秋山氏は有人宇宙飛行を日本で取り組む必要性についても言及した。

「有人宇宙飛行を日本人の手で実現するということについては"できない"という意見もある。でも、(新しいことを)"できない理由"はいくらでもある。どうできるようにするか考えたい」

世間には日本で有人宇宙開発を行うことに否定的な見方も多い。たとえば、事故が起こったらどうするのか、というものだ。これに対し、秋山氏は「事故が起こったら非難されるのはどこでもそう」と、特別なことではないと話す。同時に非難されたことを理由にやめてしまうことは「我々の好奇心をつぶしてしまうことにはならないか」と懸念する。

「宇宙が魅力的であるのは、(宇宙に対する取り組みの)全部がお金に結びつくわけではない、という部分もある。だからこそ、宇宙は私たちの好奇心を豊かにしてくれるんです。最近は若い人の好奇心を育てるということも大事になってきていますが、"宇宙のあの先になにがあるのかな"といった好奇心は手にずっしりとくる人間のよろこびを与えられるものなのではないか」

そこで重要になるのが、日本で実現するということだという。

「19年前の今ごろ、私はロシアでサバイバル訓練を繰り返していましたが、英語かロシア語かができないと宇宙に行けないという事態はいまだに続いているんですね。でもやっぱり宇宙からの中継は日本語で伝えたい。私たちの仲間がそこにいるという感覚が重要だと思います。これはナショナリズムでいっているのではなくて、やはり人間は言葉によって伝えるものだから、日本語で伝えられるという意味は大きい。たとえば、オバマ氏の演説も翻訳されたものを読んで"すごいなあ"と思ったとしても、やはり(英語が母国語の人が)英語で聞いたほどには感動できていないのではないかと思います。やはり、そうした人間的な要素によって生まれる連帯感は忘れてはいけない」

単にアメリカやロシアに宇宙に連れて行ってもらうことだけでは実現できないことが、日本が主体的に有人宇宙開発に取り組むことによって可能になる。日本が自身で有人宇宙飛行を目指す意味のひとつはそこにあるという。そして、これは「有人宇宙飛行を国家戦略としないと生まれてこないんではないか」とも秋山氏は指摘した。