相続などで土地を所有することになっても、特に使う予定がなければ売却しないと維持費が負担になってしまいます。しかし、土地の売却には税金がつきものです。査定を受けて500万円以下と評価された場合は、いくらの税金がかかるのでしょうか。手元に残る額によっては、使い道が変わってくるため正確に把握しておきたいものです。
そこでこの記事では、500万円以下で土地を売却した場合に税金をいくら支払うのか、また適用できる優遇措置について紹介していきます。何も知らないでいると、想定していたよりも手元にお金が残らないかもしれません。本記事を参考に、土地売却で損をしないようにしましょう。
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土地売却によって発生する税金の種類
土地を売却すると、利益や作成する書類で税金の支払いを求められます。納税しなかったり不足があったりすると、罰則があり損してしまいます。まずは、どのような種類の税金が発生するのかを見ていきましょう。
所得税
所得税は土地の売却で利益が出たときに発生する税金で、確定申告したときに納税します。土地の売却の利益は次の式で計算可能です。
- 取得費:購入代金、購入手数料、取得したときの登録免許税、不動取得税など
- 譲渡費用:仲介手数料、家がある土地での解体費用など
この利益に対して、所有期間に応じた税率がかけられます。5年以下の短期譲渡所得なら30%、5年超えの長期譲渡所得なら15%です。
格安で購入した土地を500万円で売却して300万円の利益が出た場合は、所得税だけで最大90万円も税金で取られてしまいます。損をしないためには優遇措置の適用が重要です。
住民税
住民税は、所得税と同様に土地の売却で出た利益に対してかけられ、1月1日に住民票がある自治体に納税します。税率は所有期間で変わり、5年以下で9%、5年超えで5%です。300万円の利益が出た場合は最大で27万円かかり、所得税と合わせると117万円と高額です。
納税は分割が可能で、給与所得がある人は確定申告した年の6月から、1年間にわたって毎月給料から引かれます。自営業の場合は、一括か年4回の分割のどちらかを選択可能です。
土地の売却で利益が出ても、お金を使い切ってしまうと納税が難しくなるため、事前に計算して必要になりそうな額は残しておきましょう。
不動産売却でかかる住民税について詳しく知りたい方は、解説したこちらの記事もおすすめです。
復興特別所得税
復興特別所得税とは、東日本大震災の復興財源確保のために生まれた税金で、2039年まで所得に対してかけられていて、給与所得からも天引きされています。土地の売却の場合は利益にかけられ、所得税額の2.1%を納税します。
所得税額で納税額が変わるため、こちらも土地の所有期間で納税額が変わり、利益に対して5年以下で0.63%、5年超えで0.315%の税率です。
所得税、住民税、復興特別所得税は、まとめて譲渡所得税と呼ばれています。
印紙税
印紙税とは経済的な取引をしたときに、領収書や契約書などで文章を作成すると発生する税金で、土地の売却であれば売買契約書の作成時に必要です。
契約書に記載する金額で印紙税額は変わり、次のようになっています。
契約書の金額 | 印紙税の額 | 軽減措置 |
10万円以下 | 0円 | 0円 |
10万円超え50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超え100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超え500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
2021年6月時点では、2022年3月31日までに作成された売買契約書であれば、軽減措置が自動的に適用されて納税額は半額です。納税方法は該当する額の収入印紙を購入し、売買契約書に貼り付けて消印するだけです。もし貼り忘れが発覚すると、罰金として納税額の3倍が課せられます。
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500万円以下で土地売却した際に受けられる優遇措置について
2022年度の税制改正で、500万円以下の土地の売却で使える新しい優遇措置が誕生しました。優遇措置を受けられると、控除額の分だけ利益を少なく見積もれるので節税できます。
ここでは制度のあらましや控除額、適用条件について解説していきます。自身が行う土地の売却で使えるのか、チェックしてみましょう。
低未利用土地として扱われる
新しい優遇措置は低未利用土地を対象としています。低未利用土地とは居住用の家が建てられていなかったり、土地活用で借地にしていなかったりして、近隣より利用頻度が低い土地のことです。
査定額が安い土地でも売却に手間はかかり、登記費用や仲介手数料が発生します。もし測量まで必要になると費用は数十万円かかってしまい、利益が出ても手元に現金はほとんど残らないでしょう。
手間をかけても利益が少なくないからと、低未利用土地が増えてしまうと有効な土地活用が難しくなるため、優遇制度により地域活性化や治安向上などを狙っています。
低未利用土地は税金の優遇措置が受けられる
一定の条件を満たした低未利用土地を売却すると、譲渡所得税に優遇措置で控除が受けられます。税金が課せられる利益は次の計算式で求められます。
控除額は最大100万円で、もし控除前の利益が100万円以下ならその額が上限です。5年を超えて所有している土地を売却し、控除前で100万円の利益が出ていた場合は、そのままでは所得税などで20万3,150円かかってしまいます。しかしこの制度を適用できると利益はそのまま残ります。
土地の査定価格が安すぎて売却するか悩んでいるなら、次で紹介する条件を満たしているか確認してみましょう。
優遇措置を受けるための条件
正規名称は「低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」と呼ばれるこの制度は、次の8つの条件を全て満たさなければ適用されません。
- 売却価格が500万円以下
- 売却する土地が都市計画区域内
- 市町村長によって土地が低未利用土地であることが確認済み
- 2022年12月31日までに売却
- 売却する年の1月1日に所得期間が5年超え
- 売却する相手が配偶者等の特別の関係がある者ではない
- 他の譲渡所得の特例を受けていない
- 売却後に土地が利用される
都市計画区域とは都市計画法によって定められ、都道府県知事が指定する地域の秩序ある整備を目的とした区分けの一つです。売却する土地が都市計画区域内なのかは、自治体の公式HPや都市計画課などで確認できます。
適用は2022年12月31日までですが、延長される可能性もあります。国税庁のHPなどで、最新の法令の内容を確認してみてください。
優遇措置を受ける際に必要なこと
最大で100万円の控除が受けられる優遇措置も、申請しなければ適用されません。また、条件を満たして土地を売却しても、申請を促す連絡はどこからも来ません。次で紹介することを必ず行い節税してください。
翌年に確定申告をする
500万円以下で条件を満たした土地を売却したら、優遇措置を受けるために、売却した翌年の2月15日から3月16日の間で確定申告しましょう。優遇措置が使えない売却でも、利益があれば確定申告は必須のため忘れないでください。
期間はあくまで翌年のため、1月中に売却が成約しても、その年に優遇措置を確定申告で申請できません。また、申告できる正確な日程は土日などの関係で、年によって若干前後します。新型コロナウィルスのように特別な事情があれば、期間が延長される可能性もあります。国税庁のHPや最寄りの税務署などで、正確な日付を確認しておきましょう。
さらに知識を深めたい方は、土地売却の確定申告や税金対策について、詳しく解説したこちらの記事もおすすめです。
他の課税所得への特例は受けない
土地の売却では、状況によって他にも節税できる特例や控除が用意されていますが、適用するためには500万円以下の優遇措置と同様に確定申告が必須です。これから行う売却がその他の適用条件を満たしていても、「低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」は併用を認めていません。どの制度を使えば一番お得になるのかを比較して考えましょう。
低未利用土地等確認書の交付申請方法について
売却する土地が低未利用土地であることを客観的に証明できなければ、最大で100万円の控除は受けられません。低未利用土地等確認書という書類で証明できますが、どのように取得したらよいのでしょう。
ここでは、取得するための必要書類や発行方法について解説していきます。
必要書類
低未利用土地等確認書を発行するためには、次の書類を用意してください。
- 土地の売買契約書の写し
- 土地の登記事項証明書
- 売却後に利用されたことが確認できる書類
- 空き家バンクへの登録が確認可能な書類・不動産会社作成した現況更地などの広告・電気や水道などの停止日がわかる書類のいずれか一つ
必要書類の中で利用が確認できる書類は、土地を購入してくれた人に頼まなければなりません。用意に時間がかかる可能性があるため、売買が成約した段階で依頼しておくことで、連絡も取りやすく収集しやすいでしょう。
各市町村の役場で発行
必要書類をそろえ終えたら、売却する土地がある自治体の役場に提出しますが、担当の課は自治体によって異なります。基本的に都市計画に関わる課が対応しているため、受付などで確認するとよいでしょう。
書類は提出すると返却されないため、念のためコピーをとっておくと安心です。問題なく手続きが進むと、2週間程度で低未利用土地等確認書が発行されます。運転免許証などの本人確認書類を持参して受け取りに行ってください。
優遇措置を受けるために必要な確定申告の流れ
優遇措置が適用できる条件を満たしていて、低未利用土地等確認書も発行したら、いよいよ確定申告の作成です。初めての人にとっては手間のかかる作業ですが、正しく納税するために一つずつこなしていきましょう。
必要書類を準備する
土地の売却で利益が出ていて、500万円以下の優遇措置を適用する場合は次のものを用意します。
- 確定申告書B様式
- 譲渡所得の内訳書
- 土地の売却が成約したときの売買契約書のコピー
- 支払った譲渡費用がわかる領収書などのコピー
- 土地を購入したときの売買契約書のコピー
- 土地の購入したときの経費がわかる領収書などのコピー
- 売却する土地の登記事項証明書
- 低未利用土地等確認書
- 印鑑
- 本人確認書類(マイナンバカードや運転免許証など)
確定申告書B様式や譲渡所得の内訳書は、確定申告の時期になると国税庁のHPからダウンロード可能です。紙で欲しい人は最寄りの税務署でも受け取れます。
マイナンバーカードについては、申請しても発行に1ヶ月程度かかるため、使う予定の人は余裕を持って申請しておきましょう。確定申告が始まってからでは、提出期限を過ぎてしまうので要注意です。
確定申告に必要な登記事項証明書について、詳しく知りたい人はこちらの記事もおすすめです。
提出書類の作成をする
入手した確定申告書B様式に住所や氏名および、用意した書類の数字を記入していきます。紙の確定申告書で手計算すると、書き間違いや計算ミスが起きる可能性があります。時期になると最新版が更新される国税庁の確定申告書作成コーナーや、有料・無料の確定申告ソフトを使うと、計算ミスがなくなり修正も簡単です。
自身で作成する時間が確保できそうになかったり、不安があったりする人は税理士に依頼しましょう。数万円かかりますが、必要書類の不足分なども教えてもらえて優遇措置の適用ミスもなくなるでしょう。
書類一式を提出する
作成できた確定申告書B様式や内訳書に、用意した書類を添付して期限内に提出しましょう。紙で作成した人は、郵送するか税務署の窓口に提出してください。郵送は期日の消印であれば有効です。
提出に手間をかけたくない人はe-Taxを利用しましょう。iPhoneやAndroid向けにe-Taxアプリがあり、スマホを使って気軽に作成可能です。添付書類はカメラやスキャナで電子化し、PDF形式に変換して提出します。メンテナンス時間以外は24時間提出可能のため、期限の当日に税務署が閉まってからでも間に合います。
土地売却の際に受けられるその他の優遇措置
低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除では、500万円以下で売却すると100万円までしか控除を受けられず、利益の額によっては控除を受けても譲渡所得税がかかります。そこで併用はできませんが、土地売却で使えるその他の優遇措置について解説していきます。
居住用財産の3,000万円特別控除
居住用とあるように、主に家が残っている状態で土地を売却するときに使う特別控除です。適用させるためには次の条件を満たさなければなりません。
- 現在住んでいるか、住まなくなった日から3年が経過する年の12月31日以内に売却
- 過去2年でこの特例を使っていない
- 売却先と自身が親族や内縁関係でない
家を解体して土地だけになっていても、取り壊しから1年以内に売却し、その間に駐車場経営などをしていなければ控除を受けられます。
控除額が3,000万円までと高額で、よほど家や土地の価値が高騰していない限りは利益を0円にできます。確定申告と同様の流れで、低未利用土地等確認書以外のものを用意して書類を提出しましょう。
相続した空き家の3,000万円特別控除
居住用財産の場合と同様の控除額ですが、適用させる条件は大きく異なります。
- 相続前は亡くなった人が住んでいた(他の人は住んでいない)
- 1981年5月31日以前に建てられた家
- 相続してから売却までに住んだり賃貸したりしていない
- 2023年5月31日までに売却する
- 相続してから3年経った年の12月31日までに売却する
- 売却価格は1億円以下
- 売却する家は現行の耐震基準に準拠
確定申告するためには、相続に関わるものや現状の耐震基準を証明するものなどが必要です。しかし書類の用意に手間はかかっても、最大3,000万円の控除は魅力的です。古い家を相続する人は築年数から確認してみましょう。
10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
土地を売却したときに、所有期間が5年を超えても合計で20.315%の税率が利益にかかります。しかしこの特例を使うと、税率を下げることが可能です。
土地売却の利益 | 税率 |
6,000万円以下の部分 | 14.21% |
6,000万円超えの部分 | 20.315% |
6,000万円以下の利益であれば、6.105%分だけ節税になります。適用できるかどうかは次の条件を確認してください。
- 住んでいる家を売却
- 住まなくなった日から3年を過ぎた年の12月31日までに売却
- 土地だけにしてから1年以内に売却し、借地などにしていない
- 売却する年の1月1日で所有期間が10年超え
- 過去2年でこの特例を使っていない
- その他の優遇措置と併用しない
- 売却先と自身が親族や内縁関係でない
確定申告では、譲渡所得の内訳書や記入した数字を証拠として領収書などを提出します。上記の居住用財産の特例と併用でき、土地が高額で売却できたときに有用です。
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
不動産を売却して利益が出ることは理想ですが、損失も十分にあり得ます。高齢化などで過疎化が進む地域では、高額な売却価格は期待できません。しかし損失が出ても節税できる制度は用意されています。
この制度では、売却による損失を給与所得などと合算して、トータルで支払う税金を節税できます。例えば年収600万円の人が、売却で200万円の損失を出して条件を満たしていると、その年の年収を400万円として次年度の税金が計算され、損失が大きく控除しきれない分は翌年以降3年は繰り越せます。
この特例を適用させるためには次の条件を満たさなければなりません。
- 売却で損失が出ている
- 住んでいる家を売却
- 住まなくなった日から3年を過ぎた年の12月31日までに売却
- 売却する年の1月1日で所収期間が5年超え
- 売却の前年1月1日から売却した翌年12月31日までに床面積50平米以上の家を購入
- 購入した年の12月31日までに新居で生活を始める見込み
- 住宅ローンが10年以上残っている
確定申告では、売却に関わるものだけでなく新居の売買契約書なども必要です。損失が出ても節税を諦めてはいけません。
不動産売却時に受けられる特別控除について、詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。
まとめ
土地の売却価格が500万円以下であっても、利益がある取引になると税金が課せられます。何も対策していないと利益の20%以上を税金で支払うことになり、手元に残るお金は減ってしまうでしょう。
しかし、確定申告によって適用可能な優遇措置は複数用意されています。利益次第では支払う税金を0円にできる可能性もあり、制度を利用しないことは節税するうえで大変もったいないです。紹介した制度の条件を確認し、最もお得なものを選んで確定申告を必ず行いましょう。
※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
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