池袋サンシャインシティで3日間にかけて行われた印刷メディアビジネスの総合イベント「page2014」。そのスポンサーズセミナーの一環として、CREATE NOW DESIGN TOUR「CS VS CC徹底比較セミナー」が開催された。その終了後、セミナーの様子も振り返りながら、「Adobe Creative Cloud」(以下、CC)の新機能やその印象、そしてCSとCCの違いについて、キースピーカーの鷹野雅弘氏(スイッチ)とアドビ システムズの岩本崇氏による対談が行われた。

セミナー講師を務めた鷹野雅弘氏(左)とアドビ システムズの岩本崇氏(右)

鷹野氏は、WebやDTP分野の制作に関する講演のスピーカーを多く務め、ユーザーの視点からアドビ製品の動向を注視している人物だ。一方、岩本氏は「Illustrator」や「InDesign」といったデザイン関連製品の担当者として、新機能やアップデートにより便利になった部分の周知に務めている。そんなふたりの対談は、"ユーザー代表"鷹野氏の鋭い意見に、岩本氏がメーカーとしての取り組みを真摯に伝えるという、実りあるやりとりとなった。

バージョン問題とIllustrator CCでのアップデート

まず、印刷業界の最新情報が一堂に会する「page2014」全体に関連し、印刷業界で使われているデザインツール群のバージョンについての話が展開された。岩本氏は、「日本の印刷業界の特徴は、印刷会社とデザイナーが同じバージョンを使う必要があるところ」と説明。海外でも古いバージョンのツールを使う人はいるが、PDF入稿が中心なので互いのツールのバーションがやりとりに関係してくることはあまりないという。そんな状況を踏まえ、今回のような講演はもちろんのこと、実際の業務もこなしている鷹野氏に、岩本氏から質問が投げかけられた。

岩本氏:現状、Creative Cloud未対応の印刷会社さんもありますが、その辺りに関していかがですか?

鷹野氏:PDF入稿なので、現状は特に問題ないですね。印刷業界は安心や安全を重視するだけに古いバージョンが好まれるという話は聞きますが。

岩本氏:CCでRetina対応したことについては、何か影響がありました?

鷹野氏:はい、ありました。パネルの字が小さいと見づらかったんですが、CCでRetina対応になってからは、MacBook Proなら文字やツールがくっきり見えるようになって助かっていますね。ちなみに、Photoshopだけはパネルの文字サイズが変更できますが、他のソフトでもそういう部分を考えてもらえないでしょうか。

岩本氏:検討します。その他、Illustrator CCの最新版では、WindowsのHiDPIディスプレイや、Windows 8のSurfaceの筆圧感知にも対応しました。

鷹野氏:現状、筆圧感知に対応したのは変形ツールのみですが、ペンや鉛筆ツールにも対応する予定はありますか?

岩本氏:お約束できるお話ではありませんが、Illustratorをはじめ他のツールも、ユーザーの環境やハードウェアの進歩に沿った変化が加えられると思います。全てはユーザーさんの利便性を考慮した上で実装していきます。

鷹野氏:カスタムツールパネルの追加もその一環ですか?

岩本氏:はい、そうです。あともうひとつ、Illustratorの最新版では、こうした環境設定をオフラインで共有できる機能もあります。設定の書き出し機能というんですが、Illustratorのオペレーター環境を揃えたいという印刷会社さんの要望でできたものです。

その意味でも、今回のアップデートの内容は、ユーザーの声を反映できた方ではないかと感じています。もちろん、まだまだご要望はあると思いますが、CCで初めて出来るようになった機能も多いですから。実は、CS時代は、メニューなどの新規機能の追加に関してメジャーアップグレードの時にしか行えなかったんですが、サブスクリプション方式のCCになって、アップデートによっていろんな機能や対応を提供できるようになったんです。新規機能の追加やデバイス対応を行っていく中で、アップデートの時期だけユーザーさん各自で決めてくださいねという形になったということです。

Photoshopに追加された「自動保存機能」、Illustratorには搭載される?

Photoshop CCより追加された新機能「自動保存」について鷹野氏がセミナーで取り上げたことを受け、岩本氏が「ユーザー的に気になる機能でしたか?」と問いかけると、鷹野氏は「すごくいいです」と即答。そして、「なぜこれがIllustratorにもないのかというくらい、というかIllustratorにこそほしい機能ですよ」と、"ユーザー代表"としての思いを訴えた。

岩本氏は、それに対して、DTPソフトの「InDesign」にも自動復元の機能があることに触れ、「InDesignは後発ソフトなので、プログラムの書き方もモダンな方法を取っています。ただ、PhotoshopとIllustratorは初期のプログラム方法を踏襲しているだけに、同じ機能をつけるのが実は簡単ではないんです……」と、開発サイドの苦労をにじませた。そして、鷹野氏の思いを受け取る形で、「(Illustratorへの自動保存の追加は)できると思うので提案してみます」とコメントした。