成果主義導入など人事制度全般の見直し相次ぐ

労働契約法は、おそらく多くの日系企業に対しては、それほど大きな影響を与えないだろう。日系企業の多くは、比較的規範化された経営管理をおこなっており、順法意識も高い。むしろ、日系企業にとっては、新法施行が人材確保上有利に働くのではないか。

日本経済新聞の報道によると、日本のいくつかの大手企業は労働契約法施行を機に、相次いで従来の1~3年間の労働契約期間を3~5年間に延長した。同報道によると、松下電器産業とホンダが成果主義制度を導入し、従業員の労働態度、実績、能力に応じて個別評価をおこない、給料に反映させるシステムを取り入れた。また、よりすぐれた人材を確保するため、一部の日系大手企業は、中国支社及び中国工場の人事制度を見直し、長期雇用を前提にした人材戦略を推進する見込みであるという。

筆者もまた某日系企業に勤務しているが、ここでも給与体系の見直しを柱に、新たな人材戦略を導入し、条件に合う従業員とは固定期間のない労働契約を締結し始めた。目的は、長期に渡り悩みのタネであった人材の流失問題を根本的に改善するためだ。今回採用されることになった主な施策は、以下のとおりである。

  1. 自社の現状(マンパワー)に関する詳細な分析をおこなう。スタッフの基本情報(性別、年齢、学歴、専門分野など)、技術レベル、待遇(給与、福利厚生など)、雇用状況、契約期間などを整理、把握し、現状の自社のマンパワーとコストを掌握する。

  2. マンパワー管理部門の全体的業務レベルを高め、採用の中身を吟味し、雇用後に解雇せざるを得ない状況ができるだけ出現しないよう努力する。(労働契約法第40条の第2項ならびに第46条の第3項の定めたところによれば、雇用側は任に堪えない職員を解雇する場合、経済補償金を支払わなければならない。このため、日常の人材募集から、企業は必要な人材を的確に選べるよう、採用ミスを最小限にすべく努めねばならない)

  3. 各職位のジョブ・ディスクリプション(職務説明書)を整備し、これにより現在の組織を審査する体制をつくる。ジョブ・ディスクリプションは日常の人材管理の全般、例えば人材採用と配置、育成訓練、実績審査、給与管理、キャリア・プランニングなどを指導するだけではなく、従業員が明確に自らの職責を理解するためにも有効である。さらに、従業員が任に堪えない時、企業が従業員を解雇する「根拠」としても、極めて重要である。

  4. 従業員が労働契約法を正しく理解するよう教育し、企業の利益と個人の利益を緊密に結びつけていく。さらに、部門マネージャーは企業が従業員を解雇する際に十分な証拠をもってこれをおこなえるよう、日常管理において、従業員の紀律違反や重大なミス記録があった場合、これを記録し、企業が負担する挙証責任コストを最小限にすべく努める。

  5. どの部門が派遣社員を必要としているかを確認し、そのうえで採用計画を固める。

  6. 各部門とスタッフのデータベースを分析し、労働契約の締結期間を確定する。契約期間を確定する際には、経済補償金、トレード・シークレット、育成訓練違約金などを十分に考慮する。従業員のライフプラン、キャリア・プランニングなどの基本的な概念を重視、従業員の切実な希望をくみ取り、条件に合う従業員とは、固定期間のない契約の締結を行う。また、固定期間のない労働契約を締結した従業員に対し、会社として、感謝の意を表わす。