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ホンダ「アコード」のハンズオフ運転は使える機能? 悪天候で試す

JUN. 24, 2025 16:30
Text : 藤田真吾
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ホンダのセダン「アコード」に新たなグレード「e:HEV Honda SENSING 360+」が追加となった。目玉は「ハンズオフ機能付高度車線内運転支援機能」だ。高速道路などで「手放し運転」が可能となる技術なのだが、実際に便利で使える機能なのか。土砂降りの御殿場で試した。

  • ホンダ「アコード」の新グレード

    ホンダ「アコード」の新グレードはハンズオフ運転が可能! 実際に使って実力を試した

ホンダのハンズオフ量販車は日本初

「アコード」は同社のフラッグシップモデルであり、日本で選べるホンダ唯一のセダンでもある。現行型は2024年3月に発売となった通算11世代目のモデルだ。これまで「e:HEV」(559.9万円)のみの1グレードだったアコードに新グレード(599.94万円)が追加となった。

  • ホンダ「アコード」の新グレード

    新グレードは従来型比で40万円アップの599.94万円

従来からアコードは「Honda SENSING 360」という運転支援システムを搭載していた。新グレードの「Honda SENSING 360+」には、ハンズオフ機能付高度車線内運転支援機能、レコメンド型車線変更支援機能、カーブ路外逸脱早期警報、降車時車両接近警報、ドライバー異常時対応システムといった機能が追加となっている。

ホンダが「360+」搭載車を日本で発売するのは今回が初めて。中国でも同システムを積んだクルマを販売しているそうだが、彼の地では法規的にハンズオフ運転が不可となっているらしい。なので、360+のハンズオフ運転が使えるのは現時点で日本のみ、ということになる。

ちなみにホンダは以前、「レジェンド」というクルマで自動運転レベル3相当のシステム「Honda SENSING Elite」を採用したことがある。こちらはハンズオフどころかアイズオフまで可能な技術だったのだが、同システムを積んだレジェンドはリース販売のみだった。今回のアコード新グレードは、ホンダの量販車としてハンズオフ運転が可能な初のクルマ、という位置づけでもある。

楽しみ半分、不安半分でアコード新グレードの試乗を行ったのは、静岡県の御殿場市だ。御殿場インターチェンジ(IC)から東名高速道路に入って沼津で折り返すというコースだった。当日の御殿場は大雨。小粒だがひっきりなしに振る雨のせいで、アコードのワイパーはフル稼働状態だ。けっこう霧がかったりもしていて、センサーのほかにカメラも使う高度運転支援システムにとっては最悪のコンディションといえる。

  • ホンダ「アコード」の新グレード

    天気は最悪。ハンズオフ運転は可能なのか…

ハンズオフ運転体験記

東名高速に入ってACCをオンにすると、メーター内の表示が緑色に変わり、システムが稼働したことがわかる。それからほんの数秒で表示が水色に変わった。もうハンズオフの準備ができたというのだ。早すぎる。ちょっと拍子抜けがするほどだ。

  • ホンダ「アコード」の新グレード
  • ホンダ「アコード」の新グレード
  • メーターやステアリングの一部が水色に変わるとハンズオフ運転が始まっている

「ホントかな?」と思いつつハンドルから手を離すと、アコードは車線の真ん中をビシッと走り続ける。ACC状態なのでアクセルは踏んでいない。ただただ椅子に座っているだけという状態に入った。御殿場~沼津間にはそれほど急なカーブがない。ハンドルも加減速もクルマに任せて、座ったままで移動し続けた。手持無沙汰な感じがするほど楽なクルマ移動だ。

途中でトンネルに入っても、ハンズオフ状態は解除にならない。しっかりと前を向いて、クルマの周囲の安全に気を配る以外には、本当に何もすることがない。

  • ホンダ「アコード」の新グレード
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  • ホンダ「アコード」の新グレード

    「アコード」はホンダの高級セダンだけあって快適そのもの

前方をこちらよりもスピードの遅いクルマが走っている場面に出くわすと、「レコメンド型車線変更支援機能」が作動。「よかったら、前のクルマを追い越しましょうか?」というシステムからの問いかけだ。ステアリングの右スポーク右下にあるボタンを押すとハンズオフ状態が解除に。ステアリングを把持していると、クルマが勝手にウインカーを出し、しずしずと右側の車線に移動して、ACCの設定速度を守りつつ追い越しを完遂してのけた。ちなみに、ハンズオフのまま車線変更をすることも技術的には可能だそうだが、安全面などに考慮して、360+には同機能を実装していないそうだ。

そろそろ高速道路を降りる予定の沼津長泉ICが近づいてきた。そう思っていると再び「レコメンド型車線変更支援機能」が作動。今度は「そろそろ降りる予定のICですが、高速道路からの退出操作を肩代わりしましょうか?」という提案である。せっかくだからと前出のボタンを押すと、今度は左にウインカーを出し、ごくごく自然に高速道路の出口に向かってくれた。その際、急な減速はせず、かといって超高速で出口のカーブに向かうこともなく、ググっと減速しながらこちらの操作を待つという感じで、安心感は抜群だった。高速道路から降りたら運転は手動で行わなければならないわけだが、システムから人間への運転の受け渡しがスムーズな印象だ。

  • ホンダ「アコード」の新グレード

    「レコメンド型車線変更支援機能」が作動したら、右スポーク右下のボタンを押せば自動で前走車を追い越したり、高速道路から退出したりしてくれる

なぜクルマが乗っている人の降りたいICを把握しているのかというと、360+がナビと連動しているからだ。なので、同機能はナビに目的地を入れている場合にのみ作動する。

感心したのは、高速を降りる際に「レコメンド型車線変更支援機能」の作動を提案するタイミングだ。3車線の高速道路の真ん中を走っている際は出口の2kmくらい手前で同機能の使用を提案してきたのだが、左端を走っている際は提案のタイミングが出口の600mくらい手前に変わった。この感覚、自分で(手動で)運転して高速道路を走っているときと似ている。高速道路の出口が近づいてきたときに、もし別の車線にいたら、早めに左端に移動しておきたいという気持ちになる。そんな人情がわかっているかのような360+の気配りが嬉しかった。

  • ホンダ「アコード」の新グレード

    「360+」はクルマが搭載するカメラ、センサー類に加えて、高速道路の「高精度地図」、マルチGNSSアンテナ(GNSSはGPSの進化版みたいなもの)などを駆使するシステムだ。高精度地図があり、GNSSで自車位置を正確に把握し、センサー・カメラで周囲をしっかりと確認できて初めて、高度な運転支援システムの使用が可能になる。ハンズオフ状態のとき、隣の車線を走る大型車がこちらに寄ってくると、走る位置を車線の反対側に勝手にオフセットしてくれるという機能まで付いている

40万円の追加出費は安いのか高いのか

アコードはハイブリッド車であり高級セダンでもあるので、車内は静かだし乗り心地は快適だ。長距離移動が楽になるハンズオフ運転は、このクルマのキャラによくマッチしていると感じた。

ところで、普通のアコードと比べると360+付き新グレードは40万円の価格アップになるわけだが、これは安いのか高いのか。

例えばガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車を比べるとか、純粋なエンジン車、ハイブリッド車、電気自動車(EV)を並べて比較するとかいう場合であれば、燃料代(電気代)や走る距離をうまく「かけ算」することにより「元が取れるかどうか」をはじき出すことができるはずだが、360+の有無で考える場合は、数値化できない価値の比較になるので計算が困難だ。体験した身からすれば、長距離移動が多い人には360+を勧めたいところだが、普通のACCでも十分に楽なので、こればかりは乗り比べてご判断をいただくしかない。360+は「楽」なだけでなく「安全」なシステムでもある……こう考えることができれば、40万円のプラスが安いと思えるかもしれない。

ホンダとしては360+搭載車のラインアップを拡充していきたいという思いらしいが、どこまで広がるかは未知数だし、聞いても教えてもらえなかった。どうしても価格アップになるので、それなりに高価なクルマに採用を広げる手はありそうだが、軽自動車にも付けるとなると大変だ。そもそも、軽自動車のように規格のギリギリを狙ったクルマになると、センサー類を取り付ける場所を確保することも難しいという。「シビック」「ZR-V」「オデッセイ」「ステップワゴン」に360+搭載モデルが登場するのは何となく納得できるが、「ヴェゼル」「フリード」にも付けられるのかどうなのか……そのあたりが分岐点になりそうな気がする。

もうひとつ、ホンダに聞いて興味深かったのは、360+を追加する際の価格アップ幅が一律で40万円になるとは限らない、という話だ。アコードにはもともと「360」が付いている。それを「360+」にアップグレードする際には、もともとの部品を共用できる部分がある。つまり、ゼロから360+を取り付ける場合には、もっと高くなる可能性があるのだ。

一方で、今回の新グレードには、360+のほかにも追加となったものがある。例えば外観のブラック加飾(ホイールなど)や、車内の静粛性を高める「アクティブノイズコントロール」などだ。これらをひっくるめて40万円のプラスなので、360+単体であれば、もっと安く済むのかもしれない。

それらを差し引きして、結局のところ360+単体の価格はいくらなのかという核心に迫ることはできなかったのだが、とにもかくにも、360+の採用が広がっていけば、システム自体の価格は下がっていくものと思われる。高い部品でも一度にたくさん発注すれば安く買えるはずだし、高いシステムであっても生産量が増えれば安く作れるはずだからだ。360+の有無を選べる車種(選択肢)が増えれば、ホンダ車のラインアップがより魅力的になるのは間違いない。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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