クラシック、スタイリッシュ、チャーミング。いずれもイギリス生まれのコンパクトカー「ミニ」(MINI)を形容する際の常套句だ。しかし、実際に乗ってみると意外にも重厚感があり、そのギャップにまた心を掴まれるのである。
……と偉そうに語っているが、実はつい最近、最新の「ミニ クーパー」に試乗して気付かされたのだ。ミニってどうしてもその可愛らしい外観に目を奪われがちだけど、実際にはかなり質実剛健なんだ、と。
ということで今回は、ミニ クーパーのEV(電気自動車)モデルに乗ってみた率直な感想をお伝えさせていただきたい。
あえてEVらしさをアピールしない
先日、輸入車における最優秀賞「2024-2025 インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」にも輝いたミニ クーパー。
「アウトドアアクティビティでも使える大きなクルマ」を求めて彷徨う身ではあるが、実はミニについてはかなり以前から興味を抱いていた。
もちろん、他にも素敵なコンパクトカーはたくさんある。だけど、時代を超越するクラシックでスマートなこのデザインはやっぱりオンリーワン。しかも、シルバーヘアの紳士からデジタルネイティブの女性まで、誰が乗ってもサマになるという稀有な個性を持つクルマでもある。
「いつかは乗ってみたいな」「2台目が買えるならミニがいい」と何度も夢想してきたが、実際に乗ってみると……思った以上にイイ!
ミニならではの丸くてクラシックなエクステリアはEVでも健在で、むしろ“電気自動車です感”をまったくアピールしないあたり、ファンの気持ちをよくわかっていらっしゃると嬉しくなる。そうそう、これがいいんです。このままがいいんです。
ボディとルーフのツートンカラーも美しいが、ドアを開けて中を見てみると、このビミョ~に生成りがかったホワイトのレザーシートにまず目が奪われる。凛として上品。ヘッドレストと一体型の形状もシャープで美しい。
個人的にはこの丸型ホーンもかなり好みで、ミニのロゴの美しさを一層際立てている気もする。「外装だけでなく、内装もテンションが上がる」。これはいいクルマの絶対条件だ。
小さいけれどライトなクルマじゃない
意外に思ったのが、ドアを閉めたときの“音”。チャーミングな見た目に反し、「バン!」と迫力のある低音を響かせる。コンパクトな見た目から、ついライトなクルマというイメージを持ちがちだが、当たり前ながら軽自動車ではないのだ。後述するが、この頼もしい重厚感は走行時にもまた別角度で体感することになる。
ミニといえば、この丸いモニターもアイコンのひとつだろう。ミニのインテリアはネットで何度となくブラウジングし、その都度「ああ、オシャレだな」「実物はすごく可愛いんだろうな」と想像を巡らしてきた。いざこうして生で見てみると思った以上に素敵で、所有欲、運転欲をグググッ! と高めてくれる。
しかも、この「EXPERIENCES」というスイッチを上下させると……。
「コア」「グリーン」「ゴーカート」「タイムレス」「ビビッド」といった全8種類のモードに切り替えることができる。
モードを切り替えることでメーターのデザインやナビのカラートーンがガラッと一変。まるで部屋を模様替えしたかのようなフレッシュな気持ちにしてくれる。しかも、走行中の加速音やアクセルペダル、ステアリングの特性まで同時に変化するという芸の細かさである。
このワクワク感はデカい。ガチで侮っちゃいけない。スマホの壁紙を変えるのに近いリフレッシュ効果なのだろうが、パネルがデカい分、その効能も比例して大きく感じられる。
他にも至るところがハイテクで、例えば「HEY MINI!」と呼びかければワンコのアバターがぴょこっと出現。指示どおりにナビなどを設定してくれるなど、あらゆるオーダーに答えてくれる。きっと、乗り続けていくことで愛着も増していくんだろうなあ。
一応、2列シートではあるものの、さすがに大人が後部座席に座ると圧迫感は否めない。でもこれは、多人数乗車が可能なSUVなど3列シート車の最後部も同じようなものだろう。「いざというときにしか使わない」と割り切ったほうが、気持ちよく付き合えるのかもしれない。
ラゲッジスペースもなかなかコンパクトである。しかし、2人以上は乗らないものとして後部座席を倒してみると……
おおっ、十分に広い。これなら相当量の荷物を積めそうだし、ソロキャンプや夫婦キャンプくらいなら全然イケるだろう。高いデザイン性、狭い道もクイックに動ける利便性、そして想像以上に実用性もありそうだ。ますます欲しくなってきた……!
細かくインテリアを見ていくと、ドアレバーやスピーカーなど、どれもがセンスにあふれ、ドライバーの気分を高めてくれるのだが、さすがに全てに触れるとなるとキリがないのでこのへんで割愛。どのパーツも形だけでなく、配色もめちゃくちゃいいんだよなあ。
デザインに関する話が長くなってしまったが、やっぱりそれだけ見た目は重要なのかも。エクステリアも、インテリアも。現代の新車で「カッコいいけど、乗り味が悪い」なんてそうそうないだろうし。
走ってみるとしっかりとした手ごたえ
では実際に走行してみたイメージはどうか。これも意外や意外、ハンドルは重めで思いのほかずっしりしていて安定感がある。ドアの開閉音でも感じたが、これだけのコンパクトカーなのに、愛車のジープ「ラングラー」に通じる重厚感があるのだ。
EVなのでガソリン車のような振動はないが、車体の小ささからか、ロードノイズは割と伝わってくる。EV特有の静粛性のおかげでプラマイゼロ、といったところか。むしろ個人的には、「最低でもこれくらいのノイズがないと運転している気がしないかも」と心地よく感じた次第である。
加速感もさすがEV。アクセルを踏めば踏んだだけクイックに加速してくれる。わざと急発進しようとしてもヒヤッとするような急加速にはならなかったので、そのあたりの力加減はちゃんと設計されているのだろう。いい意味でガソリン車感が残っている。その匙加減、好きです。
この丸型パネルは運転中も抜群の存在感を発揮する。視認性がよく、ナビを大画面で見られるほか、右左折などの際はAR表示でドライバーを案内。短時間の試乗ではポテンシャルを最大限に引き出せなかったが、残りの充電量や走行可能距離など、重要な情報が邪魔にならないよう各所に表示されており、かなりの利便性がうかがえた。
クラシックとハイテク。どちらの個性も損なわずに融合させたあたり、さすがはインポート・カー・オブ・ザ・イヤーの受賞車。ホント、このまま乗って帰りたい……。
一回のフル充電で446kmを走るそうだが、これが長いのか短いのかは一緒に生活しなければわからない。ただ、セカンドカーとしてであれば十分すぎるスペックだろうし、あまり長距離の旅行でもしない限り、困ることはないだろう。あとは充電環境か。
いろいろ迎える準備は必要だが、こんな子が自宅の駐車場に毎日停まっていたら……想像するだけでワクワクが止まらないっす!