VHD形式ファイルとは何か

Windows OS上で使用できるファイルタイプの一つに「VHD」というものがある。Windows Vistaから搭載された標準バックアップツールのディスクイメージファイルとして使われるようになったため、聞き覚えのある方も多いだろう。だが、VHD形式の歴史はかなり古い。

そもそもVHDとは、Virtual Hard Disk(仮想ハードディスク)の略称であり、多くのユーティリティツールをリリースしてきた米Conectix社の仮想マシンソフト「Virtual PC」用仮想HDDファイルとして開発されたものだ(ちなみに同社は自社製品をMicrosoftに売却済み)。

Microsoftの一製品としてリリースされた当初は、一万数千円のパッケージだったが、2006年7月頃リリースされたVirtual PC 2004 SP(Service Pack)1から無償提供となり、Windows 7の上位エディションで使用できるWindows Virtual PCに至っている。

このような経緯を持つVHD形式は、Microsoft各製品との親和性も高く、前述したOS標準のバックアップツールが用いるディスクイメージファイルや、仮想マシンソフトが使用する仮想ハードディスクファイルとして用いられてきた。また、Windows 7の上位エディションやWindows Server 2008 R2では、VHD形式ファイルのコンピュータ起動もサポートし、OSが標準的にサポートするファイル形式の仲間入りを果たしている(図01)。

図01 Windows 7でドライブのフルバックアップを行なうと、ディスクイメージの内容がVHD形式で保存される

また、VHD形式ファイルが多くの環境で使われるようになったのは、同社が立ち上げたプロジェクト「OSP(Microsoft Open Specification Promise)」の存在が大きいだろう。同プロジェクトの結果としては、Microsoft Officeで使用できるオープンXMLファイル形式が有名だが、VHD形式の仕様を公開している「VHD Image Format Specification」もその一つ。

2005年に策定されたVHD Image Format Specificationの使用許諾契約書に同意することで、サードパーティメーカーでもVHD形式ファイルを用いたソリューションを開発し、自社製品の向上につなげることが可能になった。これがVHD形式の登場から現在に至るまでの大まかな流れだ。

VHDファイルを活用する新ツールが登場

「HD革命/BackUp Ver.10」では、VHD形式ファイルと自社製品のバックアップイメージファイルの相互変換機能をサポートしている。OS標準バックアップツールからの乗り換えや、VHD形式ファイルに変換し、同ファイルからのコンピュータ起動を行なうなど、様々な用途に活用することが可能だ。

既にHD革命/BackUp Ver.10をお使いの方は、バックアップファイル変換ツールを用いて、バックアップデータを活用している方が多いだろう。特にVHD形式ファイルをWindows Virtual PCの仮想ハードディスクファイルとして用いる場合、実行することでリスクをともなうファイルの検証や未完成アプリケーションの動作確認など用途の幅は広がるばかりだ。

しかし、バックアップを実行したときのドライブ構成やハードウェア構成が異なると、Windows Virtual PCでも正常に動作しないことがある。そもそもWindows OSでは、コンピュータを構成するハードウェアと、その上で実行するソフトウェアの間を埋めるための橋渡しを必要としているが、その差異を吸収するための存在が、HAL(Hardware Abstraction Layer)。これが異なるとWindows OS自体起動しなくなる。

その一方で重要なのがストレージデバイスを制御するチップセット用デバイスドライバの存在。そもそもWindows OSを起動するためのシステムファイルは、HDDに代表されるストレージデバイスに保存されているため、これらを正しく読み込めないと、OSが起動しないのは至極当たり前なのだ(図02~03)。

図02 こちらは一般的なコンピュータのハードウェア構成。Intel ICH10Rの下にデバイスが並んでいる

図03 こちらはWindows Virtual PC上のWindows 7。同じように構成を確認すると、Intel 82371AB

さて、前述したHD革命/BackUp Ver.10のバックアップファイル変換ツールは、基本的に同製品独自のバックアップイメージファイル形式とVHD形式ファイルの変換を行なうが、今述べたようなバックアップイメージファイル上のWindows OSに対するアプローチを行なうわけではない。

VHD形式ファイルに変換したが、Windows Virtual PCで起動しない場合、システムファイルの入れ替えやデバイスドライバの変更など、数多くのチューニングが必要となり、一筋縄では行かなかった。これらの諸問題を簡単に解決できるのが、今回新たにリリースされた「VhdAdjust」なのだ。

「VhdAdjust」を活用する

「VhdAdjust」公開サイト

今回新たに公開された「VhdAdjust」は、いくつかの使用条件がある。同ツールは、Windows XPのディスクイメージファイル(VHD形式ファイル)を、Windows Virtual PCの仮想ハードディスクファイルとして使用するために自動調整を行なうのが主目的。そのため、Windows Virtual PCを導入したWindows 7が必要だ。未導入の方はあらかじめダウンロードページからWindows XP Modeなどを入手し、導入しておこう。

続いて事前に準備しなければならないのが、Windows XPのバックアップイメージファイル。「HD革命/BackUp Ver.10」で作成した拡張子「.hdz」を持つバックアップイメージファイルをVHD形式に変換して使用する際は、HD革命/BackUp Ver.10に備わるバックアップファイル変換ツールを用いるとよい。

もう一つ必要なのが、Windows XPのセットアップCD-ROM。必須という訳ではないが、バックアップ環境に応じて挿入を求められるので、事前に用意しておこう。なお、同セットアップCD-ROMからは、hal.dllやntoskrnl.exeなどのシステムファイルをVHD形式ファイル内にコピーしているため、バックアップ元のWindows XPと同等のService Packが適用されたセットアップCD-ROMが必要となる。

実行前に注意しておかなければならないのが、VhdAdjustの実行結果に関してはユーザーの自己責任となり、メーカーサポートを受けることができない点。もちろん既存環境やバックアップイメージファイル(.hdz)に対するダメージが発生することはないため、神経質になる必要はないものの、トラブル発生時は自身で対応しなければならない。この点に留意して先に進んで欲しい。

最初に行なうのはバックアップイメージファイルの変換。こちらは何ら難しいことはなく、Arkランチャーからバックアップ変換ツールを起動し、画面の指示に従って進めるだけだ。バックアップイメージファイルの容量によって変換にかかる所要時間が大きく異なる点だけ注意しよう(図04~06)。

図04 あらかじめWindows XPのバックアップを実行してから、Arkランチャーの「オプション設定/便利ツール」から「バックアップファイル変換ツール」をクリックする

図05 バックアップ変換ツールが起動したら、各<参照>ボタンでバックアップイメージファイルの選択と、VHD形式ファイルの指定を行ない、<開始>ボタンをクリック。

確認をうながすメッセージが表示されたら<はい>ボタンをクリックする

図06 バックアップイメージファイルの変換を終えたら<OK>→<完了>とボタンをクリックして、バックアップ変換ツールを終了させよう

VhdAdjustを使った自動修正だが、ユーザー操作が必要になるのはVHD形式ファイルの選択と、環境によって必要となるWindows XPセットアップCD-ROMに対する場面のみ。基本的に各処理は自動的に行なわれる。ちなみに内部的にはVHD形式ファイルのマウントを行なってから、システムファイルのコピーやレジストリ情報の修正が行なわれているようだ(図07~図12)。

図07 ダウンロードページにある<ダウンロード>ボタンをクリックし、vhdadjustをダウンロードする

図08 ダウンロードしたファイルを展開すると、32ビット用(x86)と64ビット用(x64)のフォルダが用意されているので、使用しているWindows 7のバージョンに該当する方を開く

図09 フォルダを開くと「VhdAdjust.exe」が用意されているので、同ファイルをダブルクリックして実行する

図10 <参照>ボタンでVHD形式ファイルを選択し、<開始>ボタンをクリック。これで自動調整が行なわれる

図11 場合によってはWindows XPセットアップCD-ROMのドライブ挿入をうながされる。VHD形式ファイル上のWindows XPと同じService Pack番号を持つ同CD-ROMを挿入して<OK>ボタンをクリックしよう

図12 基本的にユーザーが操作する場面は皆無で、自動的に処理が行なわれる。完了を示すメッセージが表示された<OK>ボタンをクリックしよう

VHD形式ファイルの調整を終えたら、Windows Virtual PCで起動してみよう。こちらもウィザードを使用するため、難しい操作は必要ない。Windows Virtual PCの操作に慣れているユーザーであれば、ものの数分で設定を終えてしまうはずだ(図13~17)。

図13 [Win]+[R]キーを押してファイル名を指定して実行を起動し、テキストボックスに「%userprofile%\Virtual Machines」と入力して<OK>ボタンをクリック

図14 仮想マシンフォルダが開いたら、ツールバーにある<仮想マシンの作成>ボタンをクリック

図15 適当な仮想マシン名を名前のテキストボックスに入力して<次へ>ボタンをクリック

図16 メモリとネットワークオプション設定では、Windows XP用のメモリ調整を行なうだけでよい。設定を終えたら<次へ>ボタンをクリック

図17 仮想HDDの設定は<既存の仮想ハードディスクを使用する>をクリックして選択し、<参照>ボタンで先ほど調整を行なったVHD形式ファイルを選択、設定後に<作成>ボタンをクリック

今回の変換および自動調整操作で注意しなければならないのが、Windows XPの再ライセンス認証が必要になる可能性が高い点。そもそもWindows OSはハードウェアの構成情報をトリガーとし、一定数のハードウェア変更をカウントすると、異なるコンピュータに導入されたと判断して再ライセンス認証を求めてくる。

そのため、一般的なコンピュータ上のWindows XPをバックアップ→VHD形式に変換→Windows Virtual PCで起動という流れを踏まえると、当初のハードウェア構成とWindows Virtual PC上の仮想マシンに提供されるハードウェア構成が異なるため、デバイスドライバの再インストールはもちろん、再ライセンス認証を求められるのだ。

このライセンス認証は一定回数まではオンライン経由で行なえるが、それを超えると電話オペレーションによる認証が必要となるので注意して欲しい(図18~19)。

図18 ウィザードによる操作を終えて元のフォルダに戻ったら、新たに作成した仮想マシンファイルをダブルクリックで起動する

図19 これでバックアップしたWindows XPをWindows Virtual PCで起動できるようになった。ただし、各ハードウェア用デバイスドライバの組み込みや、Windowsライセンス認証が必要になる

このように、バックアップイメージファイルとVHD形式ファイルの相互変換を実現し、Windows Virtual PC用仮想ハードディスクとして使用できるなど、VHD形式ファイルを活用する場面は大きく広がった。加えてHD革命/BackUp Ver.10では、バックアップ先として共有フォルダが選択でき、バックアップイメージファイルの分割もサポートしている。かゆいところに手が届くバックアップツールとして同製品を使用し、VHD形式ファイルの活用度を高めると、Windows 7の使用環境もより広がっていくだろう。