ポルシェが初めて作ったSUVが「カイエン」で、その次に出たSUVのが「マカン」です。カイエンよりも小さくて運転しやすいからなのか、都心部でもよく見かける人気のクルマです。そんなマカンがモデルチェンジして電気自動車(BEV)になりました。クルママニアで元911オーナーの安東弘樹さんはどう評価するのでしょうか?
マカンはこれまでに世界で80万台以上が売れたというポルシェの人気モデルです。2024年1月にはBEVの新型マカンが発表となり、日本では2024年7月に予約受注が始まりました。今のところポルシェでは、ガソリンエンジンのマカンも併売しているようです。
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日本自動車輸入組合(JAIA)の試乗会で1日に全5台のクルマ(全てBEV)に乗った安東さん。ミニ「エースマン」、ロータス「エレトレR」、メルセデス・ベンツ「G580」に続き、4台目に乗ったのがポルシェ「マカン」でした
マカンのBEVは「マカン」(998万円)、「マカン4」(1,045万円)、「マカン4S」(1,196万円)、「マカンターボ」(1,525万円)という4種類のラインアップです。このうち「マカン」はモーター1つのRWD(後輪駆動)、残りの3モデルはモーターを前後に1つずつ搭載する4WDとなります。最高出力と最大トルクは価格が高くなるにつれて上がっていきます。バッテリーの総電力量は全モデル共通で100kWh。フル充電での航続距離は最も安いRWDが最も長く641km(WLTPモード)となります。
安東さんが試乗したのは「マカン4」です。
マカンは電化でどう変わった?
安東さん:おっと、ドアにはオートクロージャ―が付いていないんですね。自分のクルマ(BMW「X5」のプラグインハイブリッド車)には付いているので、ついつい……。人間って、慣れるとダメですね。運転席周りを含め、車内はシンプルな作りです。
――運転席の「コックピット感」みたいなものは、あまり感じませんね。
安東さん:ですね。運転に集中できるといえば集中できるんですけどね。
安東さん:今日、これまでに乗ったクルマに比べると、ステアリングが細い! ここは、ある意味でポルシェらしいところかもしれません。BMWがかなり太いので、余計にそう感じます。それと、このステアリングの形が好きです。基本的にはセンター部分も丸形がいいので。
――マカンがBEVになったということで、走りはどうですか?
安東さん:BEVは初速がある(加速がいい)ので、合流の時などはやっぱり助かりますね。ただ、パワーは今日これまでに乗ったBEVの中で最も低いような感じがします。
――ポルシェなのに!?
安東さん:まあ、「エレトレR」(ロータス)は異常と言えるくらいにパワーがありましたし、直前に乗ったのが「G580」(メルセデス・ベンツ)だったので、比べるのは申し訳ないんですけどね。
不思議と、最もエンジン車っぽいと言えばいいのか、メーターも見慣れたポルシェのものですし、あとは加速が意外に、そこまで速くないと言いますか……。アクセルペダルをエレトレR、G580などと同じように踏んでみたんですけどね。
――ワープする感じの強烈な加速ではないですね。「タイカン」(ポルシェのBEV)はもっと速かったような……。
安東さん:確かに。マカンが遅い、ということはないと思うんですが、今までに乗ったクルマが化け物だった、ということなんでしょうね。
――マカンターボだと違うのかもしれませんね。このマカン4は最高出力387PS、最大トルク650Nmだそうです。
安東さん:前の2台と比べると、やっぱり馬力とトルクは少ないんですね。650Nmもあるのに、人間の慣れって恐ろしいなあ……。エンジン車だったら、650Nmといえば相当なトルクなんですけどね。エレトレRはアクセルペダルを半分も踏めませんでしたが、これなら全部踏めそうです。
――タイカンとは違う特性のBEVに仕立てているんでしょうね。
安東さん:でしょうね。ただ、マカンターボは1,130Nmですから、かなり速いんだろうと思います。
――ガソリンエンジンのマカンGTSが最高出力440PS、最大トルク550Nmですから、かなり違うんでしょうね。
安東さん:ドライブモードには「オフロード」も用意されているんですね。
――へー、マカンでオフロードですか!
安東さん:エアサスが付いていて、オフロードにすると車高が上がるみたいです
航続距離は……今、メーターの表示ではバッテリー残量が81%で、航続距離が380kmとなっています。今日これまでに乗ったBEVの中では、最も長い距離を走れそうです。やっぱり、パワーと航続距離は反比例するんですね。
――マカン4はWLTPモードでフル充電613kmとなっています。
安東さん:長いですね。それだったら、現実には500kmくらい走れるのではないでしょうか。もし自分がマカンのBEVを買うとしたら、このグレードですね。上のグレードになると、航続距離がどんどん短くなりますから。
安東さん:タイカンに乗った時に残念だったのは、パドルがなくて、回生ブレーキの強さが手元で調節できなかったことです。
――マカンにパドルは?
安東さん:これも、付いていないですね。ポルシェのBEVって、なぜかパドルが付かないんですよね。
――運転の楽しさ的な意味で、ポルシェのBEVには付いていそうなイメージなんですけどね。では、走りながら回生の強さを手元で変えることはできないということですか?
安東さん:少なくとも、パドル操作では変えられません。ディスプレイを操作すれば、選べるのかもしれませんけど。なので、加減速はペダル(アクセルとブレーキ)だけ行うことになります。ただ、ノーマルの状態でも回生ブレーキはけっこう効いてますね。
電動化してもポルシェらしい?
――ポルシェもロータスと一緒で、「電動化しても『らしさ』は残るのか」というところが注目されがちなブランドだと思うんですけど、今のところどうなんでしょう?
安東さん:どうなんですかね? うーん……。そもそも私は、オーナーとしてはMTの「911」にしか乗ったことがなくて、ポルシェのSUVにはあまり関心がありませんでした。ただ、乗るとしたら、BEVのマカンくらいがちょうどいいのではないかと思っています。でも、やっぱり、家族で乗るにはちょっとサイズが小さいんですよね。今のライフスタイルだと、買うことはなさそうです。
――乗り心地は少し硬いような?
安東さん:そこは、ポルシェっぽいですね。もう少しペースを上げてコーナーを走れば、気持ちいいでしょうね。
――ポルシェらしさといえば、見切りがよくて車両感覚をつかみやすいとも聞きますが?
安東さん:マカンのBEVもボンネットの両端が張り出していて、つかみやすいですね。
――加速したときの音はどうですか? ポルシェらしい?
安東さん:そこはどうでしょう? 電子音っぽい感じの音ですからね。
――回生の具合はいかがでしょうか?
安東さん:下り坂になって、回生ブレーキを使いながら走っているんですが、航続距離がけっこう伸びていますね。
――ガソリンエンジンのマカンに乗っている人は多いと思うんですが、BEVへの乗り換えはオススメできそうですか?
安東さん:人にもよると思いますが、BEVでいいのでは? という気がしますね。圧倒的に静かですし、ポルシェのブランドはゆるぎないわけですから。
――ガソリンスタンドに行かなくてもいいですしね。マカンが一番、BEVに乗り換えやすそうなポルシェですね。
――もうすぐ試乗終了ですが、まとめると?
安東さん:間違いなく、よくできたクルマです。違和感がありません。ただ、相手が悪かったと言いますか、前に乗ったエレトレRとG580が個性が強すぎるBEVだったので、良くも悪くも普通だったかなと思います。違和感がない。それに尽きますね。
けっこう走って残りの航続距離が324kmという表示なので、あまり減っていないですね。電費がいいのかもしれません。
――ポルシェでありながら電費がいい。ちょっと意外な感じです。