クラウド型電子カルテのメリットとは?デメリットや注意点も解説

電子カルテ

クラウドサービス型の電子カルテは、2010年より解禁された、比較的新しい提供形態です。この記事では、クラウド型電子カルテのメリットやデメリット、導入に向いている医療機関の特徴や導入時の注意点について解説します。導入を検討している場合はぜひ参考にしてみてください。

クラウド型電子カルテとは

クラウド型電子カルテとは、クラウドサービスとして提供されている電子カルテサービスです。従来のオンプレミス型では、院内に電子カルテのサーバーを置いてデータ格納していましたが、クラウド型ではクラウド上に電子カルテデータを保存します。

1、低コスト・短期間で導入できる

クラウド型電子カルテは、オンプレミス型のようにサーバーを院内に置く必要がなく、一定の初期費用と月額利用料金を支払うだけなので低コストです。また、サーバーの設置などの導入期間も不要であり、短期間で利用を開始することができます。

2、インターネット環境があれば利用できる

従来のオンプレミス型電子カルテは、基本的に院内での利用を想定していました。一方、クラウド型電子カルテはインターネット上のサービスであり、いつでもどこでもインターネット環境さえあれば利用可能です。

院外から電子カルテにアクセスできるため、在宅医療や往診など、外出先からもアクセス可能で利便性が高くなります。

クラウド型電子カルテサービスの歴史

ここからは、クラウド型電子カルテサービスの歴史について簡単に紹介します。

クラウド型電子カルテサービスは2010年より解禁

古くは1960年代からカルテの電子化は始まっていましたが、院内に設置するオンプレミス製品としての電子カルテが普及しだしたのは2005年以降のことです。

その後、厚生労働省より「『診療録等の保存を行う場所について』の一部改正について」が2010年(平成22年)に通知され、電子カルテのクラウド化が解禁となりました。本通知が出る前は、電子カルテを保管するサーバーは院内に設置しなければなりませんでした。

本通知により、電子カルテの外部保存に関する規定を満たしている民間業者の提供するサーバーも、電子カルテの保管場所として認められるようになったのです。

クラウド型電子カルテのメリット4つ

クラウド型電子カルテを導入するメリットについて、4点にまとめて解説します。

1、オンプレミス型より導入コストが安い

クラウド型電子カルテは、院内にサーバーマシンなどを入れて環境構築をするオンプレミス型の電子カルテに比べて導入コストが安い点が大きなメリットです。特に、開業間もない小規模な診療所の場合、低コストで契約するとすぐに利用できるクラウド型電子カルテのメリットを最大限に享受できます。

ただし、利用人数の多い大規模な医療機関の場合は、慎重な比較が必要です。利用人数によって月額料金を支払うクラウド型電子カルテの場合、例えば利用期間5年で総コストを計算すると、オンプレミス型と逆転して高額になるケースがあります。

2、常に最新版が使える

クラウド型電子カルテは、運用環境もソフトのバージョンアップ作業もすべてサービス提供者が行います。手間をかけることなく常に最新版が利用できる点も、クラウド型電子カルテの大きなメリットです。

3、マルチデバイス対応で外出先からもアクセスできる

インターネット回線が使える環境なら、アクセスするデバイスや場所・時間にとらわれずアクセスできる点も、クラウド型電子カルテのメリットです。カルテの閲覧だけでなく書き込みもできるため、訪問医療など院外で診療を行う際、その場でカルテに記載できます。

4、運用管理もサービス提供者任せでよい

システムのセキュリティ対策やハードウェア機器のメンテナンスなど、運用管理の手間がかからない点も、クラウド型電子カルテを導入するメリットです。電子カルテデータのバックアップや、トラブルでシステムが停止した場合の対策もサービス提供者がすべて対応します。

クラウド型電子カルテのデメリット2つ

魅力の多いクラウド型電子カルテですが、デメリットもいくつかあります。どのようなデメリットがあるのかについて解説します。

1、インターネットの環境がないと利用できない

クラウド型電子カルテは、インターネット環境がないと利用できません。通信障害が発生してインターネットが利用できない場合や、電波の届かないエリアでは使えない点はデメリットと言えます。

2、カスタマイズ性が低い

クラウド型電子カルテはサービス内容が決まっており、カスタマイズ性はほとんどありません。例えば、連携したい院内検査機器がある場合や、既存システムと連携したい場合、クラウド型電子カルテの製品によっては対応できないかもしれません。

クラウド型電子カルテ導入に向いている医療機関とは

クラウド型電子カルテは、インターネット回線を使える場所なら、どこでも利用できる点が大きなポイントです。そのため、基本的には院外からの利用が多い医療機関で導入のメリットが大きくなります。

では、具体的に「院外の利用が多い」医療機関とはどのような特徴を持っているでしょうか。

1、複数医師で運営

複数の医師で運営する小規模な医療機関の場合、導入コスト・運用コスト共に低コストで、手軽に導入できるクラウド型の電子カルテが向いています。

2、非常勤の先生が多い

非常勤の先生は、複数の医療機関を掛け持ちしている場合も少なくありません。院外から電子カルテを見られる環境を整えておくと何かと便利です。

3、分院展開しており施設間連携が必要

複数の医療機関をグループで運営している医療機関は、施設間で情報連携が必要です。オンプレミス製品の場合、施設同士のネットワークを接続するなど、インフラ面を整備しなくてはなりません。

クラウド型電子カルテの場合は、インターネット回線を通じて複数拠点でも関係なく同じシステムを使えます。さらにグループ展開に対応している製品を選ぶと、各施設で情報を管理しつつ、電子カルテはグループ内で統一化することも可能です。

4、老人施設を管理している

医療機関とは別に老人施設を管理している場合も、分院展開のケースと同じです。施設間での情報連携を簡単に行えるため、クラウド型電子カルテが適しています。

5、在宅・訪問診療を行っている

クラウド型電子カルテは、在宅診療・訪問診療を行っている医療機関でも大きく役立ちます。パソコンやタブレットなどの画面でカルテの記載や検査の画像などを自宅の患者さんに見せることで、説明が格段にわかりやすくなります。

クラウド型電子カルテ導入時の注意点3つ

クラウド型電子カルテを導入する場合は、気をつけたいポイントが4つあります。導入前に必ず確認してください。

1、インターネット回線が使えない時の対策が必要

通信業者のトラブルやシステムメンテナンス、災害の影響など、インターネット回線が使えないケースはいろいろと想定されます。このような場合でも診療が継続できるような対策を考えなくてはなりません。診療を継続する対策としては、以下が考えられます。

  • サブサーバーを院内に構築するタイプのクラウド型電子カルテを選ぶ
  • サブの回線を用意する

考え方は、システムを院内でも使える仕組みを作るか、サブで使える回線を準備するかです。自院に適した手段で、診療を継続する対策を検討しましょう。

2、データの参照や更新に若干のタイムラグが生じる

インターネット回線を経由するため、回線が混雑している時間帯の場合、電子カルテを参照・更新するのにタイムラグが生じる場合があります。どの程度のタイムラグがあり、許容範囲かどうかを確認するには、無料トライアルで試験的に使ってみるのが確実です。

3、社外にカルテデータがあるためセキュリティに注意が必要

電子カルテは重要な機密データです。一定の基準をクリアした民間業者がクラウド型電子カルテサービスを提供しているとはいえ、業者がどのようなセキュリティ対策を講じているかは必ず確認しましょう。

多くの医療機関に製品を提供している実績のある業者かの確認や、オプションサービスでセキュリティを強化するかどうかなども検討が必要です。

クラウド型電子カルテのおすすめ製品5選

現在はクラウド型電子カルテもさまざまな製品が販売されているため、どれを選べばよいかわからないということもあるでしょう。そこでここからは、おすすめのクラウド型電子カルテ5製品を紹介します。自院に向いている製品があるかどうか、ぜひチェックしてみてください。

1、CLIUS (クリアス)/ 株式会社Donuts

「CLIUS」は、入力しやすいユーザーインターフェースを持つクラウド型電子カルテサービスです。日々入力を行う電子カルテだからこそ、操作性のよさは重要です。

他システムとの連携によって、電子カルテだけでなく会計業務などもシステム化しやすい点に特徴があります。連携システムは、日医標準のレセプトソフト「ORCA」連携や地域医療連携など多種多様です。

また、本製品はオンライン診療機能も提供しています。これからオンライン診療を推進したいと考えている場合にもおすすめです。

2、Medicom-HRf/ PHC株式会社

新規開業で、電子カルテシステムだけでなく医事システムも同時に導入したいと検討している場合は、「Medicom-HRf」もおすすめです。基本はオンプレミス型の医事システム一体型の電子カルテシステムで、会計業務も診療業務も電子化できます。カルテは自由にカスタマイズできる点も特徴のひとつです。

本製品は、クラウドも併用するハイブリッド型のソリューションにも対応しています。通常はオンプレミス型で運用しつつクラウド環境にもデータのバックアップを実施。災害時にはクラウドサービスとして利用することが可能です。

3、BrainBoxCloud/ 株式会社ユヤマ

「BrainBoxCloud」は無床診療所向けの医事一体型電子カルテサービスです。患者の状態を1画面で確認できるような画面レイアウトや、データの分析ができるAI INSIGHT機能を搭載しています。

また、災害時にも強い仕組みを持っている点も本製品の強みです。通常時はクラウドサービスとして利用しながら、院内にもサブサーバーを設けてデータのバックアップを取得します。災害発生でインターネット環境が使えなくなった場合は、院内ネットワークでサブサーバーを利用して診療を継続できる仕組みです。

4、セコム・ユビキタス電子カルテ/ セコム医療システム株式会社

「セコム・ユビキタス電子カルテ」は、セコム運営の堅牢なデータセンターを利用している点が特徴のクラウド型電子カルテサービスです。インターネット回線が災害などで利用できなくなった場合は、オプションでバックアップ回線を用意しています。

また、本製品は比較的規模の大きい病院に便利な機能が充実。例えば、患者の統一IDを発行し、複数施設での情報共有が可能です。

5、セコムOWEL/ セコム医療システム株式会社

「セコムOWEL」は、無床診療所・在宅クリニック向けの機能が充実しているクラウド型電子カルテサービスです。シンプルかつ低コストで導入できる電子カルテサービスなので、コストを抑えて導入したいという場合にもおすすめできます。

クラウド型電子カルテの特徴を確認して導入検討を

クラウド型電子カルテは、特に開業したばかりの小規模な医療機関や、院外での診療が多い診療所に適しています。導入のメリットと注意点を確認して、自院の診療に向いているサービスを選びましょう。

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