接続を確認し、テスターで各部分の電流/電圧を確認してみる

それでは製作した回路が実際に動くかどうか、以下の手順で確認してみましょう。図3-9-1に実際に製作した基板を示します。

図3-9-1 実際に製作した基板(拡張性も考えて、わざと端のほうに実装してある)

1. 電流が規定量であるかで誤接続を確認する

結線の確認ができたら、電池をつなぎ、まず電池から流れる電流が規定量であるか(誤接続やショートで過電流が流れていないか)どうかを確認します。これは図3-9-2のように電池と回路の間に、テスターを電流測定モードにして直列に接続し、電流量を測定します。回路の-電源端子と電池の-側の間に流れる電流を測定する場合には、テスターの端子を図3-9-2のように接続するように(極性が正しく接続されるように)注意してください。

図3-9-2 製作した基板の回路電流量を測定する(誤接続になっていないかの確認。-電源端子の測定状態を示している。製作したものでは+電源端子側が0.25mA、-電源端子側が0.07mA)

2. 回路の各部分の電圧が正しくなっているかを確認する

つづいてテスターの接続をはずして、電池と回路を直接接続させます。テスターは電圧測定モードにして-側のリードを基板のグラウンドに接続し各部の電圧を図3-9-3の電圧値を参考にして測定してみます。

ここで2つの入力端子間の電圧、つまり+入力端子と-入力端子の電圧とは「ほぼ同じ大きさ」になっているはずです(出力が有限なら、2つの入力端子間の電圧は本当に小さい値ということから)。

ここでは+入力端子がグラウンドに接続されておりゼロVなので……-入力端子もゼロVになっているはずです。OPアンプはこの入力端子間の電圧が同じになって動作すること、実際にそれを動作確認のときに測定してみる、という2点が重要です。

なおテスターの接続について、回路上の電圧がマイナスのところは、+側のリードをグラウンドに接続し各部の電圧を測定します。

図3-9-3 製作した基板の各部分の電圧を測定する(回路図中に電圧が示されている。誤接続になっていないかの確認)

3. 擬似的に入力信号を作って製作した回路の動きを確認する

最後に抵抗とボリューム(VR:可変抵抗)で入力信号を擬似的に作り、それで出力の変化を確認しておきます。オシロスコープがあれば、この確認実験は不要ですが、測定器がテスターしかありませんから、このようなテストで代替します。

図3-9-4はこの測定方法です。抵抗を4個とボリュームを図のように接続し、入力信号の代わりとして直流電圧を回路に与えます。

ボリュームを回していくと出力に接続されたテスターの針が動いていけば、問題ないでしょう。テスターの-側リードを-電源端子に接続しておくとテスターの針がマイナスに振れないですむので、これも(どこに-側リードを接続するか)ちょっとしたテクニックともいえるでしょう。

ここまでくれば完成です!

図3-9-4 抵抗4個とボリュームを入力信号のかわりとして回路に与え、出力の変動をテスターで測定する。ボリュームはコンデンサの回路側に接続しないと意味がない

マイクとヘッドフォンで回路の動作を確認する(動くと嬉しい)

それでは、図3-10-1のようにヘッドフォンを接続して、自分の声がヘッドフォンから聞こえることを確認してみましょう。選択したOPアンプ、出力レベルだとスピーカを駆動するには十分では無いので、このまま出力にスピーカをつなぐことはあまり適切ではありません。ヘッドフォンがよいでしょう。

音が聞こえてきたかと思います。実際に自分で苦労して作ったものが、(初めての今回は簡単な回路/動きかもしれないが)きちんと動いてくれることはうれしいものではないでしょうか。

図3-10-1 ヘッドフォンをつないでみる

筆者も失敗するのだ

図3-9-1を見てもわかるように、マイクが基板に直接はんだ付けされています。「あー!あー!」と声を出すとちゃんとヘッドフォンから音は出るのですが、マイクが基板の振動音を拾ってしまい、持ち上げたり、机の上に置いたりすると、「ゴトン!」「ガチャン!」という音がして、結構気になりトホホです。

「マイクは別置きにしておけば良かったなあ」と作ってから思いました。なんでも一度やってみると不都合が判るというところですね。なお、別置きにするときは配線でノイズを拾わないように、シールドなどの対策が必要です。

ここまでのまとめ

ここまで回路の基本的な理論と、OPアンプの動作について説明し、実際にOPアンプによる回路を製作し、動くものが出来ることを実感してみました。

アナログ回路は難しくとっつきづらいもの、というイメージもあったかもしれませんが、実際に作ったものが動くことで、1つ敷居が低くなったことと思います。

次回からは理論的なことは差し置いて、ここまで作った回路をさらに高度な回路に拡張させる、発展的な回路構成について説明していきます。その回路でも「製作」が基本ですから、期待していてください。

著者:石井聡
アナログ・デバイセズ
セントラル・アプリケーションズ
アプリケーション・エンジニア
工学博士 技術士(電気電子部門)