首都圏の一都三県におけるマンション価格は、バブル絶頂期を上回る水準にあるという。しかしながら、実際に価格高騰が続いているのは東京都のみで、神奈川県、千葉県、埼玉県の成約価格は減少傾向に転じているのが現実だ。
不動産売却一括査定サイトを運営するマンションリサーチ株式会社は、エリアごとのマンション市場の「強さ」を定量的に比較。2024年の平均坪単価と2025年上期の平均坪単価の推移をもとに、各エリアの「価格の高騰率」と「価格の上がりやすさ(上昇棟数の多さ)」を指標としてランク分けを行った。
調査の結果、東京都内では中央区と港区、渋谷区、千代田区、目黒区、江東区、文京区、品川区、豊島区、台東区、墨田区の11の区が価格高騰率も上昇棟数もともに高く、市場として非常に強い評価Aのエリアにあることが分かった。特に港区・渋谷区・中央区などは、富裕層の都心回帰や海外投資家による需要が集中して、相場全体を引き上げる原動力となっている。
なかでも千代田区や港区では、1坪あたり1,000万円を超えるような高級物件の取引も珍しくなく、これらが東京23区全体の平均価格を押し上げる構図を作り上げている、と同社は分析。
さらに東京都23区は全ての区が評価A、または、価格の高騰率と上昇棟数Bのいずれかが高い・もしくは両方が平均以上の評価Bエリアに当てはまっている点も注目すべきだ。「東京都=強い市場」という図式は今後も継続していく可能性が高いという。
東京都以外で評価Aを得たエリアは、神奈川県の川崎市中原区、いわゆる武蔵小杉エリアだった。タワーマンションが林立し、再開発が継続しているこのエリアは、東京都心と遜色ない人気を誇る。
一方、首都圏の他地域、特に神奈川県・埼玉県・千葉県では、明らかに市場の伸び悩みが見られる。
神奈川県川崎市の川崎区や幸区、さらに横浜市の中区・西区といった、一般的には「人気エリア」として知られている地域であっても、直近では、上昇ペースが鈍化しており、価格がピークアウトしつつある兆候が見られる。その理由としては、再開発が一巡し、目新しさが薄れてきたことや、人口流入の勢いがやや落ち着いてきたことなどがあげられる。
埼玉県や千葉県においては、駅距離が遠い物件や、通勤時間が長くなる郊外エリア、典型的なベッドタウンなどで、需要鈍化が顕著なことが判明。テレワークの普及などにより、かつての「都心まで1時間でも構わない」という通勤感覚は変化しつつあり、利便性が相対的に劣るエリアは選ばれにくくなっている。また、物価や金利の上昇もあり、購入者が慎重になる中で、郊外エリアの高値維持はますます難しくなってきている。
今後もこの傾向が続くようであれば、千葉・埼玉では「価格調整」が本格化する可能性も。マンションリサーチ株式会社で不動産データ分析責任者を務める、福嶋真司氏によると、「一時的な値下がりではなく、数年間にわたってじわじわと下落する『中期的な調整局面』に入る可能性を含んでいる」という。