マグネットスイッチ)が正常に作動しなくなるのだ。
なぜこんな場所に取り付けられてしまったのかは今となってはわからないけれども、ゴルフ3になってからは別の位置に取り付けられたというから、フォルクスワーゲンとしては、やっぱり設置場所に問題があったと判断したのだろう。電極や接点にスラッジが溜まってモーターの性能が低下している場合はカナヅチなどで叩くと治ることもあるらしいのだが、とにかく寿命が尽きる前に新品に交換するしかないようだ。
リビルト品への交換と「バッ直」加工
「待てば、かかる」ということがわかったので、その後はもう少し様子見。同じ症状は2024年9月初めの江ノ島での大渋滞中、コンビニ休憩で1回出た(店に断りを入れて中で1時間ほど待たせてもらった)だけで、季節が変わって気温が低下してくると症状が出ることはなかった。しかし12月になって、名古屋往復(この時期に変更されたT・Yさんのライブのため)を敢行した際には、帰りの駿河湾沼津SAで再発。この時は再始動まで2時間以上を費やしてしまったので、さすがにもうムリだと判断。件のスピニングガレージに連絡すると、1個だけ在庫として残っているAT用のリビルト品があるというので早速交換することにした。
半日ほどかかった交換作業を担当したのはいつもの小磯メカ。追加作業として、ノーマルより太いケーブルをバッテリーからセルモーターまで最短距離でつなぐと共に、電気系統にリレーを追加し、より強い電流がモーターに伝わるような電気系の強化、いわゆる「バッ直」加工もやってもらった。費用はセルモーターが5.5万円、交換作業工賃が3.08万円、「バッ直」加工が1.1万円で合計9.68万円だった。
高級オイルとスタッドレス交換
今回の作業の少し前、地元に近い国分寺付近を走行中にゴルフⅡのオドメーターが111,111kmを記録したので、路肩に停めて写真を撮影。また、購入以来7,000kmほど走ってしまっていたので、エンジンオイルをパワークラスター「BiLENZA PRO 10W-60」に交換した。近所の「タイヤ館国立」でオススメしてもらったこのオイル、数字を見ると粘度が硬そうなのだが、減りやにじみが多い旧車にはぴったりなのだという。リッターあたり2,970円と高価なのが玉にキズだが、走行時のトルク感がアップするというので楽しみだ。
冬を迎えたのでタイヤはスタッドレスの「ヨコハマ アイスガード6(iG60)」に交換。手に入れたのは現行(iG70)よりひと世代前のもので、製造年月日が3820(2020年の38周目)の8分山のもの。メーカーが4年間は高性能をキープできるとしているので今シーズンまでは問題なく使えそうだし、自宅周辺を走っている限りは雪の上を走ることがないかもしれない。念の為、ラゲッジには布製チェーンの「Auto Sock 600サイズ」も入れておくことにした。
実はもう1台の愛車であるメルセデス・ベンツ「W124」に取り付けた話題のオールシーズンタイヤ、ダンロップ「シンクロウェザー」のオンロードでのフィーリングがとてもいいので「ゴルフにもそれを」と思ったのだが、残念ながらGTスペシャル用の15インチBBSに適したサイズは製品化されていないのだ。