ペンタブレットの進化、そしてイラスト制作ソフトの充実により、デジタルでのイラスト制作は大きく変化してきている。ペンタブレットやソフトの機能を理解し、いかに使いこなすかは作品のクオリティを大きく左右する重要なポイントだ。今回は多くのユーザーに支持されているイラスト制作系ソフト5本をピックアップし、各ソフトの特徴を紹介する。

Photoshop

アドビ システムズの画像編集ツール「Photoshop」

いわずと知れたアドビ システムズの画像編集ツール。元々は写真編集を原点としたソフトだが、ブラシ機能やレイヤー・描画モードが充実しているため、ペイントソフトとして利用しているユーザーも多い。1本持っていればイラストだけでなく写真・グラフィックデザインの作業を幅広くカバーできる。他のペイント系ソフトと比較すると高額だが、「Illustrator」、「InDesign」などの同社ソフトも使うユーザーであれば、最近開始したサービス「Adobe Creative Cloud」(月額5,000円)を利用するといった手段も考えてみてほしい。ちなみにPhotoshop単体価格は9万2,400円。

CLIP STUDIO PAINT PRO

セルシスのイラスト制作ソフト「CLIP STUDIO PAINT PRO」

セルシスが2012年に発売したイラスト制作ソフト「CLIP STUDIO PAINT PRO」。同社が開発したマンガ制作ツール「COMIC STUDIO」とイラスト制作ツール「ILLUST STUDIO」が統合したツールと考えてもらうとイメージが湧きやすいだろう。SAI、openCanvas、コミラボ等Windows用ソフトが多い中で、同ソフトはMacにも対応している。SAI同様に線画機能が充実しており、ペン入れがしやすいほか、すき間を検知し塗り残しを防ぐバケツツールや、カラーで描いたイラストをグレーのトーン表現に自動で変換できる「トーン化」機能など、作画をサポートする機能が充実している。

いわゆる"絵師"と呼ばれる次世代のデジタルイラストレーターにとって、カラーイラストと漫画制作のいずれにも対応する頼もしいソフトだ。価格はダウンロード版5,000円、バリュー版500円/月、パッケージ版8,925円。

openCanvas

ピージ―エヌのペイントソフト「openCanvas」

直感的で使いやすいインタフェースで、イラスト初心者から上級者まで幅広く対応できるペイントソフト。アナログに近い表現が可能な「ペン」/「ブラシ」ツール、「フィルタ」/「レイヤ効果」/「トーン」などイラスト制作の為の機能を幅広く備える。描画手順を記録/再生できるopenCanvas独自の「イベント機能」を搭載しているのが特徴で、イラストの制作行程を動画として保存できる。「ポタグラ」(portalgraphics.net)というコミュニティサイトには同ソフトを使用したイラストが数多くアップされており、他ユーザーの「イベントファイル」は作画行程の参考にもなる。価格は5,800円。

コミラボ

ピージ―エヌのマンガ制作ツール「コミラボ」

低価格・高機能のマンガ制作ツール。下書き・コマ割り・ペン入れ・トーンに写植、作品管理までの一連の作業がスムーズにできるよう作られたソフトだ。オリジナルのブラシを作成できる「ブラシスクリプト」機能では、自分好みの線質を追求できる。背景描写に便利な3Dパース機能や、引いたパースに沿って簡単に直線が描けるスナップ機能などを搭載。ほかにも作業中のフリーズや保存し忘れなどのトラブルを未然に防ぐバックアップシステムなど、漫画家の視点に立った機能が充実しており「実際に描いている人が作ったという感じがする」とユーザーから評価されている。価格は5,800円。

SAI

SYSTEMAXのペイントソフト「SAI」

イラスト投稿サイト「pixiv」でここ数年、利用者数の多いペイントソフト「SAI」。「ペン入れレイヤー」の搭載により、描線を後から編集できることや、手ぶれ補正機能で滑らかな線画を描く事ができることなどから支持を集めている。ユーザーの多さからガイド本などの関連書籍やWEBサイト上でのメイキング公開数も多く、これからデジタルイラストを始めたいというユーザーにとって学習しやすい環境があることも大きいだろう。ただ描画機能に特化している分、図形や文字の機能はほとんど搭載されておらず、テキスト入力等には他ソフトを併用する必要がある。価格は5,250円。

まとめ

それぞれに特徴のある5本のソフトだが、コストパフォーマンスを重視した場合、漫画メインならコミラボ、イラストメインならばSAIやopenCanvasがお勧めだろう。コストと多機能さのバランスではCLIP STUDIO PAINT PROが一歩進んでいる印象。デザイン・レタッチ作業なども含めた汎用性を求めるならPhotoshopといったところだろう。いずれにせよ、自分の制作目的に合ったソフトを選ぶ事が大切だ。

また、製品とのパッケージ購入キャンペーンなどを上手く利用するのもひとつの手。現在、ワコムでは同社のペンタブレット「Intuos5」を購入すると「openCanvas」と「コミラボ」の正式版シリアルキーがもれなくもらえる「Intuos5クリエイティブキャンペーン」を実施している。キャンペーン期間は2012年9月24日までで、対象製品はIntuos5全ラインナップ。これからペンタブレットの購入を考えている人にはソフトを無料で同時に手に入れられるチャンスとなっている。

文:野出木彩