2025年4月に日産自動車の社長に就任したイヴァン・エスピノーサ氏は5月13日、横浜本社で2024年度(2025年3月期)連結決算発表会見に臨んだ。前期は大幅な赤字転落となり、ホンダとの統合も“破談”となった今、日産のトップは復活に向けて何を語ったのか。
純損失が6,700億円超に
ホンダとの統合破談と大幅な赤字転落から実質的な解任となった内田誠前社長の後任として白羽の矢が立ったのは、商品企画畑出身のエスピノーサ氏だった。今回の決算では、エスピノーサ体制の日産が再生へのさらなる構造改革に踏み込むかどうかに注目が集まっていた。
会見で打ち出した更なるリストラ策について同氏は、「日産は深刻な状況にある。痛みを伴う困難な決定だが、業績回復は急務だ」と危機感を口にした。
日産の2024年度(2025年3月期)連結決算は工場の稼働率低下に伴う資産価値の見直しによる減損処理とリストラ費用を積み上げて計上した結果、当期純損失が6,709億円まで拡大した。前の期(2023年度)は当期純利益4,266億円を計上していたが、2024年度中間期の時点で日産は、すでに赤字に転落していた。2024年度通期の従来予想は800億円の赤字を見込んでいたが、赤字幅・額がどれだけ膨らむかは焦点のひとつとなっていた。これにより年間配当はゼロとなり、4年ぶりの無配に転落する。
いずれにしても、最終赤字6,709億円は、かつてのルノーによる日産救済時(2000年3月期)の6,834億円に匹敵する規模だ。
カルロス・ゴーンの日産再生は再現可能か
エスピノーサ社長率いる日産は、新たな再建計画「Re:Nissan」を発表した。国内外計17カ所の完成車工場のうち7工場を閉鎖し、世界従業員の15%となる2万人の削減にも踏み切る。これはいわゆる「大規模リストラ」であり、「日産存続のため、迅速な自己改善が求められる」(エスピノーサ社長)との考えからの大きな決断だ。
また、日産の2025年3月期の自動車事業の純現金収支は2,428億円のマイナスとなった。ネットキャッシュは2025年3月末で1兆4,984億円あるものの、今期に自動車事業で5,800億円規模の社債の償還を迎えることにより、手元資金を厚くし、運転資金を確保する必要にも迫られている。
日産は今期業績見通しについて、売上高は前期並みの12兆5,000億円を見込むが、トランプ関税の影響から不確実性が高まったとして利益予想を未定とした。トランプ関税の影響については「最大で4,500億円を見込む」としているが、窮地の日産にとって北米は全体の7割程度の利益比率であるだけに、関税が大きな重荷になる。
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中国で開発・生産するプラグインハイブリッドの新型ピックアップトラック「フロンティアプロ」(画像)と新型EVセダン「N7」については、発表以来「海外からの反響が大きい」(エスピノーサ)とのこと。中国から海外への輸出についても「早期に加速化」したいと意欲を示した
「この2025年度は日産にとって過渡期であり、決断に迫られる」とエスピノーサ社長。先の北九州市のEV電池工場計画断念など、早くもリストラに着手しているケースもあるが、2027年3月期(2026年度)の黒字転換を目指す今回の大リストラ再建計画は、かつてカルロス・ゴーン氏が成し遂げた「リバイバルプラン」による早期再建の再来となりうるのか。
日産は世界地域ごとのパートナーシップの活用と商品企画力の強化に力を入れていく。ルノー・三菱自動車工業との連動に加えて、ホンダとの協業を検討していることにも注目だ。自力再生と協業再生に向けて、日産が岐路を迎えている。