秋葉原UDXカンファレンスにて、国内の開発者、メーカー向けにMoblinプロジェクトを解説するイベント「Moblinセミナー」が開催された。ここでは、その基調講演の模様をお伝えする。

Linux Foundationのexecutive director Jim Zemlin氏

基調講演の最初は、Linux Foundationのexecutive directorである、Jim Zemlin氏による「Device Convergence and Moblin」である。

Linux Foundationは、LInuxの普及や成長を促進するために作られた非営利コンソーシアムで、Linux開発者であるLinus Torvalds氏の活動をバックアップしている。インテルが開始したMoblinプロジェクトは、今年になり、Linux Foundationへと移管された。

Jim Zemlin氏(以下Zemlin氏)は、最初にLinuxのこれまでを振り返ったあと、すでに多くの機器にLinuxが搭載されていて、我々のまわりに存在していることを指摘した。そして、現在は、3つの大きなトレンドがあり、それがLinuxを使う理由になっているとした。

1つは、「経済の動き」だ。昨今の厳しい経済情勢の中で、オープンソースソフトウェアを採用する企業が増えているという。もう1つは、「コンバージェンス」と呼ばれる現象だ。たとえば携帯電話には、電子メールやWebブラウザ、カメラや音楽プレーヤーといったさまざまな機能が統合されつつある。このためには、さまざまな機能をソフトウェアで実現する必要がある。これを簡単に成し遂げることができるのは、Linuxのように多くのプラットフォームに対応し、さまざまな機能を利用できるOSしかないのだという。

ここでZemlin氏は、改めて過去を振り返った。2000年に同氏が使っていたPCはThinkPad T20、携帯電話はモトローラのFlip Phoneだった。T20は1,000ドルと高価で当時としては性能が高かったが、今からみればバッテリが貧弱で、わずかな時間しかバッテリ駆動ができなかった。またFlip Phoneはタダで入手できたが、毎月70ドルの基本料金を払う必要があった。それが今では携帯電話は高性能なiPhoneとなり、価格は299ドルまで下がった。さらにPCはというと、Netbookでさえ10年前のPCよりも高性能で、長時間動作できるのにiPhoneよりも安くなっている。

これは、10年前はハードウェアでだけ大半の機能を実現していたのに対して、現在の携帯電話やNetbookはソフトウェアとハードウェアの組合せとしてさまざまな機能を実現している。今や製品の価値は、ソフトウェアが生むものだとした。そしてここで、携帯電話などの通信とコンピュータ分野の「コンバージェンス」が起こっているという。同氏は、ここで、いつも「では、現在のデスクトップコンピュータは何に代わるのか?」といつも聞かれるという。携帯電話、Netbook、ブラウザ、テレビ、自動車、さまざまな可能性があるが、それらに共通して使えるのは「Linux」だけだと同氏は述べた。