JCBが、クレジットカードのプレミアムサービスを刷新して、サービスを拡充している。順次リニューアルをしている最中で、会員制ラウンジやグルメサービスなど、「特別な体験」の提供を重視しているのが特徴だ。
JCBのプレミアムサービスは何を目指すのか、同社の担当者に話を聞いた。
刷新されたプレミアムサービスの内容
JCBはプレミアムカード会員向けに様々なサービスを提供している。これまでも、空港ラウンジの利用、プライオリティ・パス、宿泊施設や飲食店の優待サービス、会員限定キャンペーンへの応募、コンシェルジュサービスなどといったサービスが提供されてきた。
対象となるのは、JCBゴールド、JCBゴールド ザ・プレミア、JCBプラチナ、JCB ザ・クラスのカード。いずれも年会費が発生するカードで、特にゴールド ザ・プレミア、ザ・クラスは完全招待制で、優待サービスもより強化されている。
こうしたサービスについて、JCBは今年に入って順次リニューアルを行っている。プレミアムカードが対象であることは変わらない。内容としては、グルメ優待として「JCB スター・ダイニング by OMAKASE」、東京・銀座のラウンジ「THE GINZA LOUNGE(MATSUYA GINZA JCB)」、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)貸し切り「JCBプレミアムナイト2025」などのメニューが用意された。
銀座・松屋のラウンジはザ・クラス会員全員と、プラチナ会員のうち年間対象利用合計金額が500万円以上などといった条件があり、USJのプレミアムナイト2025はプレミアムカード会員向け。USJのラウンジは、ザ・クラス会員、プラチナ会員限定など、サービス内容に違いはある。
JCBでは毎年ユーザーアンケートをしているそうで、その中から重要なキーワードを抽出して、それを踏まえてサービスを検討しているという。そうした声の中では、グルメ、トラベル、エンターテインメントに興味を持つ人が多かった。そこで、「お得さと特別感という2つの価値観をベースに、要素を掛け合わせてプレミアムサービスを設計した」と岡田氏。ザ・クラスやプラチナでは特別感をさらに重視したという。
ザ・クラス会員向けの定点アンケートでは、年1回のカタログギフトサービスについての感想で、「希少なもの、高価なものが欲しいという声よりも、圧倒的に特別な体験がいいという声が多い」(卯津羅氏)。
このあたりはカード保有における価値観の違いが現れているそうで、年会費無料の一般カードユーザーはお得さを、ザ・クラスになると特別な体験を望むようになるという違いがあるそうだ。
こうしたことから、同じプレミアムサービスでも、よりお得さを前に出したもの、特別感を出したものといった具合に、券種ごとにグラデーションを付けながらサービス設計をしているという。
さらに希少性の高い特別な体験を提供する「Special Offer」では、予約困難なレストランでの貸し切りイベントや会員制ゴルフ場でのコンペ、普段はなかなか予約ができない旅の手配などを提供。「キーワードは特別感」(岡田氏)で、年間の利用額上位の方に優先的に提供する形にした。
Special Offerは専用サイトが用意されていて、自分が対象かどうかはアプリ上にインビテーションが表示されているかどうかで分かる。ただし、「招待条件は一切非公開」(同)だ。これはコンシェルジュサービスとも異なり、例えばコンシェルジュでも予約できないようなレストランの貸し切りや、一見お断りのゴルフ場のコンペなども用意されるのだという。
さらにザ・クラスには年に一度、厳選された商品を届ける「ザ・クラス メンバーズ・セレクション」が用意されている。ディズニーシーの貸し切りを始め、「特別な体験を入れることで世界観を作っている」(岡田氏)という。USJの貸し切りでは、メンバーズ・セレクションとしてスーパー・ニンテンドー・ワールドへの入場が確約されるといった特典もある。このあたりは、招待制ならではの特別なカードということを意識したものだという。
ユーザーからは、「サービスが使い切れないという声もあった」(海本氏)。こうしたことから、単にサービスを多く用意するのではなく、特別感のあるサービスを用意して新たな世界観の構築を狙った。
リニューアルの背景と今後の展望
こうしたリニューアルを進めている背景について、岡田氏は「ゴールド以上の入会者で30代以下が半数を占めるようになっている」という現状を指摘する。20~30代は一般カードからのアップグレード意向が高く、年間利用額も高い金額になっており、「自分の価値観にあったものや体験に関しては惜しみなく対価を支払う」という傾向があるという。
かといって、若者だけを意識しているのではなく、ユーザーテストを行ったところ「求められるサービスのカテゴリに大きな違いはなかった」そうだ。年齢層だけを見るのではなく、現状のユーザーの意識を踏まえて、サービス・商品価値の向上を目指したのが、今回のリニューアルだと岡田氏は説明する。
卯津羅氏も、「お得なサービスを受けたいという意向もあるが、日常とは異なる特別な体験をしたい、ミシュランの星付き店や予約困難店で体験できるサービスを得たいという声」があると説明する。
「今までのユーザーも大切にしつつ、プレミアムカードで特別な体験ができるという世界観を提供したい」。岡田氏はそう話す。そのため、これまで利用率が低かったサービスを改廃し、「今求められているサービスに切り替えて整理した」そうだ。
JCBは、「地方ユーザーの割合も多い」(海本氏)ことから、都市圏だけでなく地方の有名店などとも連携して特別な体験を提供していく。
とはいえ、今年はこのプレミアムサービスの「リニューアル元年」。これまでとは異なるサービスもあるため、少しずつ提供して反応を見ながら、どういった条件が適正かなどを、1年をかけて検討していきたいと岡田氏。基本的には上位クラスの、利用金額の多いユーザーから選択できるという方針ながら、それ以外の条件も検討していく考え。
ちなみに、4~6月におけるSpecial Offerの利用状況は「満員御礼」(岡田氏)だという。情報に敏感な人もいるそうで、情報が公開されてすぐ申し込む人も多いそうだ。最低でも、1カ月に2回のOfferを提供していきたいという。
もちろん、「まだ登場してきていないカテゴリの商品があるので、第3弾で終わりはない」と岡田氏。今後、ポイント制度のリニューアルのほか、日本国内の有名なお祭りや花火大会での特別観覧席提供、予約困難な観光列車貸切イベントなども検討しているという。 お得さと使い勝手の良さも提供してさらなる利用を促し、その利用に対しては特別な体験を提供することでメリットを提供する、そんな好循環の実現を目指す。
体験価値を重視するJCBプレミアム会員は、店舗側からも好印象を持たれるそうで、パートナー企業との良好な関係性も高めながら、魅力的な体験価値を提供していくことがJCBの目標だ。