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「アウトランダーPHEV」は三菱自動車工業の屋台骨となっているフラッグシップSUV。PHEVの分野では草分け的な存在だ。そんなアウトランダーのマイナーチェンジモデル(改良型)が2024年10月31日に発売となったので、試乗して完成度を確かめてきた。

( Car )

三菱「アウトランダーPHEV」は歴代最高の完成度? 改良モデルに試乗

JAN. 17, 2025 08:00 Updated JAN. 17, 2025 19:28
Text : 原アキラ
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「アウトランダーPHEV」は三菱自動車工業の屋台骨となっているフラッグシップSUV。アウトランダーのプラグインハイブリッド車(PHEV)は2013年~2021年の「GG3W型」(アウトランダーとしては2代目)、2022年~2024年の「GN0W型」(同3代目)と続いた長い歴史を持つ。PHEVの分野では草分け的な存在で、今や“PHEVといえばアウトランダー”と言われるほどだ。今回は2024年10月31日に発売となったマイナーチェンジモデル(改良型)に試乗してきた。

  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル

    三菱自動車「アウトランダーPHEV」のマイナーチェンジモデルに試乗!

マイナーチェンジの狙いは?

今回のマイナーチェンジでは質感の向上に力を入れた。価格的に上位セグメントや欧州プレミアムブランド(メルセデス・ベンツやBMW)と比較検討されることが多いことから、さらなる質感アップを要求する声が高まっていたそうだ。

アウトランダーは今後、欧州でも販売する予定。そのため、高速走行性能と(特にEVとしての)航続距離を向上させることも喫緊の課題となっていた。今回のマイチェンではこのあたりにも手を加えた。

  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル
  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル
  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル
  • 「アウトランダーPHEV」改良モデルのグレード展開は「M」(5人乗り/526.35万円)、「G」(5人乗り/587.95万円、7人乗り/597.08万円)、「P」(5人乗り/631.4万円、7人乗り/640.53万円)、「P Executive Package」(5人乗り/659.45万円、7人乗り/668.58万円)。令和5年度「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」の対象となっており、購入時には55万円の補助金が受けられる。写真は試乗した「P Executive Package」

エクステリアは最小限、インテリアは大胆に改良

「威風堂々」をテーマとするアウトランダーのエクステリアは従来から好評だったので、変更は最小限にとどめた。具体的にはフロントグリルの平面化やチタニウムグレーの前後スキッドプレート装着、20インチホイールのデザイン変更などだ。

  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル
  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル
  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル
  • エクステリアの変更は最小限にとどめた

一方、3代目アウトランダー登場時に一気にグレードアップした内装の質感は、さらに向上している。特に最上級グレード「P Executive Package」が採用しているベンチレーション付きセミアニリンレザーシートは、見た目も肌触りも乗り心地も文句なし。グラフィックを一新した12.3インチセンターディスプレイやフレームレスデジタルミラー、アルミペダルなどの採用も相まって、700万円前後のクルマの仕上がりとしては及第点以上といっていい。

  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル
  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル
  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル
  • インテリアは質感が大幅に向上。特にシートの完成度は文句なしだ

さらに追加要因として、楽器メーカーのヤマハとタッグを組んで開発したオーディオシステムを搭載している。上位モデルの「ダイナミック・サウンド・ヤマハ・アルティメット」はデュアルアンプ&センター、前後ドア、ラゲッジサブウーファーなど計12スピーカーの豪華版だ。

  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル
  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル
  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル
  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル
  • ヤマハのオーディオシステムを全グレード標準装備。「プレミアム」と「アルティメット」の2種類あり、最上級グレード「P Executive Package」(写真)ではアルティメットが標準装備となる

高級車にプレミアムなオーディオを搭載するのは世の常で、改良前の従来型はBOSEのシステムを搭載していたが、今回は「Made in Japanのヤマハでそろえて欧州のオーナーを驚かせよう」という意図があったのかも。わざわざ山梨に会場まで用意して発売前の試聴会を行ったほどの自信作であり、その原音再生能力は、停車中だけでなく走行中でも劣化しないような設定がなされている。

電動性能は歴代最高

電動性能は歴代最高のレベルまで進化している。バッテリー容量は10%アップ(20kWh→22.7kWh)し、EV航続距離は100km超まで伸びた。バッテリー出力アップ(単位時間あたり出力60%アップ)によるエンジン始動頻度の低下、トータルシステム出力20%アップによる0-100km/h加速タイム2.0秒の短縮、出力アップによるS-AWC(スーパーオールホイールコントロール)制御やシャシーの見直しなど、性能が向上した部分は多岐にわたる。

  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル

    神奈川県・大磯をベースに西湘バイパスや箱根ターンパイクを走ってみた

これらの改善点を体感すべく大磯から西湘バイパスに侵入してみる。

流れに乗って巡航しているだけだと、スーッと流れるように走ってくれる。確かに、エンジンが全くかからない。このあたりは路面がちょっと荒れているのだけれど、直進性がよく、遮音が徹底されているので、ロードノイズや風切り音は極小。聞こえるのはEV特有の「キーン」というモスキート音だけだ。

このままだとバッテリー残量がなくなるまでずっとモーターだけで走り切ってしまうので、箱根ターンパイクへとクルマを向けてみる。

  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル

    箱根ターンパイクのワインディングで実力を試した

料金所を過ぎてアクセルを踏みつけると、わずかにステアリングに振動が伝わってきて、ツインモーターの最高出力85kW(前)/100kW(後)、最大トルク255Nm(前)/195Nm(後)の電気の力と、98kW/195Nmの2.4L直列4気筒エンジンの共演がやっと始まったのがわかる。聞こえてくるエンジン音は耳障りのない最小限のレベルに抑えられているのだが、結構な上り坂をぐいぐいと加速していくし、そこそこのスピードで駆け抜けるワインディングを誠に気持ちよくクリアしていく。

さすがに元気よく走りすぎると、総重量2トン超えの巨体ゆえ、タイトコーナーでフロントが巻き込むようなちょっとしたクセが出てしまうのは唯一ともいえる玉にキズだが、すぐにVSC(横滑り防止)が介入してグリップを確保してくれる。上り下りを繰り返してもバッテリーの性能が全く低下しないのは、しっかりとした熱対策のおかげだろう。特に、コーナーを抜けた後の立ち上がりなどにみられる厚みのある中間加速に、改良モデルの優位性が表れていると感じた。

  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル

    厚みのある中間加速から改良モデルの実力が感じられた

ドライブモードは7つもある。「ノーマル」「エコ」「パワー」「グラベル」「スノー」「マッド」「ターマック」の各モードは、S-AWCと上手に協調しているそうだ。ツインモーター4WDの前後駆動力配分は、メカニカルシステムだったあの「ランサーエボリューション」の開発時期にすでに導き出されていたというから、三菱ファンのオーナーさんには大いに「刺さる」ことだろう。試乗ではほとんどの区間をターマックで走った。

  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル
  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル
  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル
  • ドライブモードはセンターコンソールのダイヤルで変更可能

開発者に聞く!

開発を担当した三菱自動車の五味淳史チーフプロダクトスペシャリストは、「アウトランダーは技術てんこ盛りのクルマなので、そのウンチクを語りたくて買ってくれている方も多いと思います。その結果として、最上位モデルが販売の半分以上を占めているんです。オーナーさんはクルマ好きの方が多く、他メーカーのPHEVとの違いについて、我々より長くお話ししてくれる方がいらっしゃるほどです」という。

「EVは踊り場」と言われる今、「(電動の)クルマを購入する際にはPHEVが最適解なのでは?」と考える人は増えている様子。そんな追い風を受け、アウトランダーの販売もなかなか好調なようだ。

アウトランダーPHEVのライバルとしては、冒頭に述べた欧州勢のほか、PHEVとしてはトヨタ自動車の「RAV4」(こちらの方が直接のライバルとなる)や新たに登場した「クラウン(スポーツ)」などが考えられる。

五味さん自身は現行モデルが出てすぐにマイカーとして購入したというほどアウトランダーに惚れ込んでいるのだが、間もなく1回目の車検を迎える時期なのだとか。最近では社内から「当然、マイチェンモデルに買い替えるんですよね?」とちょっと嬉しい(?)プレッシャーをかけられているそうだ。

  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」改良モデル
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