以上でロボティックベッド並びにリショーネの紹介が終わり、続いてはリショーネにおいてISO13482の認証取得をした際の適合設計・評価のことが語られた。画像5が、ISO13482の認証取得における全体像を表したものだ。まずパナソニックにおいてリショーネのISO13482適合設計・評価が行われ、次に実機サンプルやそこで得られたデータなどを基にした必要文書などが一般財団法人 日本品質保証機構(JQA)に提示され、そしてそれらに環境評価も加えた審査が行われた。

提示されたものの詳細な内訳は、大別すると「評価用実機サンプル」、「設計文書」、「管理文書」の3種類。より具体的には、設計文書には「リスクアセスメントシート」、「ユーザーマニュアル」、「仕様書・設計書」、「評価レポート」、「安全関連部の詳細文書」などだ。さらに安全関連部の詳細文書の詳細としては、「回路図・部品リスト」、「FMEDA(Faliure Modes, Effect and Diagnostic Analysis、故障・不具合の防止を目的とした解析手法の1つ)シート」、「安全要求仕様書」、「パフォーマンスレベル評価書」、「ソフトウェアV字モデル開発文書(設計書、テキスト報告書)」などがある。管理文書は、「教育訓練記録」、「各種管理基準」などだ。リショーネは制御によってリスク低減を行う機能安全の部分があるので、そうした部分は詳細に検証しているという。

画像5。ISO13482認証取得の全体像

これまでの講演で紹介したように、ISO13482の企画構成は8章になる。適用範囲、引用規格、用語および定義、リスクアセスメント、安全要求事項および保護方策、安全関連制御システムに対する要求事項、検証および妥当性確認、使用上の情報というわけだが、適合設計・評価を実施するに当たっては、その第4章「リスクアセスメント」から第8章「使用上の注意まで」が順を追って行われた形だ(画像6)。

まずはリスクアセスメントをして、リショーネにどのようなリスクが存在するかを明確にし、リスク低減が必要な部分に関してはそれを行うための何らかの方策を採る(第5章)。その中で、リスク低減の方策として制御を用いている場合は、機能安全設計・評価を実施(第6章)。そして、それらが実際に機能しているかどうかといった検証および妥当性の確認が行われ(第7章)、残留リスクがある場合は第8章に従って、使用上の情報としてユーザーマニュアルなどでフォローするというわけだ。

画像6。SO13482適合設計・評価の流れ

以上、流れを見ていたところで、続いては第4章から第8章までを詳細に見ていこう。まず第4章のリスクアセスメントだが、規格要求としては「ISO12100」に基づいて行われた。「GAMAB(ガマブ)原則」の考え方を適用し、ベッド/車いすベースのリスクアセスメントおよびリスク低減方策が実施された形だ。GAMAB原則とは、「既存類似製品と比較して、全体として少なくとも同様のレベルまでリスクを下げる」という考え方である(長岡技術科学大学の木村哲也准教授が2007年に日本ロボット学会誌に発表した「サービスロボットのリスクアセスメントとその課題」の中で提唱された)。

画像7の右側がISO12100に基づく安全設計フロー。「開始」から順に「機械類の制限に決定」→「危険源の同定」→「リスク見積もり」→「リスク評価」となり、その下の分岐の「適切にリスクは低減されたか」でYESなら終了となる。NOの場合は、本質安全設計方策→安全防護策および付加保護方策→使用上の情報の3ステップ法の考え方でリスク低減を行うのはここまでの講演でも説明した通り。そして再び危険源の同定から行い、適切にリスクが低減されるまでループが続くというわけだ。

具体的に危険源の同定として利用されたのは、ISO13482(Annex A)の中でサービスロボット特有の危険源が記載されている「危険源チェックリスト」、「ベッド/車いすの既存ヒヤリハット事例」、「実証実験で得られたヒヤリハット事例」の3つ。またリスク見積もり/リスク評価に関しては、パナソニックにおいて電動ケアベッドが開発されているので、そのリスク見積もりとリスク評価基準が参考にされている。

画像7。第4章リスクアセスメントの詳細