Adobe製品の新機能を紹介する恒例のイベント「Adobe MAX」。今年は10月5日から7日まで、アメリカ・ロサンゼルスで開催され、60カ国から7,000人以上が参加。史上最大規模となる大盛況のうちに幕を閉じた。

同イベントの日本版というべきイベント「Adobe Live Best of MAX」が11日、東京・六本木のミッドタウンで開催された。500を超えるセッションが行われたという本家を凝縮したかたちで行われたこの催しでは、Photo、DTP、Web、Videoの各分野別にAdobeのCreative Cloudの新機能や活用法を紹介するセッションが行われた。

アドビ システムズ デジタルメディア グループリーダーの栃谷宗央氏

このうち、Photo関連のセッションの1つとして行われたのが、アドビ システムズ デジタルメディア グループリーダーの栃谷宗央氏によるセッションだ。

「『驚き』と『楽しみ』を、すべてのかたへ。進化し続けるアドビのPHOTOツール&サービス」と題して行われたセッションでは、米国での本家「Adobe MAX」でお披露目された、「Creative Cloud フォトグラフィプラン」に含まれる「Photoshop CC」「Lightroom CC」をはじめ、プランで提供されるモバイルアプリケーションツールの最新機能やサービスが、フォトグラファーや写真愛好家向けに紹介された。

モバイルからモバイルへ

栃谷氏によると、新機能の全体的なポイントを表すキーワードは“Mobile to Mobile”。これは、デスクトップの機能をモバイルへ、モバイルの機能をデスクトップへという従来のような転用だけでなく、最新のアップデートではタブレットやスマートフォンといったモバイル機器同士の連携に対応したということを意味する。

その中で提供されるモバイル向けのアプリは「Photoshop Fix」、「Photoshop Mix」、「Lightroom mobile」の3つ。現時点では「Photoshop Fix」を除いて、iPhone/iPad、Androidに対応。「Photoshop Fix」については現状iOSアプリのみ配布されているが、来年にもAndroidに対応する予定だという。

その次に栃谷氏が「Lightroom mobile」の試してみてほしい新機能として紹介したのがカメラ機能だ。アプリから直接撮影が行える撮影機能で、ホワイトバランスや色調補正、露出のコントロール、色温度調整、トーンカーブといったカメラの補正機能が、モバイルのカメラ上で直接可能になるといったものだ。

さらに、データそのものは、デスクトップ、モバイル、Web上ですべて自動で同期されることから、タブレットやスマホで加えた変更をすぐにその他のデバイスで引き継ぐことができる点がメリットして挙げられた。

また、修正、レタッチ用アプリである「Photoshop fix」での注目の機能は、"スポット修復"機能。顔のシミや傷などを消したり、補修したりするには欠かせない、デスクトップではおなじみの機能だが、今回それがモバイル版にも対応した。

顔の気になる部分を補修する"スポット修復"。「Photoshop fix」では、直接タッチしてより直感的。

"ゆがみ"ツールで"顔"を選ぶと、顔のパーツを自動で認識。

中でも特に便利なポイントとして栃谷氏がデモンストレーションを行ったのが、顔のパーツを自動認識し、それぞれ用意されたツールで簡単に修正が加えられる機能だ。ユーザーが顔をタップすると、目・鼻・口など顔のパーツを認識し、それぞれ拡大縮小したり、膨らませたり、位置をずらしたりといった補正が直感的に行うことができて便利だ。

それぞれのパーツを選択することにより、それぞれ目のサイズを変えたり、ほほを膨らませたり、口の口角を上げたり下げたりといった修復が可能だ。

"顔"の修復機能は、集合写真でも有効。解像度が粗くなってしまうなどの制約はあるが、同じようにさまざまな修復が行える。

その他、画像合成用のアプリ「Photoshop mix」では、ブレの軽減や建物などを垂直に合わせる歪み補正が、違和感のないより自然な形でコントロールできるようになっている。

「Photoshop mix」での色調補正の例。任意のポイントをタッチして、自然な形でコントロールが行える。

一方、本家イベント「Adobe MAX」における今回のキーワードとなったのは"タッチ"。マイクロソフトのSurfaceなど、デスクトップの能力がそのまま使えるモバイルデバイスにおいて、タッチ機能を活かしたかたちでさまざまな新しい機能が加えられているというのが栃谷氏の話だ。

また、今年で25周年を迎えた「Photoshop」だが、「今回のアップデートでは、基本的にパーソナライズ、カスタマイズ、皆さんのPhotoshopになるというのが1つの特徴」と栃谷氏。具体的には、例えば修飾キーでペンを使ってブラシで描画をする際に、シフトキーを押したまま操作すると直線を引くことができるようになるなどのカスタマイズを施すことができ、さらにその機能をロックさせて作業が行えるなどタッチ操作の操作性を向上させる機能が強化されているという。その他にも、画面上に不要な機能を表示させないようにカスタマイズできるなど、マウスやペン操作をより快適にする機能も今回のアップデートには多く含まれているとのことだ。

2016年1月にリリース予定の「Photoshop CC」の概要

「Photoshop CC」で復活した"油絵"ツール。過去のツールよりもブラシでさまざまな調整ができ、より多機能になっているとのことだ。

そして最後に、"One more thing"として栃谷氏が紹介した注目の機能が、アドオンの追加によりスクリーントーンや集中線を付けられるというものだ。アドビのサイト上で無料で配布されている"Comickit"というアドオンがそれにあたり、ダウンロードすることで"塗りつぶし"の1つとして機能を拡張。セットアップされたメニューから選ぶことで、集中線やスピードラインを切り抜いた写真などに簡単に描画できる。栃谷氏は「マンガ用というわけではなく、クリエイティブを意識したかたちでうまく活用してほしい」と、同機能の利用を勧めていた。

アドオンで利用できる"集中線"のツール。パスを設定すると、そこを中心にら集中線が描かれる。

パターンの中には、多様なバリエーションの"スクリーントーン"のような塗りつぶしも用意されている。