長期的な労使関係構築を志向するようになれば大きなメリット

労働契約法の内容が公表されてから、同法を研究する動きが企業のマンパワー管理者の中で広がっている。その「解読」と「対応」が、同管理者の直面する課題だからだ。

人材は、長期的に安定した労働関係の中でこそ育成されるものである。そういう意味でも、固定期間のない労働契約の締結は、安定した労働関係を育くむ一助になるはずだ。

そのため、労働契約法が企業にもたらす最大のチャレンジは、社内に、柔軟なマンパワー管理制度をいかに創設できるか、ということになる。比較的完備した実績評価制度の設立はとりわけ重要で、これがなければ企業は「大鍋飯 (みんなが一つの釡で食べる意)」の人々を養うだけの存在になり、遅かれ早かれ倒れてしまう。

労働契約法の中国における画期性は、雇用側と従業員の関係を法律的な形で明確化し、双方が長期的に安定した雇用関係を築く中で、ともにそのメリットを分かち合おうというところにある。これまで中国では、多くの労働者が毎年の下半期になると来年の雇用契約の更新を巡る不安から本業に打ち込めない状況が見られた。それは言うまでもなく好ましからざる状況であったし、社会にとっても不調和の一因であった。

労働契約法の条文には、雇い主に従業員の終身雇用を強制する内容はない。従業員を解雇しようという時には、合法的なプロセスで、そして必要な補償を与えるよう定めた規定があるだけだ。むしろ多くの企業が、そして社会が、今回の労働契約法の登場により、長期安定的な労使関係の樹立を志向するようになれば、むしろメリットのほうが大きいものと考えられる。