GoogleのAI開発部門である「DeepMind」は11月14日(現地時間)、AIモデルを活用することで従来の手法よりも高い精度を実現したという気象予報AI「GraphCast」を発表した。すでにヨーロッパ中期予報センターで参考にされているほか、AIを用いた大気モデル予測のデモサイトも用意されている。

  • GoogleのAI開発機関「DeepMind」が気象予測AI「GraphCast」発表 - より強力な10日予報を実現、防災にも貢献へ

GraphCastは、1分以内に前例のない精度で10日間の天気予報を提供できるというAI天気予報モデル。従来の高分解能10日間大気予測モデル(HRES)よりも高い精度を実現するとしており、グラフニューラルネットワークに基づいて構成。28×28kmのグリッドで予報を行うというもので、モデルは気温、風速と風向、平均海面気圧を含む5つの地表面変数と、比湿、風速と風向、気温を含む6つの大気変数を37レベルの高度ごとに予測する。

従来の手法のうち、ECMWF-HRESとの比較においては、1,380個のテスト変数における90%以上でより正確な予報を実現。より気象における影響が大きい6~20kmの対流圏に限定した場合、99.7%のテスト変数で正確な予報を行えたという。

AIを用いているため、数値天気予報(NWP)を用いた従来手法よりも極めて計算量が小さく済む点も特徴。スーパーコンピューターは必要なく、Googleが独自に開発するAI向けチップ「TPU v4」を1つ搭載したマシンで1分もかからないという(別途モデルのトレーニングには時間がかかる)。

学習データには1979年から2017年までのERA5が用いられており、2016年から2021年のHRES データで微調整された高解像度モデルも組み合わされている。Science誌に論文が投稿されているほか、モデルのコードをオープンソース化してGithubで公開中。GraphCastを実際に実行してみたり、モデルをトレーニングすることも可能だ。なお、完全なモデルのトレーニングにはECMWFのERA%データセットを別途用意する必要がある。