ANSYSは1月28日(米国時間)、マルチフィジックス解析ソフトウェア「ANSYS」の最新バージョンとなる「ANSYS 2020 R1」を発表。同2月5日、日本の報道陣向けに新機能を中心としたANSYS 2020 R1についての説明会が開催された。

プラットフォーム機能を強化

同バージョンではシミュレーションプラットフォーム「ANSYS Minerva」のワークフロー改善を実施。シミュレーションエンジニアや管理者にとって必要となる情報を自由にダッシュボード上にカスタマイズすることが可能となったほか、フォルダ構造や探索機能などによる必要な情報・データ・ファイルの見つけやすさの向上、一般的なPLMとの連携によるシミュレーション結果と設計・開発データの一致の実現などが可能になったという。

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  • ANSYS Minervaの概要(新機能・機能強化部分が青文字)と、PLMとの連携イメージ

ANSYS SPEOSがライセンス体系を見直し

また、光学系の強化としてANSYS SPEOSがANSYS Common Licensing対応となり、単一ライセンスキーでの管理が可能になった。また、機能としては、最新のジオメトリに対してシミュレーションが自動連携できるようになり、これにより光学特性とシミュレーションがリンクされ、どちらかのデータを更新すると、それに合わせてもう片方のデータも更新されるようになった。さらに、マテリアル&テクスチャ機能が使用可能になったほか、UV Mapping機能によりテスクチャを自由曲面形状に正しくマッピングできるようになったという。

このほか、シミュレーションとレンダリングのためのSPEOS Liveプレビューでカメラセンサの使用が可能となり、カメラに関するさまざまなパラメータの検証を行うことができるようになったとする。

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  • SPEOSでは、よりクルマの付加価値向上に向けたニーズに対応するべく、さまざまな方向性での機能強化が実施された

進む自動車分野向け開発支援ソフトウェアの強化

組み込みソフトでは、「ANSYS SCADE」の強化として、人工知能による人物/物体認知の安全性を検証するエッジケース検証ソリューション「SCADE Vision」がリリースされ、これにより自動車の各種センサの認知部分に関するアルゴリズムの弱点発見などを容易に行うことが可能になったほか、自動車に関連する安全性分析方式をオールインワンの統合ツールとして提供する「ANSYS medini analyze」として、現在策定中の「意図した機能の安全性(SOTIF):ISO21448」および「サイバーセキュリティ:ISO21434」の脅威分析に対する機能を追加、自動運転車の開発を促進することができるようになったとする。

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  • SCADEに新たなソリューションが追加され、これにより自動運転の認知から動作計画の策定、実行までの一連の流れの検証支援が可能になった。また併せて自動運転ではISO 26262だけでは安全性やサイバーセキュリティの面ではカバーしきれなくなることが見えてきており、新たな規格の策定が進められており、今回、それらに先んじた対応が図られた

製品体系が見直されたElectronics Suite

エレクトロニクス関連の「ANSYS Electronics Suite」は製品体系の見直しが実施された。2DとRF Circuit、Simplorerという構成の「Electronics Pro」、そこにHFSSやMaxwell、Q3D、SIwave、Icepakが追加された「Electronics Premium」、そしてフルパッケージとなる「Electronics Enterprise」とEnterpriseのオプションとして、「Prep/Post」と「Solver」というの3ファミリ(7製品。Premiumが5種類)、2オプションに集約が図られた。

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  • ANSYS Electronics Suiteの新たな製品体系の概要

新技術としては、アレイアンテナを構成する基本形状がモデルライブラリとして登録された。これにより、いろいろと組み合わせてさまざまなアレイパターンを手軽かつ効率よく解析することが可能になった。また、機密性が高く、なかなか入手ができないChip Power Model(CPM)を疑似的に作成することを可能とする「Chip Model Analyzer」も追加。これにより、チップ特性を考慮したパッケージ-基板解析が可能になるとしている。

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  • 入手が難しいCPMを疑似的に作ることで、解析精度の向上が可能になった

使い勝手の向上が図られたFluent

流れ、乱流、伝熱、そして反応のモデリングに必要な幅広い物理モデリング機能を搭載してきた「ANSYS Fluent」については、ユーザーエクスペリエンスの向上として、また従来は設定ごとに分かれていたパネルをタブ分けすることで、1つのパネル上で切り分けて設定することを可能にしたり、グラフィクスをシングルクリックするだけで代表的な境界値の入力を可能にしたほか、すべての平面作成法により直感的なハンドルや原点のドラッグにより自由な移動などが可能になった新開発の平面ツールが採用されたという。

またメッシュ生成については並列処理により高速化と高品質化の両立を実現したとするほか、リチウムイオンポリマー電池の充放電特性のような高度な物理モデルの追加も行われたとする。

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  • ANSYS Fluentでは使い勝手の向上が図られたほか、機能強化、新たな物理モデルの追加などが施された

なお同社では、PTCやオートデスクをはじめとしてパートナーシップの強化を図っており、ユーザーのニーズにマッチしたソリューションの実現を目指しているとしており、今後もそうしたパートナーシップを拡大していくことで、ユーザーの利便性の向上を目指していくとしている。