ダッソー・システムズは、ユーザー向け年次イベント「3DEXPERIENCE FORUM Japan 2018」を5月30日~31日にかけて開催した。本稿では、2日目(5月31日)の基調講演「インダストリー・ルネサンス」の内容をお届けする。

  • インダストリー・ルネサンス

    ダッソー・システムズが語る「インダストリー・ルネサンス」の現在

スピーカーは同社 エグゼクティブ・バイス・プレジデントのシルバン・ローラン氏。予定では取締役会副会長、最高経営責任者のベルナール・シャーレス氏が登壇予定だったが、開催直前に同社の創始者であるセルジュ・ダッソー氏が逝去し、葬儀出席のため欠席となった。

  • ダッソー・システムズ エグゼクティブ・バイス・プレジデントのシルバン・ローラン氏

    ダッソー・システムズ エグゼクティブ・バイス・プレジデントのシルバン・ローラン氏

  • ダッソー・システムズ 取締役会副会長、最高経営責任者のベルナール・シャーレス氏

    ダッソー・システムズ 取締役会副会長、最高経営責任者のベルナール・シャーレス氏はビデオメッセージで謝辞を述べた。

  • ダッソー・システムズ 代表取締役 山賀裕二氏

    ダッソー・システムズ 代表取締役 山賀裕二氏

インダストリー・ルネサンスは世界中で起こる

講演タイトルの「インダストリー・ルネサンス」は、近年の産業界に起こっている変化について、ダッソー・システムズが語る際に用いるフレーズ。昨今の状況を活版印刷の発明により知が広く開かれていったルネサンスになぞらえており、この変化は業界内のみならず、社会全体に影響を及ぼしていくとしている。

ローラン氏は「今日において、製品ではなくエクスペリエンスに価値がある」と断言した上で、どのようにエクスペリエンス(経験)を創出していくかが重要になると語った。そのためには、これまで産業界で行われてきたマニファクチュアリング(製造)の自動化だけでは不十分であり、新たな作り方、学習方法が必要となると強調した。

そして、内閣府が提唱している「Society 5.0」、そして経済産業省が前者の実現の手立てとして打ち出した「Connected Industry」は、この「インダストリー・ルネサンス」と同じ動きをとらえたものであると指摘。「日本は強い工業文化を持っているが、(変化にあたって)新たな野心を持つことが必要だと感じる。インダストリー・ルネサンスの課題に対処し、最先端のツールを使うべき」であるとも語った。

今後、インダストリー・ルネサンスは世界中で起こることになると「予言」したローラン氏。その例として、「業界」「ソリューション」「消費者」という3つの要素に分け、この変革によって生まれる新たなカテゴリを例示した。

  • 業界の新しいカテゴリ

    業界の新しいカテゴリ

「業界」に新たなカテゴリを生み出した、あるいは生み出そうとしている存在として、歴史ある大企業のボーイングと、フランスのスタートアップ・XYTを対比して挙げた。1995年、ボーイングがはじめてデジタルモックアップを活用し「ボーイング777」を開発。一方のXYTは電気自動車を手がけており、コネクティッドカーとして開発を進めている。既存メーカーの自動車よりも部品点数が少なく、素早く組み上がるなどの特徴も持っている。

  • ソリューションの新しいカテゴリ

    ソリューションの新しいカテゴリ

「ソリューション」の新しいカテゴリに挙げられたのは、新国立競技場などを手がける著名建築家・隈研吾の作品。空気浄化繊維を使って折り紙のように作られた構造体で、9万台分の排気ガスを1年で吸うことのできる設計になっているという。フィンランドのTactoTeckが開発したスマートサーフェスも、顧客の体験をかたちづくる新たな手段であるとした。

  • 消費者の新しいカテゴリ

    消費者の新しいカテゴリ

インダストリー・ルネサンスでは顧客は単にサービスを享受するだけでなく、創出への貢献者という側面も持つとして、3つめの「消費者」の新しいカテゴリとして、キッチン設計をユーザー自身が行える3Dデザインサービス「Homebyme」を例示した。

変革を実現するカタリスト(触媒)としてのプラットフォーム

  • ふたつの側面を持つ3DEXPERIENCEプラットフォーム

    ふたつの側面を持つ3DEXPERIENCEプラットフォーム

3つの例示を経て、インダストリー・ルネサンスの中心にあるのは知識とノウハウであり、そのインフラとなるのが同社の3DEXPERIENCEプラットフォームだと強調。同プラットフォームは「オペレーティングシステムであり、ビジネスモデルでもある」と語った。

  • ジェネレーティブ・デザインで橋梁の構造を自動的に生成する

    ジェネレーティブ・デザインで橋梁の構造を自動的に生成する

  • 「リビングブレインプロジェクト」

    デジタル上で脳をシミュレーションする「リビングブレインプロジェクト」

オペレーティングシステムとしての顔として、ジェネレーティブ・デザインでの橋梁の生成を提示。バーチャルの世界は知識とノウハウを集積させられるため、設計者が考えてもみなかったソリューションが生まれるとして、これから大きな役割を占めるようになるだろうとした。もうひとつの例とした「リビングブレインプロジェクト」は、同社が進めている「リビングハートプロジェクト」の続編で、脳のシミュレーションによりてんかんの治療を推進するものであるという。

一方、ビジネスモデルとしての面では、顧客との高速なインタラクションが重要であるとした。これまで、ローラン氏は「ダッソーは3DCADツールなどのソフトウェアのプロバイダだったが、これからはAmazonのような存在になっていく必要がある」と語った。

新たなビジネスの例として、同社がeccoとコラボレーションした、店頭の3Dプリンタでソールをカスタマイゼーションするサービスを例示。店頭の販売員がこのような新たな動きを学習する必要があり、企業はみずからを教育センターであるととらえ、社員教育に新たなアプローチを行う必要があるとコメントした。

最後に、インダストリー・ルネサンスの新しい書物は「エクスペリエンス(経験)」であるとして、学術界、大手企業、スタートアップと広く協業していることを強調。3DEXPERIENCEプラットフォームは「21世紀のインダストリー・ルネサンスを実現するカタリスト(触媒)」となると語り、場を締めくくった。