この5代目マークⅡは茨城トヨペットがレストアした個体だ。レストアでは具体的に何をどうしたのか、担当者に話を聞いた。
5代目「マークⅡ」ってどんなクルマ?
5代目マークⅡのトップモデルは1G-GTEU型2.0L直列6気筒ツインターボエンジンを搭載する「マークⅡ GTツインターボ」(GX71型)だ。最高出力185PS、最大トルク24.0kgを発生する「ツインカム・ツインターボ」というエンジン形式は日本初だった。
茨城トヨペットが展示していたのがまさにこのモデルだ。1988年(昭和63年)式の4ドアハードトップモデルである(ちなみに、他にはセダンとワゴンモデルがあった)。キャッチコピーは「美しき伝統」で、全長4,690mm、全幅1,690mm、全高1,385mm、ホイールベース2,660mmの各部が四角いボディは当時の“ハイソカー”らしく真っ白に輝いている。「クリスタルピラー」と呼ばれたブラックアウト樹脂のCピラーの雰囲気も往時を偲ばせる。
なぜ5代目「マークⅡ」をレストアした?
なぜマークⅡをレストアしたのか。同社SIP推進室の寺坂修太郎課長はこう語る。
「『お客様と一生、笑顔のお付き合い』という弊社の企業理念を実現するためには、新車を販売するだけでなく、大事に乗り続けていただくことも大事です。それを実現するディーラーの業務として、古い車をきちんと扱えるヒトを育てたいんです。その道筋を付けるために始めたのが、今回のレストアです。社内にはこの年代のモデルを扱った経験があるメンバーがまだ残っているので、その知恵を集めて若いメカニックに伝えよう、できるクルマから始めようということで選んだのが、1988年式のマークⅡでした」
作業はボディの内外装を全て外してバラバラにするところから始まった。取り外した部品を洗浄し、事故で修復した部分のパテ割れやサビの補修、バックパネル部分の欠損部分の再生などを実施。リアのスピーカーボードは、カタログの写真をもとに素材を選定して純正の見た目に近づけた。ルーフパネルは溶接で歪まないよう、腐食補修の範囲を最小限に抑えて仕上げた。
ベテランの指導のもと、若手エンジニアが仕上げたソリッドカラーの全塗装も含め、作業の種類は「数え上げたらキリがない」という。新品パーツとして出てくるものはほとんどなく、やっと見つけたのはボンネットダンパーだけだったそうだ。
今回の作業を通して、若手が「挑戦して自分の手でやり遂げた」という達成感を味わうことができ、それぞれのモチベーションがアップしたと寺坂さん。社員の愛車展示会なども行われ、新たな“コミュニティ”も広がったのだとか。
このクルマ、「エンジン、トランスミッション、デフ、足回りなどはまだ手を付けていないので、若いメカニックと一緒に直して行けたらいいなと思っています」とのこと。整備士不足が叫ばれて久しい自動車業界だが、こんな会社に入れば“楽しい仕事場”を見つけることができそうだ。