ケース外で行える作業は前回までですべて終了している。ここからは、いよいよ各パーツをケースへ取り付け、ケースに入ったPCとして完成させていく作業になる。ステップごとに、徐々にPCが出来上がっている感覚がとても楽しい作業だ。
作業全般の注意点としては、安いケースでは金属の端の部分を折り返していなかったり、折り返していても中途半端なものがある。そのような場合には、ケース内に手を入れたときに怪我をすることもある。そのような事態を避けるためにも、狭いところには無理に手を入れたりせず、前回紹介したようなラジオペンチなどを活用し、くれぐれも安全に作業してほしい。
ケース側面カバーの取り外し
まずは、ケース内へパーツを取り付けられるように、ケースの側面カバーを取り外す作業を行う。今回利用するクーラーマスターのCenturion 590では、ローレットスクリューと呼ばれる手回し可能なネジが利用されている。この場合、よほどキツく締めない限り、ドライバーを利用することなくカバーを取り外すことができる。最近はこのタイプのネジを利用するケースが増えているが、安いケースを中心にドライバーを必要とすることも多い。
ちなみに、通常は両側面のカバーを取り外す必要があると考えておいてよいが、メンテナンス性の良さを売りとする製品には、向かって左側面のカバーのみを取り外すだけでOKという場合もある。このあたりは利用するケースによってまちまちなので、付属のマニュアル類などを参考に必要な作業を行うようにしたい。
ケース側面を固定するネジ。Ceturion 590は手回しが可能なネジだが、製品によってはドライバーを利用してネジを外す |
固定するネジを外したあと、スライドさせて側面カバーを取り外す。ここからパーツの取り付け作業がスタートする |
電源ユニットの取り付け
この先は順番にパーツを取り付けていくことになる。前回も少し触れたが、正確な順序というものはなく、最終的にすべてのパーツが正しく取り付けられるのであれば、どんな順序で作業しても構わない。ただ、マザーボードを最初に取り付けてしまうのだけはお勧めできない。というのは、マザーボードはPCパーツの中でも専有面積が大きいうえ、HDDや光学ドライブのケーブル、CPUクーラーなどで凹凸部分も多い。そのため、周りのパーツを取り付けるさいにジャマになることが多いからだ。さらにいえば、非常にデリケートなパーツということもあって、それを避けるために気をつかって作業効率も落ちてしまう。作業の流れとしては、マザーボード以外にケースに固定すべきパーツを先に取り付けたあとでマザーボードを装着し、拡張カードの装着や配線を行っていくとやりやすいだろう。
そこで、まず最初に電源ユニットを取り付けることにしたい。電源ユニットはケース上部に付けることが多かったが、最近では底面部に装着するタイプのケースが増えている。今回使用しているCeturion 590もこのタイプだ。もし上部に取り付ける場合は、ケースを寝かせて作業すると楽だろう。
Centurion 590はケース下部に電源を設置するタイプで、最近はこのような製品が増えている。ただ、ケース上部に電源を設置する製品もまだまだ多い |
電源のネジ留め箇所は4箇所。インチネジを使用して固定しよう。ケース上部に電源を取り付けるタイプでは、ケースを寝かせて作業すると安全だ |
ドライブ類の取り付け
続いては、光学ドライブの取り付けだ。これも使用するケースに依存するが、Centurion 590の場合はフロントパネルを取り外して作業する。パネルを取り外す必要がないケースも少なくないが、以前に比べるとこうしたタイプの製品は増えている。ちなみに、Centurion 590はフロントパネルがネジで固定されていないので、引き抜くだけで簡単に外すことができる。爪やネジによって固定されている場合は無理に引き抜くと破損する可能性もあるので、マニュアルを読んで慎重に作業されたい。
光学ドライブの装着は、フロント側からドライブを挿入し、ねじ穴の位置を合わせてネジで固定する流れになる。このあたりもCenturion 590は便利な作りになっていて、プラスチックの固定パーツによってドライバーを利用せずに固定ができるようになっている。ただ、こうした製品であっても、より強く固定するために、可能であればネジ留めしておくほうが安心感はある。なお、光学ドライブの固定にはミリネジが使用される。
Centurion 590では、ドライブを取り付けるさいにフロントパネルを取り外す必要がある。ケースによっては、この作業は不要だ |
多くのケースではフロントパネルのカバーが取り付けられている。光学ドライブを取り付ける位置に合わせて、このカバーを抜く作業が必要になる |
Centurion 590は光学ドライブをツールレスで固定できるようプラスチックパーツが備わっている。こうした製品も増えているが、この場合は、ドライブを取り付ける前にロックを外しておく必要がある |
光学ドライブは一般的にフロント方向から挿入する |
ちなみに、Centurion 590は光学ドライブのフロント部分がむき出しの格好になるが、ケースによってはフロントパネルが化粧カバーとなって完全に覆われることもある。この場合、光学ドライブとフロントパネルのスペースが正しい位置関係にないとイジェクトボタンが作動しないなどのトラブルが起こることがあるので、より慎重に作業するようにしたい。
次はHDDの取り付けである。ケースにはシャドウベイといって、HDD専用の3.5インチベイが用意されている。通常は、そのベイに後方からHDDを挿入し、ねじ穴を合わせてネジ留めする、という作業の流れとなり、光学ドライブよりはかなり楽な作業である。HDDの固定は光学ドライブとは異なり、インチネジを使う点に注意したい。
Ceturion 590は5インチベイにHDDを取り付けるためのユニットが装着される格好となっているので、このユニットを取り外してHDDを固定しなければならない。本製品の場合は、すべてのベイを5インチベイにするというコンセプトのために、このような構造になっているが、そうでない場合でも、シャドウベイを取り外せるほうが広々としたスペースで作業できるというメリットもあり、こうした構造を持つケースも少なからず存在する。
Centurion 590では、HDD用のベイユニットが5インチベイに取り付けられる格好となっている。ファンが付いている部分が、そのユニットだ |
光学ドライブと同じように、ロックを解除する。また、ネジ留めもされているので、ドライバーを使って取り外す |
HDD取り付け時の注意点としては、マザーボードの干渉を避けるということを頭に置いておきたい。シャドウベイの位置にもよるが、HDDはコネクタ部を含めると意外に後方へせり出す。そのため、マザーボード上のコネクタと干渉し、装着が面倒になることがある。とくに電源を上部に取り付けるケースで起こりやすい問題だ。面倒になるだけの話なので、それほど厳密に考える問題ではないが、どのあたりにマザーボードの凸部分が来るかをイメージしながら取り付けると後の作業が楽になるだろう。
マザーボードの取り付け
ついに、マザーボードをケースに固定する番である。マザーボードの取り付けは、その前準備のほうが重要である。まず、マザーボードのIOリアパネルカバーの取り付けを行う。これは製品ごとに異なるマザーボードのIOリアパネルに適合するカバーを取り付ける作業である。カバーはマザーボードに同梱されているので、このカバーをケースの内側からグッと押し込んではめ込むだけである。
次にスペーサーの取り付けだ。マザーボードはケースとの間に隙間を空けて固定される。電気的なショートを防いだり、マザーボードを浮かすことで冷却に活かすなどの意味を持っている。また、この浮かすために使われる”スペーサー”が金属であることが多く、これを利用して、ケースをアースに使うという重要な役割もある。
まずは、マザーボードが固定されるべき位置には、いくつかの穴があいており、ここにスペーサーを取り付けることになる。スペーサーの取り付け位置は、マザーボードに空いているねじ穴に合う位置、ということになる。もし分かりにくい場合は、一度マザーボードを当てて場所を確認するとよいだろう。
スペーサーを取り付けたあとは、その上にマザーボードを置いてネジ留めすることになる。ここで注意したいのは、スペーサーによってミリネジを使うものと、インチネジを使うものが存在することだ。軽くネジを当ててみて、どちらのネジが適合するか確認するようにしよう。無理な取り付けは厳禁だ。
グラフィックスカード、拡張カードの取り付け
さて、このあたりからは、さらに組み立ての順番がどうでもよくなる。まずはグラフィックスカードに代表される拡張カードの取り付けを紹介するが、電源ケーブルを挿す場合などに拡張カードがジャマになるようであれば、先に配線をしてしまったほうがいい部位もある。臨機応変に作業を進めていこう。
グラフィックスカードや拡張カードを取り付ける場合、リアのパネル部分にあるカバーを取り外してから、スロットにカードを装着、ネジで固定することになる。この場合のネジは一般的にミリネジが利用されるが、まれにインチネジが使われるケースもあるので無理に締めずに確認するようにしたい。
グラフィックスカード(拡張カード)を取り付ける位置を確認し、背面部分の金属カバーを外す。Centurion 590の場合は、プラスチックの固定パーツが備わっているのでロックを外して金属カバーを外すことになる |
EAH4870/HTDI/512Mの場合はブラケット部を二つ利用するので、2枚のカバーを取り外す必要がある |
なお、ただし、Centurion 590はカードの固定にネジを使用せずに、プラスチックパーツで固定できるようになっている。ツールレスを売りにする製品には、こうしたタイプのものもあるが、ドライバーの出番がないだけで、基本的な作業はそれほど変わらない。
フロントインタフェースや電源類の配線
次は最後の作業となる、各種ケーブルの配線作業である。このなかでもっとも難易度が高いのが、フロントパネルインタフェース類のケーブル接続だ。ケースのフロント部分には、電源スイッチやリセットスイッチ、各種インジケータ、USBやIEEE1394、オーディオ入出力端子などを備えている。これらの機能を使うために、ケーブルをマザーボードの所定の位置に接続する必要があるわけだ。
このさい、マザーボードのヘッダピンに、電源のプラス/マイナスや信号ピンなどを、正しい位置に合わせて取り付けていく必要がある。ケース外で行えないわりに、細かい作業となるため注意が必要だ。とくに信号線などを含むUSB、IEEE1394、サウンド関連はピン数も多く面倒だが、最近のケースの多くは全ケーブルを一体化したコネクタが採用されることが増えた。もし、各ケーブルごとにピンがバラバラになっているケースの場合は、マザーボードのマニュアルと、ケーブル側のピンに書かれた役割を照らし合わせ、正しい位置へ挿していく必要がある。
一方の電源スイッチやリセットスイッチ、インジケータ用LEDのケーブルは、取り付け位置とプラス/マイナスの向きを注意しながら接続していくことになる。
なお、今回使っているP5Q-Eには、この作業をサポートする「Q-Connecter」というパーツが付属しており、ケースの奥へ手を入れずに、正しい位置へケーブルを取り付けやすくなっている。ASUSTeK製品が先鞭を付けた製品だが、最近では他社のマザーボードでも類似のパーツが付属することがある。積極的に活用したいアイテムだ。
P5Q-Eに付属するQ-Connecter。ピンの確認をケース外で行えるので、作業が非常に容易になる |
Centurion 590の場合、USBなどのコネクタは一体化されているので比較的、作業は楽な部類に入る。電源スイッチなどのケーブルはQ-Connecterを活用している |
電源スイッチやLEDなどのコネクタ。Q-Connecterのおかげで、丸ごと接続するだけでOKだ |
USBやIEEE1394、サウンド入出力も、コネクタが一体化されているので、そのままマザーボード上のピンへ差し込めばOK |
残るは各種電源ケーブルである。メイン電源、ATX12V電源、グラフィックスカード、光学ドライブ、HDDに電源ユニットから伸びるケーブルや信号ケーブルを接続。さらに、ケースにあらかじめ取り付けられているファンの電源コネクタをマザーボード上のコネクタへ接続する作業となる。
単純な作業であるが、取り付けたあとのケーブルの状態が、あまりにごちゃごちゃした状態は避けたい。ケース内に熱が籠もることを防ぐために、ケースに取り付けられたファンによって、常に空気の入れ替えが起きるようにしなければならないが、ケーブルがケース内の空気の流れを遮ってしまうことになるからだ。
ATXメイン電源コネクタ。24ピンのうち、4ピンのみが分離するようになっているものが多いので、必要に応じて着脱する |
ATX12V電源コネクタ。8ピンまたは4ピンのコネクタになっており、8ピンのうち4ピンは互換性がある。デュアルコアCPUを利用するなら4ピンを装着するだけでよい |
光学ドライブへシリアルATAケーブルと電源ケーブルを接続。IDEタイプの場合は、どちらのケーブルも別のコネクタ形状となるので注意 |
HDDへシリアルATAケーブルと電源ケーブルを取り付け。光学ドライブと同じだ |
グラフィックスカードに電源コネクタを備える場合は、電源ユニットから伸びるPCI Express電源ケーブルを接続。Radeon HD 4870の場合は2本のケーブルを接続する |
ケースに備わっているファンの電源ケーブルを、マザーボード上のファン電源コネクタへ接続する |
ケース内の空気の流れを遮らないように、最終的にはケーブルはある程度でもいいので束ねるようにする |
最近のケースは、マザーボードの裏側を通せるようになっている製品も増えている。こうした工夫も積極的に活かしていきたい |
ケーブルの固さや太さ、そしてある種の芸術的センスが求められる作業で、一筋縄ではいかない作業であるが、前回紹介したようなケーブルを束ねる小物を使うなどして、可能な限り美しく束ねるようにしよう。
(機材協力 : ASUSTeK Computer)