オックスフォード(Oxford)は、ロンドン(パディントン駅)から列車で約50分。オックスフォードの地名は、雄牛(Ox)が渡る浅瀬(Ford)のある街ということに由来しています。オックスフォード大学に勤める知人の名刺に中国語で「牛津大学」と書いてあるのを見て、なるほどなぁと思った覚えがあります。

大学の校舎の壁にはたくさんの自転車が寄りかかる

漢字からは片田舎にある小さな村のような感じがしてしまいますが(笑)、実際のオックスフォードは人口約14万人の活気溢れる学生の街。街の中心部は大学の建築物で占められていますが、その周囲には住宅街が広がっています。

オックスフォードに着くと、まずなんといっても自転車人口の多さに気がつくことでしょう。オックスフォードの街は自転車を軽快に飛ばす学生たちでいっぱい。駅前の駐輪場はともかく、大学の建物の前も街の中も自転車で溢れかえっています。

オックスフォードは石造りの美しい街でありながら、荘厳な歴史の重みを感じずにはいられません。オックスフォード大学はイギリスで最も古い大学であると同時に、英語圏で最も古い大学でもあるんです。約900年という気の遠くなるような長い歴史を持ち、 ケンブリッジ大学とともに、イギリスの学問の中心となってきました。言わずと知れた名門大学で、これまで多くの歴代の英国首相、ノーベル賞受賞者を輩出しています。様々な学問分野の教職員と学生が同じ寮で寝食をともにし、またともに学ぶという「カレッジ制」を導入しており(ケンブリッジ大学同様)、現在は39のカレッジがあり、約2万人の学生が学んでいます。

カレッジでは、今もなお、伝統的な風習が守られています。オックスフォード大学の学生はガウンをまとい帽子を被って試験を受け、教授陣はそのような格好で会議に出席します。ほんの少し前までは、その格好でダイニングホールで食事をするのも規則だったそうです! このような風習が今なお続いているのは、日本の私たちには本当に信じられないことです。それにしてもガウン姿での試験や会議は、想像するだけでやや滑稽な気がしますが、ガウンが制服だなんてちょっぴり憧れてしまいますよね。

カーファックス・タワー。この屋上も展望台となっている

オックスフォードには、イギリスで最も優れた建築物といわれるものも多く、それらを見て歩くのも実に楽しいものです。例えば、ゴシック様式のイギリス最古の図書館とされるボドリアン図書館(Bodleian Library)、建築家クリストファー・レンにより設計され、古代ローマの野外劇場をモチーフにしたシェルドニアン劇場(Sheldonian Theatre)、ボドリアン図書館の分館で円形のユニークな建物、ラドクリフ・カメラ(Radcliffe Camera)などです。オックスフォードのシンボルでもあり、待ち合わせの場所としてよく使われている、カーファックス・タワー(Carfax Tower)からは、街を見渡す素晴らしい景色を眺望できます。

(左)ラドクリフ・カメラ。円形の屋根を持つこの建物は一際目を引く(上)ラドクリフ・カメラの正面にあるセント・メアリ教会。尖塔の展望台に登り、ぜひパノラマを楽しみたい

なかでも長年オックスフォードで暮らす友人から、特にオススメというスポットをいくつか教えてもらいましたので、皆さんにもご紹介したいと思います。

まず、1525年設立のクライスト・チャーチ(Christ Church) 。オックスフォード大学最大の規模を誇るカレッジで、伝統と威厳のある群を抜いた名門校として知られています。卒業生には、『不思議な国のアリス』の著者ルイス・キャロル、物理学者アルベルト・アインシュタインなど多くの著名人がいます。また、ニュージーランドで最も古い町、クライスト・チャーチはオックスフォード大学のクライスト・チャーチに由来しています。初期入植者の多くが、クライスト・チャーチ・カレッジの出身者だったのにちなんで名前が付けられたそうです。

名門中の名門カレッジ、クライスト・チャーチの正面入り口

クライスト・チャーチから伸びる小道。ジョギングや散歩を楽しむ人々

(上)クライスト・チャーチの広々とした中庭(右)クライスト・チャーチの大聖堂。奥のステンドグラスは特に必見

(左)アリスショップ。各種アリスグッズや絵本などが揃っている(上)「グリーン・マン」と呼ばれる装飾。教会の壁や天井にもよく見られ、動物や魚がモチーフになったものが多い

さて、イギリスのクライスト・チャーチから浩宮殿下も在学されたことで有名なマートン・カレッジ(Merton College)の脇を通り、今度はニュー・カレッジへ(New College)。数あるカレッジの中で最も広く、美しいと言われているカレッジです。美しい回廊(Cloisters)とその窓から眺める中庭がそれは見事で、1379年建築当時からの中世の雰囲気が漂っています。教会の正面の壁にある何体もの白いラザロ像も必見です。このカレッジの聖歌隊は世界屈指の少年聖歌隊として有名です。卒業生には、なんと俳優のヒュー・グラントなどがいます。またオックスフォード大学の敷地内には、映画『ハリー・ポッター』シリーズの撮影で使用された場所がたくさん! 有名なところではクライスト・チャーチのグレート・ホール。ホグワーツ魔法魔術学校の大広間に使われたことで話題となり、さらに多くの観光客がそれを一目見ようとやってくるようになったそうです。またニュー・カレッジの回廊は『ハリーポッターと炎のゴブレット』の撮影スポットとなりました。アリスファンの方は、クライスト・チャーチの道を挟んで向かいにアリス・ショップがあるので、忘れずに立ち寄りましょう。

マートン・フィールド(スポーツ・グランド)側からのマートン・カレッジ

グレート・ホール。手前が学生用、奥には教職員用のテーブルが並ぶ。ハリーポッターの世界そのまま!

(上)ニュー・カレッジの回廊。ひんやりとした回廊には像があり、中世の雰囲気が漂う(右)中庭から眺めるニュー・カレッジの建物

ニュー・カレッジの教会の中。壁に飾られた何体ものの像は、教会には珍しい装飾だ

そのほか、1740年に創立されたハートフォード・カレッジ(Hertford College)。数あるカレッジの中で最も親しみやすく、自由な雰囲気を持つと言われているカレッジです。2つの校舎を結ぶ「ため息の橋」(前のケンブリッジにもありましたね)と美しい中庭は必見です。

ハートフォード・カレッジの手入れの行き届いた美しい中庭

「ため息の橋」。この周りはいつも観光客で賑わう

オックスフォードの名物料理、ソーセージ料理はハイストリートで

オックスフォードは、ハイ・ストリート(High Street)を中心にカフェ、レストラン、バー、パブなどが充実しており、オックスフォードの学生ばかりでなく、地元の人々や観光客も楽しめる場所がたくさんあります。なかでも伝統的で雰囲気のよいパブは必ず行ってみてください! この日は友人に連れられ、パブ「The Mitre(ザ・マイタ)」で夕食を頂くことに。オックスフォードにはオックスフォード・ソーセージ(ハーブとレモンで味付けしたソーセージ)という名物があり、マッシュ・ポテトと一緒にグレービー・ソースをたっぷりかけて頂きます。その名もソーセージ・アンド・マッシュ(Sausage and mash)。

夏でしたら「George & Danver」というアイスクリームショップもオススメ。クライスト・チャーチのすぐ側にある、このショップはリーズナブルな料金と上品なテイストで地元の人にも人気。ここでアイスクリームを買い、クライスト・チャーチ・メドウに沿って運河までお散歩、なんていかがですか。

パブ「The Mitre」。リーズナブルな料金でランチ・ディナーが楽しめる

オックスフォード大学の卒業生が営む、アイスクリームショップ。ここは2号店

オックスフォード運河。学生たちの憩いの場となっている

次回は、ノルマン人が築いた教会の街、ノーリッチを訪れます。