また、有人宇宙開発というと通常は理系の分野であると考えられがちだが、秋山氏はそうではないと語る。

「有人宇宙開発は技術面だけでなく、法律面など、宇宙という環境をどうコントロールするか、多面的にみていかないと進んでいかない。医学/生物学の方面の人から生まれてこないといけないものもある。決して工学だけの仕事ではない」

それ以外にも社会学、文学、心理学など、あらゆる分野と関わることが可能だと話す。これは人間が関わることでより重要性を増してくる部分でもある。

「宇宙飛行士の中でも人間臭い駆け引きがある。それを知ることは、(宇宙開発分野も自分たちと)同じ人間がさまざまな葛藤の中で実現していくんだということを知ることになる。実現しないかもしれないけど、独自の意見を持ち、戦わせるということがクリエイティブということではないか」

そうした観点からいえば、現在の二足歩行ロボットの月面歩行計画は「ロボット」を用いることで有人宇宙開発に関する議論を避け、関係各所の調整に終始したものと見えるのかもしれない。

「そうしたかかわりを含めて、生きていくこと、命を大事にすること、そうしたところを見失った科学技術は悲しいものをもたらすかもしれない。有人宇宙開発はそうなってはいけない」

なぜ宇宙を目指すのか。それは宇宙が大きなフロンティアであり、そこに向かっていくことで多くの人の好奇心を育て、人生を豊かにすることができると信じているからだ。秋山氏の言葉からはそうしたある種、信念ともいえる気迫が感じられる。

「みなさんに宇宙をうまく使ってほしい。アメリカではさまざまな分野で成功した人が民間宇宙開発に取り組んでいるけれども、日本にも堀江(貴文)さんみたいなヤマっ気のある人がもっとでてきていいと思う」

できる範囲で思考しては進歩はない。挑戦することが大事だと語る秋山氏は最後にもう一度「有人宇宙飛行を目指し、一歩一歩すすめるべきだ」と述べ、基調講演を締めくくった。