素人、部屋を作る
はじめまして、こんにちは!
突然でちょっと恥ずかしいですが、私、こんな部屋で暮らしています。
22平方メートルの小さなワンルームで、築約30年とかなり年季の入った物件ですが、ミントグリーンのアクセントウォールと、素足で歩くのが気持ち良い無垢(むく)のフローリングがお気に入りです。
実はこの部屋、引っ越してきた当初はこんな感じだったんです。
そう、何もない(笑)。
壁はグレーのブロック塀、床はむき出しの板張りでザラッザラ! この真っさらな部屋、業者さんには頼まず、自分と友人たちの手で改装(DIY)したのです。
ド素人の私が、なぜこんなに大掛かりなDIYをしようと思ったのか? 困ったことや失敗はなかったのか?(※めちゃくちゃありました) この連載では、そんなことを紹介できればと思います。
なぜかわくわくしない部屋探し
大学時代から社会人なりたての計6年間は、実家のある横浜から東京に通っていましたが、社会人生活が2年目の終わりに差し掛かると、東京でひとり暮らしを満喫している親友たちの姿がまぶしく見えてきました。そしてついに「私も早く自立しなくては!」と、実家を出ることを決意。数年前の3月、ちょうど今頃でした。
そこで手始めに、有名な不動産仲介アプリをいくつかダウンロードして、家賃や立地、階数や設備など思いつく条件をぽちぽち選択。
思いのほか候補物件は豊作でしたが、
「なんだか、どれも似てて、選べないなあ……」
というのが正直な感想でした。
スマホ画面に現れるのは、長方形の枠の中に最低限の水回りが配置された間取り図と、白っぽい壁紙や人工的な床材が写っている内観写真の数々。たしかに、どの物件も快適に住めそうです。
ただ、この「わくわく」しなさはいったい何?
賃貸も高価な"買い物"なんだ
そもそも私が部屋探しに幻滅したのは、ひとり暮らしの生活費を計算した際に、あることに気付いてしまったからなんです。
「ひとり暮らしの家賃×12カ月=ざっくり100万円」
100万円て! 高っ!
実家に住み続けていれば、浮いた100万円で洋服を何着も買えるし、豪華な海外旅行だって行けるし、貯金もできる!
賃貸物件を「借りる」と言うけれど、結局は大金を払って「買う」のと同じ。だとしたら妥協せず厳選して、気に入った部屋で過ごす快適な時間を「買い」たい! と決めたのでした。
魔法の言葉「デザイナーズ」「リノベーション」
そんな理想と現実の間でモヤモヤしていた頃、会社の飲み会で先輩からアドバイスを授けてもらいました。
「そこまでこだわるなら、デザイナーズとか、リノベーションの物件にしたら?」
……デザイナーズって、つまりデザインが凝った部屋か。リノベーションってなんだっけ……(ググる)、古い物件をおしゃれに改装してあるみたいなことね。どっちも良さそう!!
・デザイナーズ
・リノベーション
理想を表現してくれる魔法の検索条件をふたつも手に入れて心躍る私。その頃になるとおしゃれ物件専門の不動産サイトも発見し、イメージ以上の魅力的な物件をわんさか見つけて大興奮でした。
ただ、本当に大変なのはここからだったのです。
おしゃれ物件探しは挫折の連続
■候補物件その1
"パリのアパルトマン風"が売りのすてきリノベーション物件。完全に一目ぼれして初めて内見を申し込みましたが……、
「もう埋まりました、超人気物件でいつも即決まっちゃうんです」
と、会うこともかなわぬままあっけなく失恋。
■候補物件その2
外観も内観も都会的で洗練された部屋。広いし家賃も安い! わくわくしながら立地を確認。
「さ、埼玉の奥地……」
職場は東京なのに、これじゃあ横浜の実家から通ったほうが近い!
■候補物件その3
おしゃれな据え付け本棚が付いたリノベ物件。早速内見へ。
しかし、洗濯機は住民共有であることが判明(しかも古い……)。怖いもの見たさでフタをオープンすると男性の下着がザクザク……。青ざめて退散。
■候補物件その4
築浅の個性派デザイナーズ物件。内見に行くと、部屋の窓からは満開の桜! 運命の物件に違いない!!
念のため、内見翌日の会社帰りにもう一度見に行ってみると、
「あれ、なんか貼ってある……」
マンションの玄関には、内見時にはなかった謎の宗教団体のポスターが掲示されていました……。
もう自分で作っちゃえ
こうして物件に惚れては破れを1カ月の間に何度も繰り返した私。個性的でおしゃれな部屋を、OLひとり暮らしの予算で、しかも都内で借りるなんて、よくばりすぎるのかな……。
そんな失意の底でふと思い出したのが、部屋探し初期にたまたま雑誌で見つけた「DIYP」という不動産仲介サイトの広告でした。
それは自分で改装(DIY)してもよい物件だけを紹介している変わったサイトで、途方に暮れていた私は、「もう自分で部屋を作っちゃえ!」と発想を転換!
そうしてたどり着いた「DIYP」で、自分の希望条件にぴったり合う角部屋南向きの物件を見つけました。
ただ、前述の通り壁は見事なブロック塀。
サイトに掲載されていた写真を友人に見せたところ、
「え? こ、これは……大丈夫なの? 人が住めるの??」
と、明らかにぎょっとした様子でした。
何もない部屋を即決しました
ともあれ、まずは実物を見てみないとね。ということで内見を申し込み、不動産屋さんと現地集合。写真で見た通り、部屋の中は壁紙も床材もなにもなく丸裸(スケルトンというらしい)でした。
でも逆に考えれば何もないからこそ、好きな素材を取り付けやすそうだし、ブロック塀だってコンクリート打ちっぱなし的な感じで悪くないかも。しかもありがたいことに、水回りは全部新品だったのです!
街のほのぼのした雰囲気もなんだかしっくりきて、ごく自然な流れでその物件の契約を申し込みました。
しかし普通の大学を出た普通の会社員である私は、家作りの知識も経験もゼロ。思いがけなく挑むことになったDIY開始に向けて、手探りな準備の日々が始まりました。
著者プロフィール: 木村かさね(キムラカサネ)
都内企業に勤める会社員です。初めてのひとり暮らしをきっかけに、自宅内装を全面的にDIYしたことが話題となり、これまでTVや雑誌等多くのメディアで紹介頂きました。