東プレは24日、キー入力のオン位置を調節できる新キーボード「REALFORCE RGB」を正式発表した。12月9日に発売する。税別価格は28,000円。
REALFORCE RGB発表会では、e-Sportsゲーミングチームとのスポンサード契約も発表された。写真は左から、電技機器部 技術兼製造部長の持田智彦氏、同社取締役・電子機器部事業部長の山本豊氏、Green Leavesのメンバー2名、全日本タイピスト連合代表の隅野貴裕氏、電子機器部 営業部 次長の小林充氏 |
キー入力の深さを設定できる
2015年6月のCOMPUTEXで試作機が初披露されたキーボード。最大の特徴は、キー入力のオン位置を任意に変更できる点だ。
これは同社がAPC機能(アクチュエーションポイントチェンジャー機能)と呼んでいる機能で、1.5mm/2.2mm/3mmの3段階で、任意に入力位置を設定できる。例えば、1.5mmに設定すると素早く入力できたり、重要なキーを3mmと深く設定することで不意の誤入力を防げたりする。オン位置は全キーに一律設定できるほか、1キーごとの個別設定も可能。個別設定は、専用ソフトウェアで行う。
本体は新たに金型をお越し、再設計した。配列は、海外向けブランド「TYPE HEAVEN」の104キー英語配列モデルをベースに、キーの入力位置を調節できる1キーと、音量調節用の3キーを加えた、108キー英語配列を採用する。通常のキースイッチは静電容量無接点方式。
全キーにRGB LEDを備え、1,680万色から好みの色に点灯できる。キーの印字には、2色整形キーキャップを採用。文字部分とキーキャップを異なる部材で作成し重ねており、文字がかすれたり削れたりすることなく、高い耐久性を持つ。
東プレ初のゲーミングキーボード
同社としては初の"ゲーミング向け"モデルでもあり、REALFORCE RGBのブランド名で今後製品を追加していく。現状では、2017年春~夏頃をめどに、日本語配列モデルを追加予定だ。
主な仕様は、キー荷重が45g+/-15g、ストロークが4mm、スイッチ寿命が5,000万回以上、インタフェースがUSB、キーロール―バーがフルNキーロール―バーなど。本体サイズは142×455×30mmで、同社が販売している通常のRealforce 108配列キーボードと比べ16%小型化している。重量は1.4kg。
同社はREALFORCE RGB専用ソフトウェアも提供する。専用ソフトではAPC機能やバックライト、オン位置調節設定が可能。また、静音化やオン位置の調節ができる、キー内部に設置するスペーサーのセットもあわせて発売する(税別2,500円)。WASDキーセットおよび1キーの2mm/3mmスペーサーと、キー引き抜き工具などが同梱され、ストロークが短くなることによる入力高速化が図られるほか、クッションによる静音化にも貢献するという。
日本語配列モデルは来年登場
東プレは、自動車用プレス部品、冷凍車、空調システム、電子機器事業の4つの事業を軸として展開。電子機器はPC関連機器が伸びると見込まれた1983年に事業化し、約15年前の2001年9月に初代モデルを発売した。それから累計370,000台を販売している。
同社取締役で電子機器部事業部長の山本豊氏は、今回のRGBモデルについて、「新たなRealForceを開発した。従来はOfficeでの利用がメインだったが、今後ゲーミングにも参入していき、世界に広めていきたい」と抱負を語った。今後1年間での目標販売台数は、グローバルを含め1,200台。
1981年に業務用キーボードを開発した同社は、軽いタッチ、スムーズな打鍵、入力スピード向上の3点を特徴として市場に投入した。これら特徴は、独自の静電容量無接点方式の特徴でもある。
電技機器部 技術兼製造部長の持田智彦氏は、RealForceのキーボード技術を解説。静電容量無接点方式は、キーキャップ、板金、ハウジング、プランジャー、カップラバー、コニカルスプリング(円形のばね)、基板で構成されている。キー内部のカップラバーで荷重特性を作り出し、スプリングをたわませることで内部の静電容量を変化させ、軽いフィーリングでのオン/オフを実現できたという。
また、キーキャップの文字が"消えない"こともRealForceの特徴のひとつとして挙げた。従来から採用している昇華印刷では、20ミクロンほど文字を染み込ませることで、こすっても消えない高い耐久性に貢献しているという。
RealForceでは機械でのタイピング検査に加え、最終検査を全台人の手で1機1機全部のキーを押し、感覚による検査を実施している。同社では「キーボードマイスター」という認定制度を設け、最終的な荷重違いやひっかかりなど、"フィーリング"を検査しているという。
持田氏は「キーボードはPCと人とのインタフェースとして重要。RealForceは指への負担が少なく、スイッチもへたらず、文字が消えてみすぼらしくなることもない。全ての人が満足できるキーボードを目指し、今後もこだわりある製品を作る」とした。
電子機器部 営業部 次長の小林充氏は、REALFORCE RGBの新機能を説明。上述のAPC機能、1,680万色から設定できる特徴に加え、全キーの同時押しが可能な「フルNキーロールオーバー」やクロスキートップの採用なども紹介された。
Green Leavesとのスポンサード契約も
東プレは、ゲーミング市場への新たな取り組みとして、e-Sportsチーム「Green Leaves」とのスポンサード契約も発表した。
Green Leavesは、オンラインFPS「Overwatch」を中心に活躍するe-Sportsチーム。同時開催された発表会では、Green Leavesのメンバーにチームユニフォームが手渡された。
Green Leavesの2人は、APC機能によるキー誤作動防止や、小型化による持ち運びやすさを評価。また、「ユニフォームに袖を通すと実感が沸いてきた。早く大会に臨み、国内だけでなく、海外にも活動の幅を広げたい」と意気込んだ。
高速タイピングのヘビーユーザーからもお墨付き
一方、文筆業など、文章入力をメインにキーボードを使用する層も活用できるとして、全日本タイピスト連合代表の隅野貴裕氏が招かれ、REALFORCE RGBを使ったタイピングの腕が披露された。
全日本タイピスト連合代表の隅野貴裕氏。試したのは60秒間で入力できた文字数、ミスタイプ数をチェックできるWebサイト「さくさくタイピング」によるタイピング試用。60秒間のうち706打鍵(13タイプミス)という脅威的な速度の入力デモとなった |
隅野氏は、13年前にRealForceを使い始めたヘビーユーザー。高速入力を目的としたタイピストの視点からは、「ステップスカルプチャー」「静電容量スイッチ」「フルNキーロールオーバー」の3点がメリットとして挙がった。
ステップスカルプチャーはキーが指に吸い付くようで「一体感が違う」。静電容量スイッチは、高速になればなるほど時間のロスにつながる底打ちが不要で、特に小指などのキーでメリットが高いという。また、フルNキーロールオーバーは、高速入力時にほぼ同時入力状態になった際、落とすことなく入力が反映されているため、「高速タイピストとして助けられている」と評価した。