シミュレーションで「あたり」をつける

図3-3-3の回路はそのまま製作を開始してもいいのですが、本当に間違いなく動作するかを、連載11回目図2-7-1に示したような電子回路シミュレータ(NI Multisim Analog Devices Edition)で確認してみました。これはだいぶ専門的になりますので、詳しいシミュレーション内容の説明はしません。こんな感じ……という程度の理解でOKです。

図3-4-1はシミュレーション用の回路図、図3-4-2は周波数特性をシミュレーションした様子です。広い周波数帯域にわたって特性が滑らかになっています。目的の音声周波数(100Hz~10kHz)ではほぼ一定です。電子回路シミュレーションを使えば、このように(実験することなく)回路の動作を検証できるので、プロの回路設計技術者もかなり回路シミュレータを使用しながら回路設計をしています。

図3-4-1 電子回路シミュレータ(NI Multisim Analog Devices Edition)で特性を確認してみる(シミュレーション用回路図)

図3-4-2 周波数特性を確認してみる(下の図が急激に変化しているように見えるがこれは問題ない)

図3-4-3は入出力の振幅をシミュレータのオシロスコープ・モードで測定したものです。電源電圧が電池を使っているために±1.5Vと低いのですが、AD8607の出力が頭打ちになる限界のところの振幅もほぼ1.5Vであり、十分な出力レベルが得られていることがわかります。

図3-4-3 オシロスコープ・モードで振幅のようす(限界のところ)を確認してみる

必要な部品を買う

ここまでで、回路の構成、具体的な回路図まで作りこむことができました。しかし実際にモノを作るには、部品を集めることから始まります。

部品表をきちんと作って、実際の部品を購入しよう

まずは表3-5-1に示すようなリストを作ります。このようなリストは実際の製品開発でも作られるもので、部品表とかBOM(Bill of Material)リストとか呼ばれます。モノを作るプロセスとしては、ちょっとした趣味の製作でも、プロの現場でも同じなのです。

この表3-5-1のリストで注意すべきことは、変換基板だとか接続用のピンなど、意外ともれてしまう部品が結構多いことがあります。よく注意してリストを作っておきましょう。まあ、最悪注文し忘れても、送料をもう一回払うだけの話ですから(笑)、リラックスしてやればいいことでしょう。

表3-5-1 購入する部品のリスト

今回の試作では、チップワンストップ(図3-5-1)という部品販売業者を利用しました。webでの注文で速攻で部品が入手可能です。

図3-5-1 インターネットで部品を購入する(チップワンストップ)

電子部品の定数の読み方

チップ部品でない限り、抵抗は「カラーコード」と呼ばれる「色づけ」により、その抵抗値の大きさ、すなわち定数を表します。図3-6-1に示すように、その素子の大きさが判読可能です。暗記方式も示してありますが、このようなリストをもとに定数を読めるようになればいいと思います。

たとえばもし、webによる購入ではなく、店頭で購入するときに「複数の部品を個別に梱包しますか?」と聞かれて「いいえ、カラーコードが読めますから、1つの袋に入れていいですよ」と言うと、ちょっとした専門家的な優位の幸せを感じると思います。

なお、コンデンサは少し違った表記をします(カラーコードを使わない)ので、それは別途資料(webコンテンツも含めて)を参照してください。

図3-6-1 抵抗のカラーコードの読み方{製作する回路では一部これと異なる表記の(低雑音・高精度品の)抵抗を用いる}

著者:石井聡
アナログ・デバイセズ
セントラル・アプリケーションズ
アプリケーション・エンジニア
工学博士 技術士(電気電子部門)