米Maxim Integratedは9月25日(米国時間)、ヘルスケア向けの新たな開発プラットフォームとして「Health Sensor Platform 2.0(HSP 2.0)」、ならびにこれに基づく開発キット「MAXREFDES101#」を発表した。この内容に関して説明会が開催されたので、内容をご紹介したい(Photo01)。

  • Andrew Baker氏

    Photo01:説明は昨年同様Andrew Baker氏(Managing Director, Industrial and Medical Solutions)

もともとMaximは2017年11月、心拍センサとなる「MAX86140/MAX86141」、および心電図/生体インピーダンス向けのAFE(アナログフロントエンド)である「MAX30001」を発表している。この時にはあくまでも単体のコンポーネンツでの発表である。同社はこれに先んじて2016年10月Health Sensor PlatformとしてMAXREFDES100#を発表しており、こちらでは体温、血圧、心電図とさらに体の動き(加速度センサを利用)などを取得できるとしていた(Photo02)。

  • MAX-EGC-MONITOR

    Photo02:MAX-EGC-MONITORは心臓の上あたりにEGC用のセンサを張り付ける形になっており、ちょっと装着が手軽とは言えなかった

ただしMAXREFDES100#は、リファレンスとは言いつつも結構な大きさであり、腰にぶら下げる事はできても、腕にはめられる大きさではなかった。その後、同社はアクティビティモニタ向けの「MAX-HEALTH-BAND」や、やはり携帯型の心電図兼心拍数モニターとして「MAX-EGC-MONITOR」を発表しているが、今回発表のHSP 2.0はこうしたリファレンスデザインの後継製品となるものである。

HSP 2.0は腕時計というにはちょっとごついとは言え、腕に装着可能なサイズになっており、そこでECG/心拍数/体温をまとめて監視可能である(Photo03)。

  • ArmのMbedプラットフォームに対応

    Photo03:ArmのMbedプラットフォームに対応、というのもちょっと珍しい。確かにMbedの環境がだいぶ充実してきたので、これはこれで当然アリだろう

特徴的なのは、Maximはあくまでもこうしたバイタルデータを取得するためのハードウェア(と、それを利用するためのソフトウェアやドライバ)は提供するものの、それをどう収集して分析するかは顧客に任せる形になっている。要するにクラウドサービスなどは、このプラットフォームを利用する顧客が提供するもので、あくまでもMaximはコンポーネント提供に徹する、という立場である。

このプラットフォームの構成だが、コアになる部分は「MAX32630」で、センサとして光パルス式の心拍数センサAFEの「MAX86141」、ECG+BioZ AFEの「MAX30001」、±0.1℃の精度の温度センサの「MAX30205」が用意され、MAX86141はセンサハブの「MAX32664」とつながる。そして全体のPMICとして「MAX20303」が用意されるという形だ(Photo04)。

  • 無線接続はオプション扱い

    Photo04:無線のコネクティビティはオプション扱いだが、Bluetoothに対応したPAN1326Bが用意される

実際に説明会では動作するHSP 2.0が用意され(Photo05,06)、ECGの測定デモ(Photo07,08)なども行われた。

  • リファレンスデザイン

    Photo05:リファレンスデザインということもあって、見かけはゴツい。厚みも結構あるが、これは製品デザイン側の問題でもある。液晶の下にあるのが、ECG用の端子

  • リファレンスデザインの裏面

    Photo06:裏面。中央に出っ張っているのがMAX86141で、形状から言って「MAX86140EVSYS#」をそのまま搭載しているようだ。その上下がECG用の端子と温度センサ

  • ECGの測定デモ

    Photo07:ECGの測定デモ。この図で言えば、左手は本体裏面の端子で、右手は液晶の下の端子でそれぞれ接続することで、右手と左手の間のインピーダンス測定が可能であり、ここからECGも測定できる、というもの。これにより、心臓のそばに端子を張り付ける必要がなくなった

  • 測定結果をBluetooth経由で飛ばしてタブレットで表示

    Photo08:測定結果をBluetooth経由で飛ばしてタブレットで表示中。Photo07のやり方だとインピーダンスになるため、確かにEGCの測定は楽ではないそうだが、AFEとアルゴリズムの改良により、十分な精度の測定が可能になったそうだ

前回の記事でも触れられていたが、ヘルスケアのコストは増大する一方で、この先9兆ドル(GDPの10%)に達するという予測もあり、これの低減のためにもヘルスケア機器の最適化や性能向上が欠かせないと見られている。

同社の予測では、特にウェアラブルヘルスケア機器は今後急速に伸びてゆく(2021年までに1億台)としており、このマーケットは同社にとっても重点領域の1つと位置付けられている。それもあって、こうした差別化を図りやすいソリューションを投入していく事で、より弾みをつけたいとしており、今回のHSP 2.0もそうした文脈で考えるとわかりやすいだろう。

今回発表のMAXREFDES101#はすでに出荷開始されており、単価は399ドルとなっている。またすでにMbed Componentsでもサンプルおよびライブラリが用意されている