続いて、2010年代に産業化が期待される次世代型ロボットが、画像29だ。こちらも左上から紹介していくと、製造業空洞化の抑制を目的とした人間共存型産業用(FA)ロボットで、例として、川田工業の双腕型FAロボット「Nextage」(画像30)が紹介されている。人間共存型FAロボットとは、従来のようにFAロボットのために環境を整えて人がそれに合わせるというのではなく、これまで人が働いていた環境をそのままに導入できるロボットのことをいう。安全性の面から人と接触してもケガをさせることのない小パワーで稼働し、3次元ビジョンなどと連動させて精密に両腕を協調動作させるといった機能的な特徴を持つ。それにより、今までのFAロボットではできなかった、人のように両手を使った作業を行え、人手が足りなくなったら、その環境にそのまま導入できてカバーできるというわけである。

画像29。2010年代に産業化が期待される次世代型ロボットたち

また、人間共存型FAロボットそのものは従来のFAロボットよりも数100万円は高くなるのだが、周辺環境の整備が従来の数1000万円もかかっていたものが数100万円と格段に安くなるので、トータルすると安価になり、さらにラインの変更もしやすいというメリットもあるのである。詳しくは、産総研オープンラボ2013の講演の中で、知能システム研究部門の河合良浩研究主幹による「産業用ロボットの新たな展開」をご覧いただきたい。ちなみに、この双腕ロボットを導入して成功している企業もいくつか出てきているという。今後、双腕ロボットが従来のFAロボットに取って代わってしまうということはないだろうが、導入は増えていくものと思われる。

画像30。川田工業のNextage(ROS仕様のOPENタイプ)。近年、双腕ロボットの開発が複数のメーカーで進んでいる

次は、移動作業型ロボットなのだが、2つの分野に分かれる。左の2つは清掃ロボット(画像31)や物流センターの搬送ロボットで、少子化による働き手の減少に対応することを目的とした分野だ。こちらも以前から稼働しているわけだが、従来のロボットは床にガイドラインなどを設けるなど、環境を整える必要があった。しかし、近年の自律型の移動ロボットはそうした環境整備をあまり必要とせず、ナビゲーション機能が非常に高くなっている。従来は工場で主に使われることが多かったが、物流でも利用されるようになり、さらに病院などでも使われるようになってきた。特に物流、中でもネット通販などの倉庫は大型化が進んでおり、まだ人海戦術のところもあるが、ロボットの導入が進んでいたり、見当されていたりするというわけだ。

画像31。富士重工の「共用部清掃ロボット」

そしてロボットのジャンルとしては移動作業ロボットに含まれ、目的としては原発事故を受けて活発化した防災ロボットに含まれるのが、その右の画像にあるロボットとその関連機器たちだ(画像32)。画像の防災ロボットはNEDOが2013年2月に発表したもので、詳しく知りたい方は、こちらこちらの記事をご覧いただきたい。

画像32。NEDO主導で開発された防災ロボットたち

また防災ロボットはもっと広い分野として社会インフラ維持を目的とした中に含まれ、ほかにも、トンネル、橋梁、高速道路、上下水道管などの点検といったものがある(画像33・34)。これらは人が行うには足場の問題やスペース的な問題などがあり、ロボットの活躍が期待されているところで、すでにさまざまな点検ロボットが開発され、一部では活用が始まっているところだ。

国土交通省や経済産業省でも重視されていて、今回のリポート記事の概要でも紹介したが、2014年度からはインフラ関連のロボット開発のプロジェクトとして、2014年度から2018年度までの「インフラの維持管理・更新・マネジメント技術開発(戦略的イノベーション創造プログラム)」および「インフラ維持管理・更新などの社会課題対応システム開発プロジェクト」などもスタートしている。

画像33(左):イクシスリサーチが開発した、高所狭隘部目視点検用の超遠隔地監視ロボット「ZIGZAG」。高速道路やプラントなどで利用を想定。画像34(右):ZIGZAGは普段は巻いて省スペース化して収納している3本の長いスチール板を組み合わせてカメラの支柱とし、このようにニョキニョキと伸ばして高所を撮影できるという仕組みだ