スイスの時計メーカーの中でも、「IWC」はドイツ語圏のシャフハウゼンに本社を構える稀有なブランドです。そんなIWCには、いくつもの傑作時計があります。中でも、2023年に登場した「インヂュニア オートマチック40」は大きな話題となりました。発売当初はなかなか買えないモデルでしたが、約1年が経過して状況は変わったのでしょうか?
インヂュニアとは?
IWCは1868年にシャフハウゼンでアメリカ人が創業したスイスの時計メーカーです。派手な装飾がなく、非常にシンプルでありながら高い技術力で組み上げられたタイムピースの品質は折り紙付きです。
そんなIWCの「インヂュニア」(Ingenieur) は、さまざまな磁気に囲まれながら作業するエンジニア(例えば放射線技師など)のために、正確で完璧に保護された時計を製作したいという想いを背景として、1955年に登場した腕時計です。
1976年になると、宝石デザイナーだったジェラルド・ジェンタ氏にインヂュニアの新しいデザインを依頼します。その「インヂュニア SL」は、今でも伝説的なモデルとして語り継がれています。IWCには、ジェンタ氏がデザインしたかつてのインヂュニアを現代に復活させてほしいとの声が寄せられたといいます。
そうした要望から2023年に復活したのが、「インヂュニア オートマチック40」でした。皆が待ち焦がれていたわけですから、話題にならないわけがありません。
インヂュニア オートマチック40はケースとベルトが一体化した、いわゆる「ラグスポ」のようなデザインが最大の特徴です。ステンレススチールのケースに、ベゼルに打ち込まれた5つのビスが見えます。高い耐磁性と日常生活で困らない程度の防水性能を備えています。
納品待ちの間に価格改定
インヂュニアは元祖ともいえる「ブラック」のほか、定番カラーの「シルバーメッキ」、汎用性の高い「ブルー」(2024年新色)、見る角度によってはブルーにも見える深いグリーンの「アクア」、チタン素材の「グレー」の5色から選べます。その中でも「アクア」は、これまでにないカラーとあって発表直後から大人気。正規販売店には時計ファンが殺到し、内金(商品代金の一部を事前に支払う)を入れなければ予約できなかったほどでした。「納品までに数年かかる」と言われたものです。
さらに問題となったのが、正規販売店の価格改定です。
昨今、物価が上がりいろいろなモノの値段が高騰しています。時計も例外ではなく、ブランドによっては年に数回、モデルによっては数万円から数十万円も定価が上がったものがありました。2023年当初、インヂュニアの定価は156万7,500円でしたが、2024年12月時点では177万6,500円(20万9,000円もアップ!)にまで跳ね上がっています。
予約している人の間では、納品されるまでに200万円を超えてしまうのではないかという危機感が広がり、定価より高くてもいいから二次流通市場で買ってしまおうという動きが増えました。結果として、正規販売店はおろか、二次流通市場でもなかなか買えない事態に陥ってしまったのです。
2024年末時点では正規販売店の供給も安定してきており、二次流通市場で定価を上回ることは少なくなってきています。とはいえ、一部の店舗ではすぐに買えるようになるまでに、まだ時間がかかっているようです。購入したいなら急いだほうがよさそうですね。